第61話
「う、うーん…ルシウシュにーさま…?」
まだ、寝惚けたままでフリックは言った。
「起きたか?フリック。そろそろ昼食は出来るそうだが、食べられるか?」
「たべちゃくない…」
囚われていた時、満足に食事なんて摂れなかったことと同時にショックが大きい故にフリックは震えながら小さく返したのである。
「…でも、少しは食べないと体に悪いぞ」
「ううぅ………」
「それに今日からずっと兄さんたちが一緒だから」
「ホント…?にーさま…?シリウシュおにいちゃまもいっしょ?」
「あ、ああ…。それにお前にそろそろ魔法の一つや二つと教えてあげたい所だからな」
自分の身を守れるようにまずは魔力の制御からなんだろうけど、どう教えればいいのかどうかルシウスは思いながら言った。
「ホント…!?まほー…おしえてくれりゅの?」
「ああ。え、えっと…スライスだったか?」
「は、はい。すみません…。さっきから何も言わずに」
どう口を挟めばいいのか分からずに苦笑しながらスライスは言った。
「フリックを看てくれてありがとう」
「いえいえ。で、今日からお部屋はどうしましょうか?」
「ボク、にーさまたちといっしょにおネンネしちゃいの。ひとりはいやなの。こわいの」
「という訳なんだが、この城に俺たち7人兄妹が入る部屋はあるだろうか?」
ルシウスは、フリックの頭を優しげに撫でながら言った。
「はい。700階の700室にここよりも更に広い部屋がありますよ」
「そうか。ありがとう」
「にーさま………」
「どうした?フリック」
「ちゅかれたの…」
「お、おい…フリック」
「また、寝てしまいましたね…。無理もありませんが」
「…そうだな。後でマイラスに頼んでデザートを作って貰うか」
一人にさせておくことに気が引けることから、ルシウスは眠っているフリックを抱き上げると、食事の場として用意されている、ホールへと向かったのである。
「やっと来たか。ルシウス兄貴」
レイオスは、シリウスに言われるままに人数分の箸、取り皿を並べながら言った。
「あ、ああ。ん?見られない人間がいるようだが…」
「あー…彼は人面樹の…」
「シャガルだぜい。エルフの兄ちゃん、宜しくだぜい」
「…魔物って色々なタイプがいるんだな」
「そうは言ってもまだ、俺は調味料系統を生み出すプラントとスライスとシャガルしか生成していないんだがな…。で、まだ…この子は寝ているのかい」
シリウスは、無性に食べたくなったという、豚骨風味のラーメンを人数分に置きながら、ふとルシウスに抱かれている、フリックを見て言った。
「あ、ああ。何だかんだと今は疲れの方が勝っているみたいで、起きたかと思ったら、また寝てしまったんだ…」
「…そうか。後で何か食べられそうな物を用意しないとな」
「それなら、僕が作りますよ。フリックは甘いケーキとか好きだから」
「そうか。ただ、材料はないぞ?今日からシャガル以外の人面樹を生成すれば、少しは材料は取れるかも知れないが、そう簡単に材料はすぐに手に入らないと思うんだが…」
幾らシリウスの召喚魔法は万能とはいえ、どこから召喚されているのか分からない以上、生成以外で使用する材料は、自給自足で補いたいことから、そう返したのだった。
「大丈夫。この城の裏手にある森にある果物を使いますから。ただ、砂糖はプラントの方をお借りしたいと思っているんですけど、いいですか?」
「ああ。構わんぞ」
シリウスはマイラスに返すと、他のエルフたちも揃った所で昼食になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます