第4話 サイト『復讐代行』

 仁科たちは生徒から情報を得て、パソコンで『復讐代行』というサイトを検索した。


「見つけた。これだ」


 仁科はサイトを見つけ、クリックしてサイトを開いてみた。画面が真っ暗になると、そこに『復讐代行』という四文字が赤く浮かび上がる。なんとも不気味なサイトを仁科は下へとスクロールしていく。掲示板を見つけ投稿されているメッセージを見ていく。


 掲示板には悲痛なメッセージが何件も投稿されていた。そこには顔写真も一緒に掲載されていた。


「あっ、この写真」


 掲載されていた写真を見た桜井が声を上げた。その写真とは三件目の被害者、真中稔だった。仁科は他にも写真が掲載されていないか確認すると、三件見つかった。その写真とは、一件目と二件目の事件の被害者の顔写真だった。だが、残りの一件の写真に関しては、見当がつかない二人。


「掲示板に投稿している匿名の連中は全員いじめ被害者なのかもな……」


 仁科がそう呟くと、隣にいた桜井が静かに頷く。


「桜井、サイトの管理者が誰なのか調べてきてくれるか?」


 仁科の指示に桜井は「はい!」と返事をしてドタバタと部屋を出て行く。仁科が目頭を押さえていると、電話が鳴る。電話に出ると、仁科は険しい表情に変わり何度か受け答えをしてから電話を切った。


「なんてこった……」


 仁科はため息交じりにそう呟くと、部屋を慌ただしく出て行った。仁科が先程まで見ていたパソコンには、新着のメッセージが……。そこには匿名で「舌が切り落とされた死体がある」という表示がされていた。


            * * * *


「被害者は篠原征二。他の三件の事件同様に舌を切り落とされています」


 報告を受けた仁科は腕組みをして、考え込んだ。


(この被害者もサイトの掲示板に顔が掲載されていたな……。)


「あの……」


 声がして振り向くと、そこには肩で息をしている桜井の姿が。


「どうした?」


「どうしたじゃないですよ。指示されたことで報告に戻ったら仁科さんがいないから……。現場に出たって聞いたから追い掛けてきたんですよ」


「すまん……。忘れてた」


桜井は「全くもう」と呟いた後に、仁科の後ろにある遺体を見て吐きそうになっていた。


「で、何か分かったのか?」


 吐きそうにしている桜井を無視して、仁科が聞いた。桜井の顔は青白くなっており、目からは涙が溢れそうになっていた。


「サイト管理者は秋月史人あきつきふみとといって、一年前に開設したようです」


 桜井は吐き出しそうになるのを一生懸命に抑えている。その光景を見た仁科は桜井の背中をさすった。


「……で、その秋月の居所は?分かっているのか」


「は、はい。居場所は分かっています」


 その言葉を聞いた仁科が桜井の背中を叩いて「行くぞ」と一言だけ言った。背中を叩かれた桜井は盛大に吐いてしまった。


             * * * *


「ここが秋月の住んでるアパートか?」


「……はい、部屋にいることはすでに確認済みです」


 仁科の問いに桜井は答えるが、まだ顔が青白く気持ち悪そうにしている。そんな桜井を尻目に、仁科は秋月の部屋まで歩き出した。アパートは二階建てになっており、二〇二の部屋番号の前で仁科は足を止めた。チャイムを鳴らすと、暫くして眼鏡を掛けている男が扉を開けた。その男の髪は寝ぐせでボサボサ。二〇代後半の見た目をしていた。


「少しお時間いいですか?」


 そう言いながら仁科は警察手帳を秋月に見せた。秋月の顔色は一切変わらない。


「……なんでしょう?」


 秋月はボソッと一言だけ言った。仁科は警察手帳をしまうと、サイトのことを秋月に尋ねた。すると秋月は、口角を少し上げニヤッと笑った。


「あのサイトは……苦しんでる人たちのために作ったもの。今ではそれなりに有名になり何件も書き込みがある。……まぁ、中にはいたずらも数件ありますけどね」


「死神については何か知っているか?」


 仁科の問いに秋月は少し驚いた表情をした。


「へぇ、そこまで調べたんですね。今の警察もそこまで無能ってわけじゃないんですね」


 そう言って秋月は、静かに笑った。その笑いを無視して、仁科は更に質問をする。


「死神とはどういう奴だ?何故、復讐を代わりにしている?」


「質問が多いですね……」


秋月は暫く考え込んでいたが、仁科の目を見ながら話始めた。


「彼もまた復讐者だからです。……目的の人を探すために他の人の代わりに復讐をしている。僕はそれを手助けしているだけです。それに……」


 一呼吸おいて、秋月が更に話す。


「彼はいじめを心底嫌っている。だから、苦しんでる人を助けているんです」


 その言葉を聞いた二人は顔を見合わせる。仁科は手錠を取り出し、秋月の手首にはめた。桜井は秋月を連れて車に乗り込む。仁科は青く広がる空を見上げた。


「死神を捕まえない限り……事件はまた繰り返されるな」


 そう呟くと、仁科は車に乗り込み走り出した。

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