第5話
俺はダンジョンに入ってすぐナイフを出現させた。
ナイフを右手に持ったままステータスを確認する。
落ち着かず何度も開いてしまうのだ。
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ハヤト 男
レベル:1
固有スキル 訓練:LV1
ジョブ:闇魔導士
体力:1+10
魔力:1+10
敏捷:7+10
技量:1+10
魅力:0
名声:0
スキル・体力アップ:LV1・魔力アップ:LV1・敏捷アップ:LV1・技量アップ:LV・スタミナ自動回復:LV1 ・武器:初心者ナイフ:1 ・防具:初心者防具:3
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初心者ナイフの攻撃力は1と最弱だ。
そして初心者防具は防御力は3だ。
ゴミ装備ともいえる。
ちなみに防具は物理防御と魔法防御両方の防御力を上げる。
1階は草原となっており見渡しが良くトラップも無い。
ゲームではチュートリアルの階だ。
だがこの世界で戦ったことは無い。
うまく戦えるか確かめたい。
早速出て来た。
スライムだ。
スライムは女性を見つけると倒してエチエチな目にあわせる。
だが男は即殺される。
1体だけで俺に向かって来る。
スライムはタックルしか攻撃パターンが無いが、俺の攻撃手段もリーチの短いナイフだ。
接近戦が始まる。
スライムが飛び掛かって来る。
俺は横に避けてすぐにナイフでスライムの中心をめがけてナイフを突き立てた。
スライムが消える。
「直撃出来たか」
ヒット部位によってダメージが変わるのだ。
勝てた!
やれる!
行けるんだ!
この階の魔物はソロで歩き回っており、1体ずつ落ち着いて倒すことが出来る。
1000魔石を落としたか。
ゲームと同じで1階の魔物は1000魔石か。
俺は魔石を拾う。
魔物を倒すと魔石を落とす。
赤黒く、少し光を放つこの小石はこの世界のお金の役割を果たす。
たまにアイテムをドロップする場合もあるが、今回は何も出なかったようだ。
更に歩くと、ソロのスライムが3体居た。
俺はすぐにしゃがんで隠れた。
3体固まっている。
1階の魔物は集団で行動しない。
たまたま個がすれ違っている状態だ。
バラけるのを待つか?
いや、複数の魔物が出るたびに毎回隠れていたら強くなれない。
俺の固有スキルとジョブは序盤は最弱と言っていい。
だが、能力値アップの効果で勝てるはずだ。
だがそれはゲームの話。
早く強くならなければ生活が厳しくなる。
俺は音を消して1体のスライムにナイフを突きつけた。
残り2体!
そこで2体のスライムが俺に気づく。
2体目のスライムを倒し、3体目のスライムの攻撃を避けようとして攻撃を食らい仰け反る。
ゲームではキャラの後ろか見下ろす視点で戦えた。
だがこの世界は自分視点の視野となる。
視界は悪くなっている。
「おりゃあああ!」
すぐに立て直してナイフで斬りつける。
全部のスライムを倒した。
「はあ、はあ、勝った、か」
弱いスライムの攻撃。
耐えられないわけじゃないが、痛い。
ゲームとは違うと実感する。
HPには余裕があるがすぐにポーションを飲んだ。
集中力を痛みで切らしたくない。
集中力が切れたら逆に危ない。
俺は前に進む。
遠くにゴブリンが居る。
杖を持ってる!
杖ゴブか!
俺が魔力アップと技量アップのスキルを取得した理由はこれだ。
魔力を上げない状態で1発でも当たってしまえば大ダメージを受ける。
技量を上げない状態で1発でも状態異常を食らったら最悪動けない状態で死ぬまで殴られる。
体力だけ上げてHPを上げておけば大丈夫とはならない仕組みなのだ。
最低限のステータスと条件をクリアしたうえで欲しいスキルを取得する必要がある。
脳死の特化振りは死に直結する。
それとたまにあるんだ。
たまにしか出てこない杖ゴブが偶然団子状態でまとまっている事が。
俺はゲームをして経験した事がある。
杖ゴブは1発しか魔法スキルを撃ってこない。
ランダムで何かの魔法スキルを撃って来る。
それさえしのげばスライムより弱い。
魔力も技量も上げてある。
魔法が当たっても大丈夫なはずだ!
行ける!
俺は杖ゴブの背後から走って近づく。
ギエエエエエ!
バレたか!
杖ゴブが後ろに下がりつつ杖が光る。
ファイアが飛んでくる。
俺は横に飛んで炎を避ける。
そして走って杖ゴブにナイフを突き立てた。
『レベルが1から2に上がりました。レベルとスキルポイントをリセットします』
頭に声が響く。
俺のレベルが上がった瞬間レベル1に戻る。
後2回レベルリセットすれば楽になるはずだ。
俺はさらに奥へと進んだ。
ラビットか。
動きは速いが、それ以外の能力は弱い。
一気に倒す。
俺はラビットを1体ずつ地道に倒していった。
「おりゃあ!」
ラビットに刃を突き立てる。
『レベルが1から2に上がりました。レベルとスキルポイントをリセットします』
後1回!
そこに聞き覚えのある声が聞こえた。
「助けてーー!誰かーーーーー!」
女性がラビットの群れに追われている。
ゲームで聞いた事があるセリフ。
見た事のある光景。
突発クエスト、トレインだ!
ゲームと違いクエストとして表示されることは無い。
だが状況はゲームと同じ。
女性が電車のように列をなす魔物に追いかけられている。
トレイン娘か。
ラビットの群れに襲われる女性を助ける事でランダムで報酬をもらうことが出来る。
ゲームではスルーすることも出来た。
ゲームではスルーするとエロシーンのイベントを回収できた
だが、この世界でスルーしたあの女性はどうなる?
魔物の巣に運ばれてひどい目に会うだろう。
ラビットの数が多い。
倒しきれるか?
ゲームなら倒せる。
キャラの後ろから見下ろす視点で魔物をとらえることが出来た。
だが今は自分視点でしか見れずゲームの時より視界は悪い。
実際俺は横からスライムの攻撃を受けている。
それ以外の部分でもゲームと同じように戦えるか分からない。
女性がラビットに噛みつかれた瞬間に俺は前に出ていた。
1体!
2体目!
3体!
ラビットを倒していくが、俺は背後から攻撃を受ける。
レベルアップの声が頭に響くが無視してナイフでラビットに刃を突き立てる。
囲まれそうになると包囲の外に走ってまたラビットを攻撃する。
何体倒したかも数えなくなった。
HPが減っていく。
時間の間隔が無くなり、戦いに集中する。
左手でポーションを飲んでビンをほおり投げる。
右手のナイフは常にラビットに向ける。
ラビットの数は残り少ない。
後3体!
「うおおおおおおおおお!」
俺は無事にラビットを倒すと、大きく呼吸する。
何とか、何とかなった。
生き延びた!
勝ったんだ!
今まで味わったことの無い喜びに震えた。
「あ、ありがとうございます」
「だ、大丈夫か?」
「あの、あなたの方がボロボロです」
自分の服を見ると服が破けていた。
ダメージを受けると防具の耐久力が下がり、こうなる仕様だ。
「大丈夫だ」
ゲームなら報酬を貰って終わりだが、ここは異世界だ。
「ポーションを飲むか?」
「いえ、あなたは大丈夫ですか?」
「そうだな」
俺はポーションを飲んだ後女性にポーションを飲ませた。
ポーションを飲んでもすぐに回復しない。
じわじわと回復するのはゲームと同じか。
「ダンジョンの外まで送ろう」
「ありがとうございます!!」
魔石やドロップしたうさぎ肉を拾ってダンジョンの外に出た。
「ありがとうございます!お礼がしたいです」
「今からエリスが居る紋章ショップに行く用事があるんだ」
「エリスの居る紋章ショップ、分かりました」
周りの者が俺をちらちら見ている。
装備がボロボロになるまで戦う者は珍しいのかもしれない。
皆綺麗な服を着ている。
俺は、パンパンになったバックパックにうさぎ肉を入れている。
手にもうさぎ肉を持っている。
目立って当然か。
「ショップに行くか」
不思議と恥ずかしさは無かった。
俺に余裕が無いからだろう。
人見知りでも追い詰められれば人に聞くし話すようになるのだ。
俺はショップ地帯に向かった。
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