第5話 弟の為の復讐
暗い部屋に、パソコンの光が照らしだされる。男は『復讐代行』のサイトにある掲示板をスクロールしていく。あるメッセージを見て、男の手が止まる。
「ようやく……見つけた」
それだけ呟くと、男は携帯で誰かに連絡しようとした。だが、一向に相手は出ないのかすぐに携帯をしまう。男は出掛ける準備をして、外へと出て行く。ドクロの仮面を持って……。
* * * *
「秋月は何も喋りませんね」
「あぁ」
秋月を逮捕し取り調べを開始するが、一向に喋る気配がない。二人は捜査一課の室内に戻り、一服しているところだ。
「どうしたんですか?」
気のない返事をした仁科に、桜井は顔を覗き込んだ。
「いや、これ見てくれ」
仁科はそう言って、桜井にパソコンの画面を見せる。そこには、メッセージが書かれていた。
「これって……」
「このメッセージ、俺がこの部屋から出た時間に送られてきたようなんだ」
そのメッセージは、今まで起きた事件の直後に送られてきている。
「これって……もしかして、犯人が送っているとか?」
「そんなバカな」
二人は顔を見合わせて笑った。
* * * *
「……んっ。ここは?」
男は周りを見渡していた。すると一人の黒ずくめの男が視界に入る。その男はドクロの仮面を着けていたが、仮面を外すとゆっくりと近付いてきた。
「誰だ……あんた」
男の声は恐怖で震えている。
「私は、死神だよ」
一言だけそう言うと、写真を取り出し男に見せた。その写真を見て、男の顔は青ざめていく。
「君はいじめをしていたね。高校三年生まで」
死神の両目には殺意が色濃くでている。それ程までの怒りが男に注がれている。
その言葉を聞き男は狼狽える。震える口を必死に動かし、声を発した。
「な、何のことだ……。俺は、何も知らない」
そう言った瞬間、男の顔が左に飛ぶ。死神が男を殴ったのだ。
「あくまでもしらばっくれる気なんだね」
死神はそう言うと、椅子を引き寄せ腰を下ろした。
「さて、今から昔話をしようか。佐々木晴馬君」
「何で、俺の名前を……」
佐々木の言葉を無視して、死神は語りだした。
「佐々木君、君は中学三年から高校三年までの約三年間で一人の生徒をいじめていたね?そして……その生徒は自殺した」
「違う、俺じゃない。やったのはアイツらだ!」
そこまで言ったところで、佐々木の肩に痛みが走る。佐々木は肩を確認すると、ダーツの矢が刺さっていた。肩からは血が滲んでいる。
「まだ、私が話している最中だろ?話しを遮っちゃダメだよ。それに、君もあの輪の中にいた。傍観者だとしても私としては同じいじめをしている人間と変わらない」
死神はもう一本ダーツの矢を取り出す。指先でクルクルと、ダーツの矢を回しながら再び話始めた。
「君が……君たちがいじめて自殺した生徒は、私の弟なんだ。そうとう苦しんだんだろうな。誰にも相談できずに一人で死んでいったよ」
寂しそうな表情をした死神。それを見ていた佐々木は何とか逃げ出そうと試みるも、両手に食い込むロープがほどけない。ロープを解くのに夢中で、死神が動いていることには気付いていない。佐々木の足に痛みが走り、足を確認すると死神がダーツの矢を突き刺していた。
「駄目じゃないか。逃げようとしちゃ」
佐々木の顔に死神は顔を近付け、そう言った。冷酷な死神の目を見た佐々木は、死を覚悟した。死神は不気味な笑みを浮かべると机の上に置いてある工具を手に取る。
「そんなので……何しようとしてる」
その問いには答えずに、死神は佐々木の指を手に取ると持っていた工具で爪を挟む。
「ま、待ってくれ」
その言葉を無視し、死神は爪を剥がした。佐々木の声が静寂な室内に響き渡った。佐々木は大量の汗を吹き出し、呼吸が荒くなる。死神は無言で、次々と佐々木の爪を剥がしていく。その度に佐々木の叫び声が室内に木霊した。佐々木の両手の爪は全て剥がされていて、指先が血で真っ赤に染まっていた。
「もう、やめてくれ……アイツには悪いことをした。だから……もう」
「こんなことで許されるとでも?弟の受けた傷はこんなものじゃない」
死神はダーツの矢を手に取ると、佐々木の瞼を指先で広げると勢い良く突き刺した。佐々木の目からは、とめどなく血が流れ落ちていく。再び室内に、佐々木の叫び声が響いてた。暫く経つと、佐々木は全く動かなくなってしまった。
「まだ、私の復讐は終わらない。最後にいじめの首謀者を狩らなくては……」
そう言って、死神はその場を後にした。
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