第62話

「ヤバい…!このラーメン、ヤバい…!」

レイオスは、使い慣れないものの、箸を持つ手が止まらないことから、もう夢中になっていた。

「あ、ああ…。こんな美味いモノがあったとは…」

「う、うん。僕の料理がお粗末みたいで、フリックに申し訳ない気持ちで一杯だ」

今までフリックの食事は、母であるフィリアが亡くなってから、ずっとマイラスが作って来たことから言うと、フリックは起きてしまったのである。

「にーさま…?」

「ん?起きたみたいだな…」

「おっきしたの…!」

フリックは小さな欠伸をしながら言うものの、その仕草に思わず余りの可愛さにミレイは抱き付いたのである。

「かわいい!」

「つぅ…」

「ご、ごめん…。痛かったよね…」

「う、ううん。とちゅぜんだったから…ビックリしただけなの。にーさま…なにをたべていりゅの?」

ふと周りは何か食べていることにフリックは気付いたのだ。

「ああ。ラーメンというヤツだぞ。美味いぞ…フリック。食べるか?」

「うん!たべりゅ!」

さっきまで食欲は無かったものの、レイオスに言われて、フリックのお腹の虫が小さく鳴ると、シリウスは、食べやすいように小さなお椀の中に麺と塩分控えめのスープと具材をトッピングすると、フォークとスプーンをフリックの前に置いたのである。

「はい。どうぞ。まだ熱いから気を付けるんだぞ」

「うん。シリウシュおにいちゃま、ありがとーなの」

「俺がふぅふぅとしてあげようか?」

「ううん!いいの…あちゅ!」

「ほら。言わんこっちゃない…」

「ここは一人で好きなように食べさせた方がいいんじゃないか?いつまでも過保護過ぎてもさ?」

シリウスは、餃子をラーメンのスープに入れながら言った。

「そ、それもそうだな。フリック…ごめん」

「ひとりでたべりゅの…う、うう…」

そうは言うものの、フォークの持ち方は握り拳だからなのか、上手く麺を掬えずに泣き出しそうになってしまったのである。

「フリック。パスタみたいに巻いたらどうかな?」

「うん。エリオシュにーさま…やってみりゅの」

エリオスのアドバイスを受けながら、フリックは巻き始めた。

「やっぱり…かわいい!」

「ああ。オレたちの大事な妹だからな。毎日が可愛いさ」

ネイサスは、シリウスに倣って餃子をスープに入れながら言った。

「そうそう。それにしても…この餃子。スープに入れて食べるとすっごく美味しい」

「だろ?俺は昔からこの食べ方が好きなんだ。他にも白いご飯の上に載せて食べるのも好きだけどな」

さすがにでんでんメシになることから、今日の昼食は豚骨ラーメンと餃子にしたのである。

「今度、僕にもこの料理とか教えてくれますか?」

「ああ。とはいえ、俺の料理は基本的に召喚魔法で出した、即席系だけどな…」


そう、今はマジで食材は乏しいのだ。

だからこそ、どこから召喚されているのか分からないが、敢えて気にしない方向性で出すしかない召喚魔法を頼っているのであった。


とはいえ、俺は凝った料理は出来ないからこそ、即席なんだけどなぁ…。

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