第11話

 俺はボロボロに破けた装備でエリスの元に向かう。

 エリスは「毎回ボロボロだね」と言って俺の体を見ていた。


 前よりエリスの顔が赤い。

 紋章チャージをしてもらうと座ったまま固有スキルを確認する。


____________________


 固有スキル:訓練LV3

・固有スキルの枠を3枠使用する。

・レベルアップ時レベルをリセットする。

・レベルアップ時スキルポイントを10ポイント獲得する


____________________


 訓練LV2はレベルアップでスキルポイントを5ポイント獲得できた。

 これは皆と同じだ。

 だが訓練LV3はレベルアップでスキルポイントを10ポイント獲得できる。


 スキル取得の効率は2倍になる。


 俺はステータスを開いてスキルを振る。




 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル 訓練:LV3

 ジョブ:闇魔導士

 体力:1+100  【UP!】

 魔力:1+40   

 敏捷:7+100  

 技量:1+100  【UP!】

 魅力:0+70   

 名声:0

 スキル・体力アップ:LV10【UP!】・魔力アップ:LV4・敏捷アップ:LV10・技量アップ:LV10【UP!】・魅力アップ:LV5・スタミナ自動回復:LV4【UP!】 ・武器:初心者ナイフ:1 ・防具:初心者防具:3





 俺は体力アップ・技量アップ・スタミナ自動回復に振った。


 当初は考える条件を減らす為ステータスアップスキルに全振りしようと考えていた。

 ゲームではそうしていた。


 だが早く前に進みたい。

 それと装備が貧弱で何度もダンジョンとエリスの元を往復し、スタミナの消費が思ったより多くなっていた。


 そこで途中からスタミナ自動回復に振る方針に変えた。

 ゲームと違って特に金がネックになっている。

 往復するために走るのが無駄だ。


 強くなればポーションの消費は減るだろう。

 ポーション1本で1万魔石する。

 ポーションを節約して金を貯める。


 次は50万魔石する初心者卒業セットの購入を目指す。



 今の手持ちは21万魔石か。

 中ボスを倒し、10万魔石を手に入れたのが大きい。

 更にさっき戦った中ボスラビットは大量のうさぎ肉をドロップした。


 うさぎ亭にいこう。

 俺はうさぎ亭に向かった。



「120個のうさぎ肉、ありがとうございます。96000魔石になります。たくさんうさぎ肉を売ってくれたので、お礼に10万魔石を差し上げます」


 クエストのクリア報酬も貰えるのか。


「ありがとう」


 お金に余裕が無い。

 遠慮せず受け取る。

 これで手持ちのお金は40万魔石。

 あと10万か。


 今ある紋章装備を5万で売却すれば。残り5万。

 ドロップ品が出なくても、後2回ダンジョンに行けば、落とした魔石だけで初心者卒業パックを買える、はず!


 ダンジョンに行こう。




「誰かーーーー!助けてくださーい!」


 3回目!

 トレイン娘か!

 ダンジョンに入ると俺はすぐにトレイン娘に会った。


 トレイン娘の後ろにラビットが走っている。


 俺は全力でラビットを倒した。




 ラビットを倒すと、トレイン娘がお礼を言ってきた。


「本当に助かりました。もう3回も助けて貰っちゃいましたよ」

「あんまり無理すると危ないからもうやめた方がいい」

「ナイフがボロボロですね。エリスの所に向かいましょう」


 


 俺とトレイン娘がエリスの所に行くとエリスが驚く。


「ハヤトがボロボロじゃないのは初めてじゃないかい!?」


「ハヤトさんは成長しているんですよ」


 トレイン娘が胸を張った。

 エリスがトレイン娘をジト目で見る。


「またラビットに追いかけられていた」

「やっぱり、何度もそんな事をしていたら死んでしまうよ」


「誰かが私とパーティーを組んでくれたらいいんですけどね。レベルが上がればもっといい紋章装備を付けられます」

 

 トレイン娘は俺をちらちら見た。


「すいません」

「断るのが早すぎます!」


「冗談抜きで話すけど、今は初心者卒業セットを買いたい。それまでは厳しい」

「初心者卒業セットを買えたら少しだけパーティーを組んでもらえますか?」

「少しだけなら」


「やったー!約束ですよ!」

「今いくら持っているんだい?」


「420000魔石」

「後8万、今の紋章装備を売れば後3万魔石だね」


「私が残りを出しますよ」

「いいのか?貰えるなら遠慮しないぞ」


「今うさぎ亭はうさぎ肉シチューフィーバーが起きています。お金はあるんです。その代わりパーティーを組んでくださいね。報酬も払いますよ」


「ハヤトはすぐに装備を買い替えた方がいいよ。僕もハヤトの装備は気になっていたんだ」

「そうです。ハヤトさんはもっといい装備を付けた方がいいです」

「助かる。パーティーを組むのは明日でいいか?」


「それでお願いします」

「報酬は前に借りたストレージを貰うでどうだ?」

「分かりました」


「エリスも来るか?」

「僕は、報酬を払えないから遠慮するよ」

「エリスも来て欲しい」


 このゲームでトレイン娘はクエストに失敗するとエチエチな目に会う。

 更にエリスはお金に苦労しており、助けそこなうとハードなエチエチプレイを受けてゲームオーバーになる。


 ヒロインが落ちてゲームオーバーになっても俺の生活に問題無い可能性はあるが、ヒロインの敵はほぼ悪人で、敵が力をつければ厄介な状況にしかならないだろう。


 それに、俺はエリスを助けたい。

 ヒロインの中で最初に危機が訪れるのがエリスだ。

 エリスのレベルが上がればエリスが楽になる。

 エリスの収入が増えてもエリスが楽になる。

 

 もちろん葛藤はある。

 早く強くなる為に回り道になるかもしれない。


 だがエリスには世話になった。

 可愛くて近くに居るとドキドキする。

 それに優しい。


 もし助けずにエリスが酷い目に会ったら後悔すると思う。


 強くなること、エリスを助ける事、両方出来る範囲で進めよう。




「でも、僕に返せる物は何もないんだよ」

「そういうのはいいから来て欲しい」

「ちょっと、距離が近いよ」


「紋章装備を張り付けてくれた時も距離は近かっただろ」

「あ、あの時は集中してたから」

「来てくれるよな?」

「わ、分かったよ」


 エリスの顔が赤くなる。


「ちょっと~私私、私もいますよー」


 トレイン娘が割って入る。


「悪かった。3人でパーティーを組んで明日朝出発で問題無いな?」

「頑張りまーす」


「エリスも返事は?」

「お願いするね」


「次は武具か」


「武器はどれにするんだい?」


 エリスの顔がまだ少し赤い。


 俺はゲームでは刀を使っていた。

 刀が一番使いやすかった。

 刀スキルの前提条件を満たすのはまだ先だ。

 ジョブチェンジの金がない。


 短剣にするか?

 攻撃力は低いが、短剣スキルと投てきスキルを組み合わせれば雑魚狩りには有利だ。

 基本スキルで取れる為ジョブチェンジの必要もない。

 その分スキル枠を2つ使う。

 

 短剣にしよう。


 短剣スキルも投てきスキルも基本スキルから取得可能だ。

 ジョブチェンジの必要が無い。


「ロングナイフで頼む」


 俺はテーブルの椅子に座る。


「手を出して」


 エリスは少し緊張しているようだった。

 エリスの胸に俺の手が当たりそうで当たらない。

 緊張していなければ当たっていたかもしれない。

 惜しい。


 俺の紋章が消え、カードに変わった。

 全裸になった。

 大事な部分はテーブルで隠れている。


 この世界にプライバシーの概念は無いようだ。

 こうやって全裸が普通なのか。

 感覚が分からん。


 トレイン娘とエリスの顔は少し赤くなっていた。


 だがトレイン娘は俺の体を凝視している。


 続いて新しいカードを俺の手の甲に乗せる。

 新しい武具の紋章が両腕の甲に現れた。


 すぐに防具をまとう。

 初心者卒業セットの防具は初心者セットの色違いだ。

 ブラウンからブラックになった。


 ナイフはロングナイフに変わってリーチは伸びた。


 

 新しい装備が嬉しくなり俺はダンジョンに向かった。


 エリスはしょうがないなあという顔をして見送る。





「ははははは!切れ味がいい!リーチがあって使いやすい」


 ゴブリンを右手のロングナイフで突き刺す。


 リーチが変わり、使う前は不安に思ったが、ナイフからロングナイフに変わって使いやすくなった。


 武具の耐久力も上がった。

 性能も上がった。

 強いわけではないが、耐久力が上がったのが1番嬉しい。




 暗くなって来た。

 帰ろう。


 


 うさぎ亭に帰ると昨日より客が多い。

 並んでいる客が居る。


「次お待ちの方!中へどうぞ!」


 接客のお姉さんが忙しそうに動き周り、客のお姉さんが話をしながらうさぎ肉のシチューを食べている。


 厨房のお姉さんにうさぎ肉を渡すとまた喜ばれた。


 席は満席で食事も立って並ぶ客が多い。

 風呂も空いていない。


 スキルの方針を決めよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る