003・始めたはいいものの……

 知らない天井だ……


 明かりがなく真っ暗闇で漠然とそこにあるように感じるだけだが。


 何故か身動きが取れず、ジタバタと動いていると天井を押し上げてぼんやりとしたろうそくのような明かりが入ってきた。


 起き上がり動きを封じていたものを見ると某ファミコンゲームの吸血鬼が出てきそうな棺桶があった。


 「……吸血鬼らしいといえばらしいけど、こんなあからさまなものは平成にはもう無かったと思うなあ」


 ちょっと苦笑いをして周囲を確認する。


 「う〜ん、教会っぽい。廃墟だけど」


 間違いなく全プレイヤーの初期リスポーン地点ではないと思う。もしここが全プレイヤーの初期リスポーン地点だったとしたら色々と運営と開発の精神状態が心配になってくる。


 「気になることしかないけど、取り敢えずステータスを確認しないとゲームが始まらないな。高位種族だから間違いなくゲームバランス的に制限の類があるだろうし」


 ステータス画面の表示の仕方は頭で出ろ〜出ろ〜と念じるか空中を左手人差し指でダブルクリック?すると出てくる。


 「急いでるわけでもないし思念入力を試して見ようかな」


 出ろ〜出ろ〜と念じる。すると3回目くらいで画面が出てきた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

 ・PN・ヴァイオレッタ・フルーリングシュトルム

 ・種族・高貴吸血鬼ノーブルヴァンパイア Lv1

 ・職業・血界魔導師 Lv1

 ・HP 10/10 ・MP 20/20(自動成長)

・STR 0(自動成長) ・VIT 0

 ・AGI 0(自動成長) ・MIND 0

 ・DEX 0 ・INT 20  

 ・LUC 0

 ・種族スキル

  【血液操作Lv1】【霧化Lv1】【暗闇補正Lv1】【日光脆弱LvMAX】【聖属性脆弱LvMAX】

 ・職業スキル

  【血属性付与Lv1】【簡易血界Lv1】【固有領域】

 ・エクストラスキル

  【切断魔術】【行動発芽】

 ・通常スキル

  【初級剣術Lv1】【初級体術Lv1】【火属性魔術Lv1】【風属性魔術Lv1】【治療魔術Lv1】【初級錬金術Lv1】【魔力操作Lv1】【MP自動回復Lv1】

 ・称号

  【高位種族】【吸血鬼】

――――――――――――――――――――――――――――――――


 「やっぱりステータスが少しあれだな。もう少し他のにも振っておくべきだったかな」


 しかしやってしまったものは仕方ないし、自動成長ですぐにINTと見劣りしないようになるだろう。


 そう思ってVIT、MIND、DEXから目を背けた。


 強く生きてくれ……


 LUC?知らない子ですね。


 「見慣れないスキルが幾つがあるけれど取り敢えず今やることは脆弱系スキルを何とかしないとな。次は血液操作かな。これは楽しそうだ」


 外を見ると日が出ていないので先に血液操作の練習をする。


 「え〜と、まず自分の魔力を感じないといけないのか」


 現実にはないエネルギー?を感じるのは少々難しかったが10分ほどお腹、丹田辺りに力を入れていると少し暖かい不思議な物体?を見つけた。


 「ん?これかな?」


 【魔力操作】のスキルを発動させ、体にある魔力を操っていく。


 すると最初の方にちょっとだけ抵抗されたもののすぐになめらかに体の中を回り始める。


 「だいぶ慣れてきたからそろそろ【血液操作】を使ってみよう」


 【血液操作】を発動する。


 すると体外に小さな緋色の球体が現れた。


 「これが血液かな?何でこんなふうに浮いてるかわかんないし球体なのかもわかんないけど」


 取り敢えずファンタジーだからと自分を納得させる。


 「さて、血液を出すことは出来たから次は変形だね。棒状、出来れば剣みたいな感じに出来たらいいな」


 浮かんでいる血液の球体にある魔力を棒状に薄く伸ばしていく。 


 まだまだスキルレベルが低いためできが悪いものの剣のようなものにはなった。


 「これで攻撃とか出来るかねぇ。すぐにぶっ壊れそうなんだけど……」


 試しに壁にぶつけてみることにする。


 「狙いを定めて……」


 放つ。


 案の定というか当たった瞬間に粉々にぶっ壊れた。


 「使い物にならんな」


 もしかしたらスキルレベルが上がって使い物になるかもしれないが現時点で高いわけではないので当分ギル○メッシュごっこは出来そうにない。


 「あのキャラ好きなんだけどな。厨ニ心をくすぐられるから。……ん〜【切断魔術】を付けたらできるかな?」


 ダメ元で試してみる。


 「もう一回作ってと」


 2回目だから最初よりも短い時間で生成することができた。


 「これに【切断魔術】を付与する」


 『血剣』の中にある魔力を使って発動する。


 『血剣』は薄い魔力を纏う。


 そして同じように壁にぶつけると壁が真っ二つに裂かれた。


 「……まじかよ。切断面で指切れそうなんだけど。しかも『血剣』壊れてないし」


 外にいるモンスターにオーバーキルになるような火力が出そうだ。


 「これだったら一人でも問題ないかな」


 『【血液操作】のレベルが上がりました。より高度な変形が行えるようになります』


 「これだけでスキルレベル上がるんだね」


 本来ならもう少しかかるのだが、他のスキルを重ねがけしたことによりたった2回の行使でスキルレベルが上がってしまった。


 「スキルレベルも上がったし、【切断魔術】の重ねがけでこれだけ出来るならもうレベル上げが出来るな」


 そう思い、外へ向けて歩き出した。


 


 

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