プリムスの伝承歌-宝石と絆の戦記- 流飴様

【タイトル】 プリムスの伝承歌-宝石と絆の戦記-

【作者】 流飴

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890882474


 同じ両親から同じ日に生まれ、同じ環境で育ったというのに立場や思考が違う。そういう双子が好きなのですが、今作の双子はまさにそれです。


 主人公であるリアは第一王子にもかかわらず不遇な存在。というのもリアが生まれたルナーエ国は女性君主制であり、王子に王位継承権はありません。次期女王になることが決まっているのは双子の妹であるセラです。

 こんな環境で育てば二人の間に溝ができそうなものですが、リアとセラは仲睦まじい兄妹です。リアはセラのために出来ることを探し、セラは王子が軽んじられる悪しき風習をなくそうと奮闘しています。両親もつらい立場であるリアのことを気遣うことはあっても他の貴族や国民のようにないがしろにすることはありません。

 悪しき風習が残っていても、お互いを思い合う素敵な家族関係ができあがっており、だからこそリアの不遇な立場が強調されているともいえます。


 女王になることが決まっているセラと将来は政略結婚の道具にされることが決まっているリア。二人がいくら一緒にいたいと望んでも、社会が二人を引き裂くのです。

 そんな悲しい未来が穏やかな日常の隙間から見えて、この二人が一緒に成長していく未来はないのだろうかと切なくなってしまいます。


 双子好きとしてはそれだけでもずいぶん美味しいのですが、主従の関係も素敵です。リアとセラにはそれぞれ護衛騎士がついており、二人の成長を見守り、支えてくれます。リアが迷った時、くじけそうなった時に支え、リアのためにと行動するリアの護衛騎士であるクラルスの存在はリアだけでなく私にとっても心の支えでした。両親や双子の妹以外にもリアを心から大切にしてくれる存在がいる。それだけで安心しますし、今後のリアの窮地もクラルスがいてくれたら乗り越えられそうだという希望でもあります。


 第一曲までしか読んでいないのですが、第一曲は序盤です。ルナーエ国がどういった国であり、リアを取り巻く環境がどういったものか丁寧に説明してくれている章といえます。物語は第二曲から本番といえるでしょう。

 タイトルやあらすじに「戦記」と書いてあることでどういう展開になるのか察している方は多いと思います。いないものとして扱われた少年が仲間と一緒に立ち上がる。そういった逆境をはねのける展開が好きな方にはおすすめの作品だと思います。


 ファンタジー設定ならではの魔法の力を宿す「宝石」の存在も、今後大きく関わってきそうで、戦争ものとしてもファンタジーものとしても楽しめそうです。


 双子好きの私としては無事にリアとセラが再会できることを切に願っているのですが、未だ連載中の大長編……。リアになにが待ち受けているのかドキドキです。


 このドキドキ感、一緒に味わいたい方は読んでみてはいかがでしょう。


 

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