一年目。
昔から、人に関心がなかった僕に初めて好きな人ができた。だけど、人見知りの激しい僕にとって、君にこの思いを伝えることなんて、できなかった。
言えない自分を恨んだ。心底呪ってやった。
大学に行くため地元を離れても、社会人になって忙しくなっても、君のことを忘れた日はなかった。ただただ君が好きだった。
ある日、ふと思い立って、君への手紙を書くことにした。でも手紙なんてろくに書いたことがなかったから、完成したものは極めて稚拙な文章を連ねたもので、読み返すのも恥ずかしい。
その日は一日中机に向かって手紙を書いた。
何度書いても納得のいくものは出来なかった。
その日から僕は気でも狂ったかのように手紙を書き続けた。書いている間は君のことだけを考えていられる。ほかは何も無い。一度机に向かうと、君に届けたい言葉が、気持ちが、溢れてくる。その時間は僕にとってただただ幸せな時間だった。
書いて、書いて、書いて。
そうして書けた手紙の全てを君に送った。
一生分の勇気を使ったと思う。五臓六腑が飛び出そうだった。
執拗に切手を舐めた。この気持ちが僕の唾液ごと全て君に届けばいいのに。と思った僕は強欲なのだろうか。
返事はまだ来ない。
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