第35話 新紙幣への思い
今年7月に紙幣が新しくなった。
初めてお金が変わったのは中学生の頃だ。岩倉具視の5百円札が5百円玉になったのだが、少しお金の価値が下がったように感じた。小学生のお年玉に5百円札はありだけど5百円玉だとケチと思われると大人たちがぼやいていた。
5千円札も1万円札も聖徳太子だった時は、とても価値が高い気がしていた。図案の人物が背広姿や作家になって身近に感じるようになると、お札を使いやすくなってしまったのは私だけではないだろう。初めて図案に女性が登場した時は、5千円札にしたことと男女平等の時代の強調に、政府の作為を感じた。
昭和一桁生まれの父にとって、今回の新紙幣はほぼ未来のお札で金額以上に貴重
に思えているようだった。発行されてすぐは、実家の近くの郵便局では「両替は一人1セットまで」なんて制限もあった中、父は毎日郵便局に通い私の家族全員分を1セットずつ封筒に入れてわざわざ送ってくれた。せっかく父が集めてくれた新紙幣だし、大切に引き出しの奥にしまった。
ところが、我が家で唯一の21世紀生まれの次女が翌日、推しのライブチケット代の支払いに行こうとして「そうだ、じいじからもらったお金があった」と無造作に新札をバッグに押し込んだのだ。「え、使っちゃうの⁈」と驚きの声をあげると、何が?くらいの顔で「同じお金じゃん」と。
新紙幣との付き合いの方が長くなる若者はそんな感覚なのか、と世代の違いを突きつけられたのだった。
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