第13話

 ゴブリンが出て来た。

 俺はロングナイフを投げて倒した。


 スライムが現れた。

 俺はロングナイフを投げて倒した。


 ラビットが2体現れるがロングナイフを投げて倒す。


「ちょ、ちょっと待ってください!私何もしてませんよ!」

「そうだよ、まったく戦ってないんだ」

「大丈夫だ。問題無い。魔石とドロップ品の回収は頼む」


 俺はさっきから短剣スキルと投てきスキルを駆使してナイフを投げている。

 投てきスキルは短剣や槍など相性のいい組み合わせがある。


 斧や剣などの投てきの場合、武器を投てきして投げ終わると消えて手にまた武器が現れる。

 投げた武器が消えるまで手に武器が出現しない。


 だが短剣の場合3本まで投げる事が出来るのだ。

 3連射できる。


 短剣と投てきのレベルを上げても威力は弱いが、中距離の投てきで安全性は増した。

 格下の雑魚狩りスキルとしては優秀だ。


「何もしていないのに経験値を貰うのは悪いよ」

「いや、皆は出来るだけ戦わないでくれ。戦うとスタミナが無くなる」


 俺は魔物を見つけては投てきするを繰り返した。

 


「エリス、紋章のチャージを頼む」

「分かったよ」


「そろそろ奥に進もう」

「ラビット狩りをしましょう!」

「そうだな」


 俺達は奥に進む。



「ああ!まずいです!中ボスラビットですよ!」

「僕も戦うよ!」


「いや、まだ前に出ないで欲しい」


 ギャアアアアアアアアア!


「まずいですよ!仲間を呼んでます!」

「僕も戦うよ!包囲されるよ!」


「自分の身だけ守ってくれ!ははははは!ついてるぞ!どんどんラビットを呼んでもらおう!ほら!もっと呼べ!」


 ロングナイフを中ボスラビットに投げる。


 ギャアアアアアアアアア!


「まだだ!まだ足りない!」


 俺の範囲に入ったラビットは全部倒す。

 だが中ボスラビットには生き残ってもらう。


 さあ、どんどんラビットを呼べ!


 こうして俺は中ボスラビットにラビットを呼ばせて戦い続けた。

 難点は中ボスラビットは攻撃を食らわせないと中々ラビットを呼ばない事だ。


 俺は自分が強くなっている事を実感した。

 いや、ターゲットが3人に分散している事も大きい。




 戦闘が終わるとエリスとトレイン娘が地面に座り込む。


「息が、苦しいよ」

「私も、少し休みます」

「分かった」


 俺は取得したスキルポイントを全部短剣と投てきにつぎ込んだ。


「少し休んでダンジョンから出れば昼位か?」

「食事休憩にしましょう」

「そう、だね、はあ、はあぁ、そうしよう」




 食事中は2人に戦うペースを落として欲しいとお願いされた。

 その気になればすぐ2人ともレベル10までは行けるが、もっとゆっくり進みたいようだ。


 

 食事を摂ってダンジョンに向かった後は、2人の言葉数が減っていった。

 うさぎ亭に戻るが、2人はぐったりしていた。

 俺だけが元気いっぱいだった。




 俺の部屋で明日の作戦会議をするが、2人はベッドに寝ころんだまま言う。


「あれだけ戦ったら誰でも強くなりますよ」

「ハヤトがボロボロになって返って来る理由が分かったよ」


「トレイン娘、もう眠りそうじゃないか」

「眠くなってきました~」

「明日は夜が明けてからダンジョンに向かおう」


「そうだね、長時間は、きついよ」

「2人とも部屋に運ぼう」


 トレイン娘を運んでベッドに置く。


「布団をかけてください。枕も頭の下において欲しいです。それと水差しに水を汲んでおいて欲しいです」


 注文が多い。


「分かった」




 次はエリスだ。


「エリスも眠いか?」

「眠くなってきたよ」

「一緒に寝るか?」

「そうだね、ええ!」


 エリスが急いで布団から起き上がる。

 そして落ち着きなく前髪をいじる。


「目が冴えたよ」

「一緒に寝るのはいいのか?」

「きょ、今日は汗を流してないからね」


「一緒にお風呂に入ろうか?」

「きょ、今日はいいよ!」


 エリスは出て行った。

 赤くなって可愛い。

 だが、断られたか。


 はあ~。

 断られるとは思ったけどショックだ。

 買い物に行ってこよ。


 その日はエリスと顔を合わせず終わった。





【次の日の朝】

『王国歴999年冬の月61日目』


 朝か。

 俺は朝日で目を覚ました。

 今日はクラスメートの研修最終日か。


 5階くらいまで行ってる可能性もある。


 朝集合すると、エリスの顔が変わっていた。

 また好感度が上がっている?

 日本でやったら引かれる事をしたけど上がった?


「エリスの顔が赤いですよ」

「そ、そうかな?」


 エリスは俺をちらちらと見ている。


「エリス、一緒に寝ようって言って悪かった」

「気にしてないよ」


「あれ、二人の世界ですか?私は無しですか?ハヤトさん、私は無しですか?」


 トレイン娘がウザがらみして来る。

 悪気はないんだろうけど話が進まない。


 俺はトレイン娘の流れをぶった切る。


「今日もダンジョンに行こう」


 俺達は歩き出した。



「今日は試したいことがある。エリス、協力してくれないか?」

「分かったよ」

「助かる。このフェロモンポーションをエリスの体に塗りたい」


「意味が分からないよ!」

「このフェロモンポーションを体に塗って欲しい。被って貰っても構わない」


「言葉は聞こえたけど意味が分からないんだ。そのぬるぬるした液体を僕が塗ったらどうなるんだい?」


 俺は紙を取り出した。

 これはエロゲではよく使う手だ。

 だが理解されない可能性も考慮した。


 説明文書を用意してある。

 この世界の常識は普通と違う。

 ぬるぬるエリスを見られるかもしれない。




 レベルアップ計画

 ①エリスの体にフェロモンポーションを塗る。

 ②魔物がエリスのフェロモンに惹かれて寄って来る。

 ③俺が魔物を倒す。

 ④皆レベルアップ。

 ⑤みんな幸せ。



「……僕がおとりになるって事かな?」

「そうなるが俺が全部倒す!絶対に守る!1階なら大丈夫だ!」

「かっこいい顔して言われても困るよ!」


「この世界の魔物は男性は即殺し、女性はエチエチな目にあわせるだろ?」

「そうだね」

「魅力があるエリスなら魔物がたくさん寄ってくると思う」


「ぼ、僕が、魅力的、でも」


 エリスはゲームで好感度が高い状態と同じ反応をした。


「私、私じゃ駄目ですか?」

「トレイン娘も可愛いとは思うけど、俺はエリスの方が良いと思う。大丈夫だ。2本しかない」


 2本しかないとかそういう問題ではないが、とりあえず言ってみるのだ。

 なんせここはエロゲの世界とそっくりだ。

 日本ではありえない展開が待っているかもしれない。


「私に貸してください」


 トレイン娘がエリスと自分にフェロモンポーションを頭からかける。


「私にも集まって来ると思います」


 2人が粘土の高いフェロモンポーションを被りてかてかになる。

 光を受けて反射する。

 グッジョブだ、トレイン娘。


 だがトレイン娘は腕で胸を隠す。

 少し赤いし、恥じらいはあるのか。


「やはりこの世界は俺の居る世界と常識が違うようだ」

「サミ、トレイン娘は普通じゃないよ!」


 サミ?サミーとかサミアが本名か?

 もう本名で言ってもいいんじゃないか?


「さあ、どっちに来るか勝負です!」





「魔物は集まってきた。でもどっちに寄って来たか分からない」


 魔物は寄ってきたが乱戦状態だ。

 俺はロングナイフを投げて魔物を倒す。


 昨日もっとゆっくりレベル上げをしたいとは言われている。

 でも見たかったんだ。

 ぬるぬるエリスを見たかった。


 その後エリスに「そういうのは嫌だなあ」と言われ、俺はこの後ペースを落として魔物を狩った。

 その日トレイン娘のレベルが10になった。


「試したかったんだ。終わったら休むか?」


「休みます」

「やすませてもらうよ」


 皆ぬるぬるは嫌いか。

 俺は残った時間を1人で魔物狩りをして過ごす。






『王国歴999年冬の月62日目』


 クラスメートの研修は終わったか。

 この世界に来て5日目か。


 この日も3人パーティーでダンジョンに向かう。


 だがそこに奴が居た。









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