第3話 ターゲット『篠原征二』
彼の名前は
「あいつ、来るかな?」
「来てもらわないと困るだろ」
「確かに、俺たちもう金がねぇからな」
笑いながら雑談していると、そこに一人の男子生徒が現れた。オドオドした生徒の瞳は小動物のように怯えている。三人は現れた生徒を確認すると、立ち上がり篠原が口を開いた。
「金は持ってきたか?」
男子生徒は首を横に振った。その瞬間、男子生徒の顔が左に弾かれる。口が切れて血が滲んでいる。篠原は男子生徒の胸倉を掴み、顔を近づける。
「昨日、俺が言ったこと覚えているか?金を持ってこなかったらボコボコにするって」
篠原はそう言いながら、男子生徒の顔や腹を殴り続けていた。後ろの二人はその光景を楽しそうに笑いながら見ていた。
「お、お金なんて……もうないよ」
「だったら、親の財布盗むとかあるだろ」
「出来るわけ……な」
言い終わる前に、また殴られる。それから暫くの間殴られ続け、男子生徒は地面に倒れ込んだ。「今日はこの位で勘弁しといてやるよ」という言葉を吐き捨て、篠原たちは立ち去った。
「もう……こんなの、嫌だ」
地面に倒れ込んだ男子生徒は静かに涙を流した。その光景の一部始終を写真に撮っていた人物がいる。その写真を添付して何処かに送っている。
* * * *
時刻は深夜を少し回ったところ。鼻歌を歌いながら篠原は家路に着こうとしていた。背後にいる男には気付かずに……。男は持っているスタンガンを首元に当てる。
篠原は「ウっ」という呻き声と共に地面に倒れ込んだ。男は篠原を引きずって車へと乗せこんで、走り出した。
篠原は水を掛けられ目を覚ます。周りを見渡すと、廃工場のような所に両手を拘束されていた。
「……誰だよ、お前」
篠原は正面に立つ男を睨みつけながら言った。
「死神だよ。君はこれから死をもって償うんだ」
「何言ってんだ?何で俺が償わなきゃいけないんだ」
「まだ分からないか……」
そう言うと死神は、持っていた写真を篠原の前にかざした。それは校舎裏で、男子生徒に暴力を振るっている写真だった。
「何なんだよ……。いつもオドオドしてた奴を殴ってなにが悪い。悪いのはアイツであって俺じゃねぇ」
全く悪びれた様子を見せない篠原に死神は、懐からナイフを取り出すとゆっくりと篠原に近づき足を刺した。篠原の足からは少しずつ血が滴り落ちる。唇を噛み締め篠原は、声を上げずにいる。
「ほぉ、結構我慢強い方なんだね。それじゃ我慢比べといこうか」
「お前は狂ってる……。」
篠原は足からの痛みに耐えながら、死神の方を睨む。
「君に言われたくはないな。弱い者いじめをすることしか出来ないんだから」
死神がそう言うと、再びナイフが振り下ろされる。
* * * *
「まさかここまで我慢するとはね……。正直驚いたよ、今までいなかったからね。ここまで叫び声を我慢する人は」
「お前……。一体何人に同じようなことをした?」
その問いに死神は暫く考える素振りをしてから答えた。
「二人かな……。いや、三人だったかな?まぁ、どうでも良いでしょ。君も死ぬ運命なんだから」
そう言うと死神は、ナイフを投げ捨て代わりにハサミを取り出す。篠原の口に手を突っ込み舌を引っ張り出した。流石に恐怖を感じた篠原は、おもわず声を上げる。
「お、おい。……何をしようとしている。やめ……」
篠原が言葉を言い終わる前に舌は切り落とされた。大量の血が流れ落ちるのを死神は黙って眺めていた。
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