第1話 まだ平和
「起床時間!総員起床!!」
上官の怒号で目を覚ます。朝から右脳に響くうるさい声だ。どうしたらあんなにうるさい声が出せるのか。
気になるような気がしなくもない、いや気のせいか。
「起きるか……」
朝特有の鉛の様に重い体を無理やり起き上がらせる、そのままの勢い立ち上がりカーテンを開ける。
窓から差し込む朝日に目を細め、ふと思う。
(いつまでこんな生活を続ければ良いのだろうか
母は元気にしているだろうか弟はちゃんと勉強しているだろうか……早く家に帰りたい)
……自分らしくない文章が頭に思い浮かんだ。
考えればこの訓練施設に来てからはや2ヶ月が経過している、一体いつになったら家に帰れるのだろうか?……考えていても仕方がないと自分に言い聞かせ目の前の事に集中する。
頭のチャンネルを切り替えて、壁にかかっている古風な時計に目をやる。
長針は12の文字から少しズレていた。だいだい2分と言ったところか。
食堂が
最近の私の愛読書はガイウス・ユリウス・カエサル著の『ガリア戦記』である、この本の内容を簡単に言うとガリア戦争の遠征記録である。
愛読書と言っといてなんだが実の所、なにを書いてるか一切わからなかったりする。
なのでラテン語の勉強ついでで読んでいると言った方が正しい。
───数分後───
一段落ついたので時計を見てみる長針は4の文字を指している。
気付かぬうちに20分が経過していたようだ。
(そろそろ用意するか………)
まず初めに顔を洗い、その次に歯を磨き、そこから髪を整え、髪が整ったら制服に着替え、最後にベッドを整える。
最終確認として姿見で自分の身嗜みを確認し、
ドアの前から部屋を眺め、用意が終わったことを再確認し部屋を出る。
目指す先は、朝の西部戦線とも言われている、「兵員食堂」である。
食事と言えば普通の人は何を思い浮かべるだろうか?
オーブントースターできつね色に焼いたカリカリの食パンと黄身が半熟のベーコンエッグ、ドリンクはコーヒー?
それとも炊きたての白米と脂ののった鮭、ワカメのお味噌汁にフワフワの卵焼き?
それが普通、それが普通の発想。
さて長らく戦場に身を置いている兵士に「食事と言えば何を思い浮かべますか?」と聞いてみるすると、皆口を揃えてこう言うだろう。
「じゃがいもと缶詰」
戦場の食事なんて所詮こんなものだ。新聞やラジオ等では三食暖かい食事を取って勇猛果敢に前線で戦っているなどと宣伝されているがそんなの真っ赤な嘘、プロパガンダに過ぎないのだ。
実際なんて暖かい食事が一食出れば皆喜びのあまり全裸で雪山フルマラソンを行うだろう。
そんな環境下でも。
(腹が脹れるならなんでもいい……)
(食えるもんがあるだけマシだ……)
という信念のもと動いている兵士達によって、
朝の食堂はこれでもかという位にごった返すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます