第58話

今、ラグーン王国内では、ハイエルフ・シルヴァンエルフのエルフ狩りが頻繁に行われていた。エルフから抽出した魔力で魔石を作り、北東大陸にあるノイント都市国家との長期に渡る休戦条約を破るつもりで今は軍事力を高めていた。


「あのエルフから抽出したという魔力で、今度こそより強力な魔石が出来そうだ…」

魔石研究所で、ある青年は昔の魔石を復活させようとしていた。

魔導具として表向きは、他国で売っているものの、裏では古代文字を研究した結果、五行と呼ばれる精霊魔法の他にダークエルフの魔法である、闇魔法を組み合わせることで、ハイエルフやシルヴァンエルフの魔法を無効化させるということが判明したのである。

「ただ、もうこの量しかないな…。あそこから数日間と絶えずに送られて来たというのに。せっかくと水の魔石と闇魔法を施した、無霧の魔石ノイアッシュ・ミストと名付けた霧もなぜか晴れているし…。うーん…シルヴァンエルフの魔力は並外れだと聞いたことがあるのだが、王に直接と聞いてみるか…」

ある青年は、魔力の提供が漂っていることから、カイシェイドの所へと向かったのである。






「で、どうして頻繁に今頃になってエルフは、ラグーン王国という人間の国から狙われているんだ?」

この世界は、勇者と魔王の長い戦いの中で、漸くと平和を手にしたというのに、人間の欲というものは、どこの世界にもいるんだなとシリウスは思いながら言った。

「今の時代の人間は、余りマナを持たない。それ故に昔から絶えずにマナを持ち続けるエルフに目を付け、フリックのようなエルフを攫っていくんだ…。森の中にいれば、結界の問題で人間は余り出入りは出来ないんだが、外の世界に出たばかりのエルフは、狩りの対象にされてしまうんだ…」

フリックも先日、レイオスから人間の国の話を聞いて以来、人間に興味を持った故にあのような目に遭ったのだろうとレイオスをゴツンとルシウスは小突きながら言った。

「いっつぅ…!ルシウス兄貴。何も本気で殴らなくてもいいじゃないか!」

「元は言えば、お前がフリックにあのような話をするからだ。もっと他に寝かし付ける話はあるだろ」

「そうそう。僕なら夢ある話をするよ」

「あー…寝かし付ける当番だったらなぁ…」

兄たちは順番で、フリックを寝かし付ける当番が回って来るようであった。あの日以来、フリックは一人寝が怖いことから、今はスライムであるスライスがフリックを看ていた。


「で、どうするんだ?ラグーン王国に何もしないままで終わる気は…無いんだろう?」

シリウスは、他に捕らえられているエルフがいる以上、何とかしてあげたいと思いながら言った。

「…そうだな。今一度と大長老シェルファ殿に相談してみるつもりだ。そろそろノイント都市国家から戻って来ている頃だろうからな…」

ネイサスからあの時は不在だということを聞いていたことから、ルシウスは返したのだった。

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