第2話

「いらっしゃいませ」と店主の家内が応対した。

「ケーキの予約お願いします」


「かしこまりました。それではこちらの予約用紙にご記入下さい。お渡しは、3年3ヶ月3日後で、条件をクリアした場合のみとなります」

と言うと体温計のような物を渡してきた。


「これ何ですか?ってかそんなに待つんですか?」


「では、条件を説明しますね。あなたは、今からうちのケーキを受け取る迄、ケーキを一切食べないで下さい。今お渡した棒はその日ケーキを食べたかどうかがわかる記録ボーです。寝る前に1分口に入れるだけで、記録されますので、くれぐれも毎日欠かさずお願いします。1日でも忘れたり、ケーキを食べたらケーキは渡せませんので」


「なんで、ケーキを食べたらダメなんだ?

意味がわからないんだけど」


「それは、あなたの舌の状態を正常に戻す為です。今迄沢山のケーキを食べた人の味覚は狂ってしまっているのです」

そう言われた俺は、納得した。


あちらこちらの美味しいケーキを食べ、

ブログでランキングを発表していたが、

食べれば食べる程、

何処のケーキも美味しくて、見た目も芸術品

ランキングをつけられなくなっていた。

食べ過ぎて味覚が狂ってしまったんだ。


3年3ヶ月3日は、長かった。

誕生日も、X'masも我慢した。

究極のケーキを食べるため


そして、ついに手に入れた。

箱に入れられたホールケーキは

昔からあの店で売ってるイチゴのケーキと

よく似ていて、芸術性を1ミリも感じられない物だった。

だけど、一口食べると

飛び上がるほど、旨かった。

俺はあまりの美味しさに泣きながら食べた。

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