第3話 黄色い帽子と新学期
新学期が始まった先週、通りの一角に4、5人の大人がたむろしていた。どうやら新一年生の保護者のようで、子どもたちのお迎えに集まっている様子だった。浮足立ちながらも少しはしゃいだ感じに懐かしさを覚えた。
3月生まれの次女が小学校に上がった時、最初の2週間の下校が一番心配だった。慣らし期間の2週間は、新一年生はおやつ程度の給食後に下校になるので帰りが早く、2学年上にいた長女より先に一人で下校しなくてはならなかった。
学校と家は子どもの足で30分くらいかかる距離で、道を覚えているかも怪しかった。初日は学校の近くまで迎えに行き、少しずつ迎えの距離を短かくしていき、ようやく家の近くのコンビニまで一人で帰って来るよう言った日に、待てど暮らせど次女は姿を現さない。心配になって学校に連絡を入れようと思った矢先、まだ遥か先の曲がり角に人影が見えた。
次女っぽい黄色い帽子の横に大人らしき姿もある。前かがみになり目を細めてみると、次女に間違いない。背の高い黒っぽい大人の影が気になり小走りで近寄っていくと、次女と手を繋いていたのは、校長先生だった。
校門あたりで、学校まで迎えが来るのか一人で帰るのかが分からなくなって困っていた次女を見かけた校長先生が、わざわざ家の近くまで送ってくださったのだ。平身低頭してお詫びとお礼を繰り返したのは言うまでもない。
これから色んなエピソードに出くわすであろう保護者に、心の中で声援を送った。
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