不撓戦記

大葉 鰛

プロローグ

「いってきまーす」


 声を高らかに誰かが叫ぶ。

 それが日常だから、それが普通だから。


「行ってらっしゃい、気をつけて」


 居間から誰かの母が返事をする。これが日常、これが普通だから────。

 だが、そんな日常が壊れたとしたら、壊されたとしたら、人はどんな顔をするのだろうか。


 答えは本人にしか分からない。

 他人に分かるはずもない。

 人は表面を取り繕う生き物なのだから。

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