第10話

 俺はクラスメートと再会した後エリスの元に向かった。


 食事を摂りたいが、どこがおすすめか分からない。

 ゲームの知識はあるが、ゲームをプレイしただけで実際にこの世界の食事の事はよく分からないのだ。


 それにエリスと話をするのは楽しい。


 食事のおすすめをエリスに聞くと、「僕が案内するよ。一緒に食べに行かないかい?」と誘われた。


 こ!これは!いにしえに伝わるあの!

 で、でで、デートではないか!


 俺は武士のように「よろしくお願いいたしまする」と礼をしたらエリスに笑われた。

「君は本当にお茶目だね。さあ、行こう」


 こうしてエリスと共におすすめ料理店の席についた。

 おしゃれなテラス、洋風のお店、デートっぽい。


 初日よりエリスの距離が近く感じる。

 物理的にだ。



「ダンジョンの魔物狩りは順調みたいだけど……凄く頑張っているよね?何か目標があるのかな?」

「近い目標で言うと、ダンジョンの2階を目指したい」


「ダンジョンの2階、君はソロだよね?いや、パーティーだとしてもきついんじゃないかい?」


 ダンジョンの2階は1階と違い難易度が上がる。

 ソロで初心者セットしか買えない俺を心配するのは当然だ。

 

 2階は魔物がパーティーを組み、トラップが出てくる。

 更にフィールドが草原から森に変わりナイフゴブと弓ゴブに奇襲されやすい。

 2階用の対策が必要になってくるのだ


「そうだな。準備が必要だ」

「朝と様子が違うね。何かあったのかい?」


「……実は」


 俺は悩んだ末、異世界から転移して追放された件までを話した。





「今までのお茶目な行動も全部異世界の英雄と考えれば分かる気がするよ」


 そう答えるエリスだが、エリスの顔が変化した。

 好感度がまた上がっている!?

 もう一度エリスの顔を見る。


 見間違いじゃない。

 エリスの顔が好感度が上がった状態に変わっている。

 

 秘密を打ち明けたせいか?

 いや、昨日魅力アップのスキルLVを上げたせいかもしれない。


「それで、他のクラスメートと今日会って、皆は3日間の研修で上の階に行くらしい。皆はどんどん先に進んでいくだろう」


 皆すぐ100レベルを突破すると考えて動こう。


「それで2階を目指そうとしたんだね」


「そう、なる」

「ハヤトも頑張っているんだね。勇気を貰えたよ」


 勇者アサヒは余裕の表情で俺にマウントを取って来た。

 アサヒはスポーツ万能で勉強も出来る。

 ダンジョンの上に行く算段があるのだろう。


 アサヒはスキル管理の難しい勇者だ。

 一見初心者用に見えて実は上級者向けのプレイスタイルが求められる。


 紋章装備の選び方も失敗しているように見える。

 そうなればステータス振りやスキル取得も失敗する可能性が高い。

 だが、俺に分からない攻略法を確立しているのかもしれない。

 アサヒはそういう抜け道を見つける能力が高い。

 願望のような考えは捨てよう。


 俺にはゲームの知識があるとはいえ、この世界はゲームと違う部分もある。

 特に人間関係は元の世界と同じだ。

 選択肢1つで好感度が上下するような単純なものではない。


 俺は急いで強くなっているつもりだった。

 だがまだだ!

 もっと早く強くなる!


 転移してきた昨日より今日。

 今日より明日と効率を上げて強くなる。


 アサヒは前にいる。

 それをぶち抜いてやる。

 ハードモードの方がやる気が上がる。

 あと少しレベルリセットをすれば固有スキルのレベルが上がる。


「楽しそうだね」


 エリスが俺を見て笑顔になる。


「ん?ああ、次どうするか考えていた。それにエリスと話を出来て楽しい」


 エリスが照れる。


「そ、そうかな?そうなんだねぇ、顔が熱くなってきたよ」


 こうしてエリスが照れながら顔を手で仰ぐ。

 可愛い。


 食事が終わると俺はすぐダンジョンに向かう。




 ダンジョンでラビット狩りをすると、出て来た。


「中ボスか!」


 2階からは普通に出てくるが、1階ではそんなに出てこない。

 運が悪い。


 明らかに大きいラビットが俺の前に出現した。

 中ボスの厄介な点はHPが10倍になる事。


 そしてもう一つ特徴がある。


 ギャオオオオオオオオ!


 中ボスラビットはランダムでスキルを1つ持つ。


「魔物を呼ぶタイプか!」


 まずい!このまま何度も仲間を呼ばれればナイフの耐久力が切れる!

 武器が無い状態で包囲されるのはまずい!

 

 俺はすぐに中ボスラビットに突撃してナイフを突き立てた。


 中ボスは口を開けて攻撃モーションに入る。

 その瞬間に俺は横に走った。


 中ボスの攻撃を避けた瞬間ナイフで連撃を浴びせた。


 その隙をつくように横から雑魚ラビットが俺に迫り、ダメージを受ける。

 俺は雑魚ラビットをナイフで倒した。


 ギャオオオオオオオオ!


 また仲間を呼ばれたか!

 俺は雑魚の攻撃を受けつつ強引に中ボスラビットに攻撃をする。

 ナイフで攻撃を繰り返し、中ボスを倒した。


 レベルが上がってリセットされる。

 頭に響く声を無視した。

 

 俺はラビットに囲まれていた。


「うおおおおおおおおお!!」




 俺はラビットの群れと闘い、最後の1体を倒す。


 その瞬間ナイフの耐久度が切れる。

 ジャストタイミング!

 耐久力はぎりぎり間に合ってくれた。


『レベルがリセットされました。5ポイントのスキルポイントを獲得しました。固有スキル訓練のLVがアップしました』


「上がった!!これで更に早く進める」


 俺は大量のうさぎ肉と魔石を拾う。

 ダッシュで魔物を無視して街に帰った。








 

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