第19話
エクスファックの前に立つと、奴はがっかりした顔をした。
「男がまだいたか」
「お前に発情ポーションをかける」
「何を言っている?それでは我がたぎるだけの事」
俺は無言で発情ポーションを投げつけた。
投てきスキルにはこういう使い方もある。
「たぎる!たぎるぞ!エクスバインド!!」
遠くにいたトレイン娘・エリス・ヒメ・ファルナ全員が触手に引き寄せられ、エクスファックの近くに集まる。
「本当にすまない!みんなを守って戦うことが出来ず本当にすまない!」
俺はストレージから落ち着いて発情ポーションを取り出す。
そしてエクスファックに投げる。
エクスファックのターゲットは女性だけになっていた。
エクスファックは発情ポーションを投げる事で、ターゲットが女性のみになる。
更に拘束して武具の耐久力をひたすら下げて、状態異常スキルを連発してくる。
大技をどんどん使って魔力を使い果たしてくれ。
これで男は狙われない。
俺が狙われない。
「後36本投げるまでエクスファックの触手にみんなが捕まる!本当にすまない!」
エリス・ヒメ・ファルナ・トレイン娘がエクスファックのターゲットを取ってくれている。
みんなの犠牲は無駄にはしない!
「防具が溶けるよ!」
「え!こういう意味だったの!!ねえ!さっき話がかみ合ってなかったよ!!!」
「触手を振りほどけませんわ!」
「やっぱり私に魅力があるんです!ほら!私狙われてますよ!」
俺は無事に発情ポーションを投げ終わった。
「は、早くしてよ!防具の耐久力が持たないんだ!それにさっきから触手が絡みついてくるよ!」
「まだだ、まだフェロモンポーションが終わっていない」
全神経を集中させる。
俺は針の穴を通すほどの正確な投てきでエリス・ヒメ・ファルナ・トレイン娘にフェロモンポーションを直撃させた。
「ふぉおおおおお!たぎるううううう!」
「く!何度斬っても触手が絡みつきますわ!」
「待っていてくれ!」
俺は頑張った。
俺は何度もエクスファックを攻撃した。
ターゲットにされた皆の犠牲に報いる為何度も攻撃した。
みんなは触手に服の耐久力を削られ、バインドされ続けた。
みんなは必至で触手を攻撃するがダメージを与えてもまた違う触手がみんなをバインドしていく。
みんなが協力してくれたおかげで俺は光を掴もうとしている!
俺は何度も攻撃を続けた。
そしてついに、エクスファックが倒れる。
エクスファックが倒れて消滅し、ドロップ品を吐き出す。
エクスファックを倒したのだ。
頭の中で何度もレベルアップとレベルリセットの声が響く。
「危なかった。皆の防具の耐久力が無くなる前に倒すことが出来た。ギリギリセーフか。紙一重の戦いだった!!」
「「アウトよ!!」」
全員が地面に倒れ、スタミナを削られて転がっていた。
戦いは終わった。
ヒメは地面にぺたんと座り込んで涙を溜めながらジト目でこちらを見ていた。
大事な部分は破れていないからセーフだ。
ただ粘液で濡れている。
セーフなのに大事な部分を腕で隠している。
そう、セーフ。
セーフなのだ!
エクスファックのドロップ品を回収する俺にファルナが近づいてくる。
「倒してくださり、感謝しますわ!お礼を言うしかありません!ですが他に手は無かったのですか!!」
ファルナは俺にお礼を言ったが、フルフルと怒りを溜めるように震えて手を握りしめる。
王女として色々な葛藤があるのだろう。
「これしかなかった。これしか出来る事が無かった。自分で出来る最大限の事をした」
「く!分かりましたわ。それではごきげんよう」
そう言って下がっていく。
エリスはすぐに自分の防具の耐久力をチャージし、防具チャージの行列が出来る。
多くの手数料を取れるだろう。
トレイン娘も意外と赤くなって体を隠す。
クラスメートの女子達が話しかけてくる。
「助かったわ。所で、アサヒのパーティー抜きでクラス会議をしたいわ」
その後女子はヒメを見た。
「事情は分かっているからあくまでアサヒのパーティー抜きでね。ヒメの安全の事も話し合いたいのよ」
「分かった。ヒメもいいか?」
「うん」
クラスメートの『アサヒのパーティー抜き』の言葉で参加する決心がついた。
そして、エクスファック戦よりクラス会議の事を優先で話している点も真剣さが伝わってきた。
マジで、怒られなくて良かった。
エクスファックは女性の敵だ。
触手で武具の耐久力を削り、服を裂き、媚薬攻撃までして来る。
でも女性は死なないからセーフ。
セーフなのである。
俺達は日時と場所を決めて分かれた。
戦いが終わり、歓声と多少の抗議の声の中闘技場を後にするが、トレイン娘がさっきからうるさい。
「やっぱり!私には魅力があるんですよ!王女やエリス、それにヒメと同じくらい触手の拘束を受けました!」
「そうだな。皆の犠牲のおかげだ」
「そういう意味だと思わなかったよ!!」
ヒメが少し怒っているがその顔も可愛い。
「説明する時間は無かった」
「そうかもだけど……何か大切なものを失ったよ」
「大事な部分まで破けてないし、セーフだと思うぞ」
「絶対アウトだよ!もうぬるぬる!」
「今日は皆で温泉に行きましょう」
「そうだね、僕も今日は温泉に行くよ」
「すぐに行こうよ、ぐちょぐちょして気持ち悪いから!」
「エクスファックの魔石が一杯手に入ったんだ。今日くらい贅沢してもいいだろう」
俺達は温泉に向かった。
温泉にたどり着き全員分のお金を払い、ヒメが更衣室に入る時に「またね」と言って小刻みに手を振った。
可愛い。
エリスとトレイン娘も入っていく。
でもヒメは勘違いしてないか?
ここは日本と違う。
温泉はもちろん混浴、更衣室も男女共用だ。
今すぐ更衣室に入ったらヒメを驚かせてしまう。
カルチャーショックの連続はヒメの精神に悪い。
ヒメが温泉に浸かりゆっくりするまで待とう。
5分してからいこう。
確か温泉は湯気が多いはずだ。
5分経てば大丈夫だ。問題無い。
温泉に来て温泉に入らないという選択肢はないのだ。
俺は5分ほど待って更衣室の扉を開けた。
更衣室というより、温泉から上がった後に体を拭くのと、裸で休憩する空間が合わさっている。
入ると全員18歳前後に見える女性しかいない。
「あ、ごめんね。すぐあけるから」
「変なものを見せちゃったね。どうぞ」
全員が俺に目を向けて遠慮する。
一瞬で装備を装着しない部分が良い。
更衣室にいる際に装備を装着するのはマナー違反。
それがこの世界の常識なのだ。
「普段通りにしていてください!謝る必要はありません!ここはみんなの憩いの場所です!」
俺は紳士的にふるまった。
「そっか、でも君が入ってくるとなんだか緊張しちゃう」
「お気になさらず!僕は居ないものと思ってもらって構いません!」
俺は部屋全体を見渡して温泉に向かう。
次使うかもしれない施設だ。
どのような施設か全体を見ておきたい。
全員18歳位で皆美人だ。
着替え自体は紋章装備なので一瞬だ。
それに防具を解除してすぐ装備することで洗濯も不要だ。
歩きながら防具を解除して一切の無駄なく温泉に向かう事も可能だった。
だが周りを見渡す。
みんなが恥ずかしそうにして謝って来るのが最高だ。
じっくりと見渡す。
人生に無駄なことなど何もないと偉い人が言っていたのを思い出す。
脳内保存完了。
ミッション終了!
さて、温泉に向かおう。
俺は体を流し、湯船に浸かる。
3人は落ち着いた様子で温泉に浸かっていた。
俺は温泉でくつろぐヒメの横に移動し話しかける。
「温泉って最高だよな」
「な!なんでハヤト君が居るのよ!」
ヒメがビクンと驚き大声を出す。
「ヒメ、それはひどいよ。エクスファック戦のハヤトに思う所があるのは分かるよ。でも温泉に入っちゃ駄目はひどすぎるよ」
「喧嘩は駄目ですよ!一緒に仲良くしましょう」
「そ、そうじゃないの!ハヤト君が温泉に入ってるでしょ!」
「どういう事か分からないよ」
「え?え?」
「俺と同じでヒメも転移者だ。混乱するのは分かる。少しずつ慣れて行こう」
「ええええええ!!そういう問題!?」
「ゆっくり湯船に浸かって落ち着きましょう」
「そういう問題なの?ハヤト君、私がおかしいのかな?」
「ヒメ、日本の常識とここの常識はだいぶ違う。日本に帰れないんだ。慣れていくしかない」
そう、この世界の文化がおかしいと言って否定するだけでは生きていくのが苦しくなる。
受け入れる事が大事だ。
その後ヒメはずっと考え事をしているようだった。
「所で、皆に相談があります!」
「なんだ?」
「うさぎ亭の大部屋に誰も泊ってくれないんです!ぜひ3人で泊ってくれませんか?」
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