究極のケーキは、いかがですか?

maris

第1話

俺の町にある一軒のケーキ屋

それは、とてもケーキ屋とは思えない佇まいをした昭和初期創業の古い店だ。

といっても老舗店のような風格はない。


店主は、やせこけ、しょぼくれた中年男で、その男にお似合いな冴えない妻がいて、

2人で店を切り盛りしていた。

その店で売ってるケーキは

正直美味しくない。

それでも潰れないのは不思議でしかたない。

なのに、最近その店で究極のケーキを

売ってるという噂を耳にした。


あ~、最近、昭和レトロが流行ってるみたいだから、昭和時代から変わらないあんなケーキを食べたがるんだな。

まぁそれもブームが終わるまでさ。

そんなふうに思っていたが、

その後、その店の前には行列が出来、次第にその列の長さは、長くなった。

そして、半年後には究極のケーキを売る店としてネットにも登場するまでになっていた。


都内の有名店のケーキを食べ

ブログで紹介するほどのケーキ好きの俺が、

自分の近所の店の究極のケーキを食べていない事は、プライドが許さなかった。

みんなの先をいきたい俺が

遅れを取ってしまった…


もたもたしている場合じゃない。

一刻も早く食べないと…

俺は店に行って買うことにした。


だが、それは予約しなければ買えないケーキだった。

店の前に並んでいた行列は

予約したケーキを受け取る為の行列だったのだ。

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