第65話

「しゅっごいの!ミレイねーさま」

ミレイから簡単な風魔法を見せて貰いつつ、フリックは目をキラキラと輝きながら言った。

「とはいえ、まだ…簡単な魔法しかあたしは出来ないんだ。色魔法といっても黄魔法は使えるみたいなんだけど、どう使うのか分からないし」

「色魔法は確かに色を知らないと分からないですよ」

「そ、そうなの?ただ単に黄魔法だから黄色って言えばいいってモノじゃないんだ」

「はい。まあ、詳しくはクレイス兄さんに聞いてみるといいよ。クレイス兄さんは色魔法なら全ての色を扱うことが出来るから」

「エリオシュにーさま…」

「ん?どうした?フリック」

「ボクね?にーさまみたいなまほーもちゅかってみたい」

良く森で転んで怪我した時、エリオスから治療魔法を掛けて貰っていることからフリックは、エリックのような治療魔法にも憧れていることから言った。

「うーん。そうだなぁ…」

「ダメなの?エリオシュにーさま…。ボクもにーさまたちみちゃいなまほーちゅかいたい」

「まずは…魔力の制御が出来ないと教えられないかな。ルシウス兄さんも言っていただろう?」

「せーぎょ?」

「そう。魔法を使うには使用する魔法に沿ってマナと呼ばれる魔力を使うんだ。制御が上手く出来れば…」

「へぇー…そうなんだ。あたし、制御云々の前にシリウスさんからイメージでって言われるままにやってたけど」

スライスもイメージだと言われるまま、漸くと召喚魔法で羽ペンを始めとする小物系統は勿論、風魔法もウィンド以外に僅か1cm程度だけ、ミレイは浮遊が出来るようになったのである。

「そうですね。魔法は制御以外にイメージが出来れば出来ますもんね」

「イメージってなに?にーさま」

「え、えっと…それは思い浮かべながら…」

治療魔法しか出来ないエリオスは、不慣れながら頭の中で思い浮かべたモノとして、召喚魔法をやってみた。

≪出でよ…仔猫のぬいぐるみ≫

森にあったモノの中からフリックのお気に入りのぬいぐるみの一つをイメージしながら、エリオスはやってみたのである。

が、形は余り思い浮かべられなかったからなのか、仔猫というよりも良く分からない形のぬいぐるみが召喚されてしまったのだった。

「しゅっごいの!にーさま」

「そ、そうかな?」

とにかくと何もない所から出て来たことにフリックは、ますます魔法に興味を持ったのである。

「エリオスさん…コレって仔猫…?」

「そ、そうだね。確かにコレは猫じゃないよね…」

「にーさま…コレはなに?」

「う、うーん。イメージでは仔猫のつもりだったんだけど、僕も分からないかな。ごめん」

頭の中で思っていたイメージをしっかりと出来ていなければ、召喚魔法は難しいんだなとエリオスは思いながら返したのである。

「それなのに…シリウスさんの召喚魔法って凄いなぁ」

「そうだね。意図も簡単に召喚魔法もこなしているからね」

「ボク、やってみりゅ…」

フリックは、先程のエリオスの構えを真似しながら、召喚魔法を挑戦してみた。

≪いでよ…ぬいぎゅるみ≫

が、召喚魔法を放つ際に生じるポンッ!と音が鳴るだけで、何も出なかったのである。

「ううぅ……ひっく……ひっく……」

「フリック…。も、もう一度…挑戦してみよっか?」

「うー………」

「それにぬいぐるみの前に仔猫って言わないとさ?」

「う、うん!ボク…もーいっかいやってみりゅの」

何とかミレイのお陰でフリックは、再度挑戦してみたのだった。


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