5480通目の手紙
あ
久しぶり。今日はいつになく良い天気だ。
夏の太陽がかんかんと地面を照らす八月の午後。頭上には太陽と、それから、どこまでも青く、青く続く快晴の空。
その中で、大きな荷物を抱えておぼつかない足取りで歩く男が一人。
男は足を止めると、細く青白い手で、色とりどりに輝く大きな花束と一通の手紙をもって、気まずそうに、また照れくさそうに言葉を放った。
「やぁ、久しぶり。今日は、いつになく良い天気だ。」
そこまで言って、男は青白い顔の、淡く紅潮した頬に軽く指を触れた。そして、次の言葉を紡いだ。
「ええと、ごめん、君のことを忘れてたわけじゃなかったんだ。これ。」
と、花束の後ろから出したのは、大きな紙袋三つがすべて破れそうになるくらいに沢山の手紙だった。
「これは、この後、君の部屋にでも持っていこうと思うよ。だから、今はこれでも読んで待っててくれないか?」
と、手に持った一通の手紙と、大きな花束を差し出して、照れくさそうに笑った。
石に向かって。
これは、そんな僕の、少しだけ異色な十五年の物語。
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