第25話
「何だか良い匂いがする…」
まだ、どこか眠そうにしているミレイは、ホールへと来るなり言った。
「あ、ああ。おはよう。ミレイ」
「うん。おはよう…シリウスさん。朝から何を作ってるの?」
「あー…朝食だ。今日は俺の世界の定番の定番でいこうかと思ってな」
俺はそう言いながら、出来たばかりのだし巻きに味噌汁、そして、俺の世界の米をイメージにしながら、召喚魔法で出した、あ○たこまちを使って炊いたばかりのご飯を並べたのである。
「何だか昨日の夜に続いて知らないご飯ばかり…」
「コレからもっとお前の知らないご飯が続くから楽しみにしているといいぞ」
「そうだね。何だか楽しみになって来たかも。昨日も結局、ウィンドしか出来なかったから…色々と今日も試してみたいし。でも、あたしのマナ量だと1、2回が限度なのよねぇ…」
「その件だが、ミレイ…」
「何?シリウスさん」
「俺の生成する魔物を相手にレベルアップを地道にしていけば、自然とマナは勿論、魔法も身に付くんじゃないかな?」
仮にも俺は、一応は大魔王なんだと昨日は言い忘れたことを思い出しながら言った。
「だ、大魔王…だったの!?マジ?」
「あ、ああ。そうらしいんだ。まあ、俺は元々、前世で人間だったし、何も危害は加える気は全然ないから安心していいぞ」
「そうだよね。危害を加えるような容姿、全然していないもん」
歴代の魔王は何冊も本になっているように、とてもじゃないけど、人とは呼びにくい容姿として描かれているとか。
相当、前世への恨みというか腹いせから、この世界から人間を始めとする種族を可能な限りで殺戮を繰り返したと歴史小説で良く描かれているという。
ただ、この世界に最初の魔王ヴァレス・リノベイションは、地上に魔法を伝えた魔王として知られたものの、その世界を恐れた、神のお告げを受けた勇者ご一行が自身の命と引き換えに命を落としたということであった。
「危害を加える容姿じゃない…か」
「うん。だって…あたしの故郷にいた男たちと似たような容姿だもの」
ミレイのその発言にはい!?と俺は思った。
まさかと思うけど、この世界の人間さんの容姿って…?
美男美女ばかりだというのか?
言われてみれば、ミレイの容姿も…なかなかだよな。
貴族ということを引いても、なかなか可愛い容姿をしているし。
ただ、服装が可哀想だよな。
後でワンピースとか色々と召喚しておこう。
流石に布で作ったような服は、可哀想じゃん。
せっかくと容姿はいいのに、服だけが質素ってさ…。
でもさ?きっと質素で普通の容姿の子だっていても可笑しくない筈。
俺なんか…前世の容姿なんて過去最悪だぞ。
最期には…ひったくりに遭った若い女性からバッグを取り返した際、その女性から『デブス』呼ばわりされながら、ナイフで胸をグサッと深々と刺されたからな…。
「まさか…まさかと思うけど」
「何?シリウスさん」
そう素直に返事するミレイに気になりながら、俺は召喚魔法で、前世の若い女性向けが好むジャ○ーズ系のアイドル雑誌を召喚したのである。
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