第2話 もう暫くの平穏
食堂の様子はおおかた予想通りで、食料受け渡し用のカウンターは朝食を求める兵士でごった返し、調理番のおばさんが厨房内を右往左往していた。
「蒸かしたジャガイモごときでなんでそんな必死になれるかねぇ」
などと達観していると途端に腹が減ってくる。
気付けば私は、有象無象の兵士の中に足を進めていた。
その足は止まりはしない、止まるはずもない。
それは何故か、腹が減っているからである。
「おらぁっ!!そこはよドカンかい、おどれらぁ!射撃訓練の的にされたいんか?!!!」
そんな私の怒号も、周りの男どもの罵詈雑言に
掻き消される。
仕方ない少し待つことにしよう。
―――5分後―――
「やっと配給貰えたけど………」
座る場所が無い。
どうする?
たって食うか?
いやそれはあまりにもしんどい。
「………部屋持って帰るか」
部屋まで片道3分もかからないはずなのに、こういう時の帰り道は、すごく足が重い。
だが部屋に帰ると芋と缶詰が待っていると考えると自然と足が前に………
「出る訳がないよねぇ…………」
だいいち、なんで朝飯が青い芋と雷が自分の頭上に落ちてくる並の確率でしか当たりが来ない缶詰なんだよ。
もっと食い物の質が上がれば、兵士の士気が上がると言うのに。
そうこうしているうちに部屋に着いていた。
「さて、芋は………まぁいつも通り。問題は………缶詰」
ナイフを使って缶詰の蓋を開ける。
中身は……………鳥の味噌煮込み???
「…………………え?」
いや、いやいやいやいやいやいやいやいや
まさかそんな訳。
鳥の味噌煮のような何かを、恐る恐る口の中に放り込む。
「……本物だ」
そのあまりにも久しぶりのまともなタンパク質に自然と涙が溢れてくる。
溢れてくると同時に、ある言葉が自然と零れてくる。
「今日………訓練休もう」
この状態で訓練に臨んだら間違いなく、銃が暴発して片腕吹き飛ぶ自信がある。
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