第31話 テンプレ

 オッサン死にました

 神様空間。他にも死んだ人いっぱい。纏めて転生させるよ。能力は生前の行いから付与するよ。その方がわかりやすいでしょ。説明も面倒だし。目的?君達が知る必要は無いよ。

 沢山外来種を入れて移入先の生態系壊すよ。


 転生したよ。

わぁ凄い。前世の行いって、やり込んだゲームのキャラとかの能力をこっちの世界に合わせた形で持ち込む感じか。懐かしいな学生の頃にやり込んだゲームのキャラの能力だ。

 転生先の世界ではマジックとスキルがあるのね。やっていたゲームは魔法やスキルを任意に付け替えてってタイプで色んな組み合わせをつけたり、やりこみ要素の多いゲームだったな。ベースは一番やり込んだ奴だな。

 何となくわかるぞ物理的じゃない内蔵機関を持った人類の世界か。魔法は最初から持っている魔力や使える魔法が固定かぁ。元のゲームもそんな感じで個々に魔法をスロットに装備するタイプ。同じ魔法でも強化して消費魔力を減らす等出来た奴だ。有用な魔法は大概身に付けてた。

 スキルも同様だ。スキルに関しては戦闘中に時間経過や行動で貯まる気力を消費する任意発動の物と常時発動の物がある。

 任意スキルはキャラによっては異なる所謂必殺技の類だ。必殺技や魔法の構成に合わせて常時発動のスキルを装備していく。

 懐かしいな、通常攻撃を連続攻撃にして、さらにノックバックによる相手の行動阻害構成だ。ヒット数増加で火力に上昇補正が作くゲームで10Hit以降はかなり補正が付く。これの連打で雑魚は封殺。ノックバックに耐性がある一部の雑魚やボス以外は複数の相手も簡単に倒せるんだよなぁ。

 守りは一定値以下のダメージ無効化と、最終ダメージの軽減。状態異常耐性と、攻撃を受けると気力増加編成。

 必殺技に戦闘中防御力を高める物と気力を消費して魔力を回復する物があるのでそれを合わせて相手の妨害をしながら、強敵は守りを固めて強力な魔法で倒す戦法だった。

 赤子に戻り人生やり直し。

 前世の教訓から勉学に励む所存。義務教育は偉大。社会に出てまともに義務教育修めた奴とそうでない奴との差は本当に大きい。中年の身で今一度教わり直したかった。

 そんな、後悔が無きようにする。

 幸い転生先は世襲は出来ないが貴族の家。食うには困らず学びの機会もある。


 まぁ、生まれてから自意識持った時には3歳過ぎて乳離れしてたよ。その辺のテンプレは無いのな。話が早くて助かるよ。

 両親は元傭兵だ。貴族様の迷宮攻略で雇われて成果を上げて1代限りの貴族となった。今はその時雇ってくれた貴族の治める農村で役人として他の町との連絡や貴族への連絡役として暮らしている。

 教養と貴族向けの礼儀作法、そこそこの武芸。それらを身に着けて上手くやったらしい。冒険者?何それ?職業?未開の地や迷宮に挑むのは探検家や開拓者と呼ばれるけど、職業じゃないよね。林業とかを営む人や歴史を学ぶ学者の業務の一環。魔物を狩るのは狩人だよ。

 大人になって思う事。子供に戻ったら勉強や運動をもっと真剣に取り組みたい。学び直したい。本気で学び本気で遊びたい。

 それをこちらの世界でやり直すのだ。幸いな事に両親は子供の教育に理解がある。学ぶ環境はある。あと意識意識持った頃には母は第二子を身籠っていた。この子も転生者なのだろうか。

 何にせよ文字を覚え言葉を覚え勉強に励む。子供故なのか転生の土台となる自分の育てた主人公キャラの能力故か記憶力がすこぶる良い。何なら前世の記憶も転生前より鮮明に思い出せる。確か人の脳は覚えた言葉を忘れるわけで無くて、不要な記憶は思い出せなくなるのだったか。そんな記憶の奥に封をされてしまわれた記憶も呼び起こせる。

 ちょっと調べた科学知識が思い出せる。現代知識チートも出来そうだぞ。ヤッター。


 人目を忍んで魔法を試す。使うのは初級の回復魔法。魔力消費無し。威力増加、HIT数増加。一部ステータス異常治療。一部を確率で治療。デバフ解除。効果増々である。確実に治療出来る異常は疲労、衰弱、混乱と体調不良っぽい奴。確率は毒や火傷といった外部からの影響で起こされる物になる。

 別に怪我とかしてるわけでは無いけれど、使った感じて効果が解る。ちゃんと強化された性能だ。これだけで勝確だな。続いてスキルを試そう任意スキルで防御力上昇、鉄壁の構え!


 肉が割ける。

 スキルに体が付いていかない。激痛に慌てて回復魔法を使う。初級出はなく上級の物だ。瞬く間に痛みが引いた。全身筋肉痛からの超回復である。もしかすると凄い鍛錬方法かも知れない。

 何にせよスキルはまだ早いようだ。

 翌年には妹が生まれた。

 その翌年、5歳になった頃。

 僕の能力の鑑定が行われた。細かい数値などが出るわけでなく、一部のスキルや魔法を覚えているかの判定となる。

 結果として初級魔法をいくつか、スキルは詳細不明たがこちらも複数所持とだけ判明した。魔法の詳細は知られたくないな。多分この世界では規格外だ。トラブルを生むだろう。

 任意スキルは父が体得していたレイザーエッジが使えると判明。これにはとても喜ばれた。

 この世界ではスキルや魔法を持たない人もいる。

 そのあたりは能力至上主義っぽい思想がある。少なくとも魔法と任意スキルを持っているならかなりカースト上位になれる。

 貴族位を世襲出来ない両親に取っては、僕の将来が安泰で一安心といった様子だ。

 任意スキルのレイザーエッジは主力となる攻撃スキルだ。手に持った刃物に魔力を付与して斬撃を強化する技だ。通常攻撃の威力増加と斬撃を飛ばす攻撃動作に変化し飛び道具となる。通常攻撃のノックバック等の効果は変わらず発揮されるので敵を文字通り寄せ付けない。他にも反撃体制になる任意スキルと先の鉄壁の構えで攻防一体となる。

 さておき、レイザーエッジはこちらの世界でも使い勝手が良さそうだ。活かすためにも剣の扱いを習わなくては。


 僕の思惑とは別に能力の鑑定後は両親が稽古をつけてくれるようになった。常時発動の攻撃スキルは使おうにも体が付いていかない。通常攻撃はスキルで昇華され11Hitつまり11回一息に剣を振るうわけだが、身体の動かし方は頭でわかっているのに上手く出来ないし、体力も腕力も足りない。練習用の剣も三度連続で振れば息をつく必要がある。


「俺に似て剣の筋が良いな。」


 そんな僕の事を父は褒めてくれる。


ああ、自己紹介がまだだったね。前世の名前?そんな特徴的な名前じゃないよ?鈴木 修ってさ。

今の名前はセクト

家名はノートン

まあ、世襲出来ないから直にただのセクトになる。

教育に理解ある親の下、前世の記憶も高くなった知力により思い出し算術は完璧。現地の言葉もリスニングは問題無し。

語彙と舌がまだ回らず発音が未熟なのは今後の課題だ。読み書きは基本的な物は大丈夫。

 勉強に剣の稽古にとこちらの世界では比較的恵まれた環境にある。こっちの世界の文明はまぁ、よくある。

 魔法による浄化で衛生環境は比較的良い。窓から汚物捨てたりはしない文化だ。似たような文明水準ツポイのにね。

 その割に汚物よけマントや座って用を足す用のスカートのデザインはあるんだよなあ。まぁ、それ以外の用途があってのことだろう。


 5歳にしては先ず先ずだろう。前世で5歳のときと言えばまだ読み書きも怪しいぞ。身体能力は比べ物にならないだろう。通常攻撃は2Hit安定してきた所だ。それでも天才扱いだ。魔法は初歩の回復魔法と氷の礫を飛ばす魔法を使って見せている。

 この魔法を見せてから村の守衛として配備されている兵士達が非番の時に稽古をつけるのに加わる様になった。朝は家庭教師の授業の後に両親と稽古。昼食をとり午後の授業と稽古。

 そんな毎日だ。

 それでも休日はあるもので、村の近くの林や川に遊びに行っている。一週間は7日と前世と変わらず、金曜の午後から土日が休みな感じ。案外満たされてる。


「セクト様、お疲れではありませんか?」

「急にとうしたの?オクタビアさん。」

「いえ、毎日鍛錬と勉学に励まれておりますので、きちんとお休みを取られているのかと思いまして。」

「休みは週末に取ってるけど、毎日いろいろなことが勉強出来て楽しいから、もっと勉強したい位だよ。」

「左様にございますか。ですが休み方を覚えるのも、また、勉学にございます。無理はなさらぬ様にお心がけを。」

「ありがとうオクタビアさん。」


 そんな会話しながら貪欲に学んでいく。



 大人達の目線ではセクトは手のかからない優秀な子供だ。子育ての苦労話を聞いて身構えていた両親は拍子抜けして。今は妹にかかりきりである。


「あのオクタビア様の、ウチの息子はどうですか?夜も渡された課題を真面目にこなしているようですし、最近は振る舞いも目に見えて変わってきましたし、良くやってるとは思うのですが。」

「貴女の長男は私が見てきたこの中でも飛び切りですよ。それこそ学院への推薦を書けと言われれば明日にでも出したい程に。」

「大袈裟ですけど、褒めて貰えるのはありがたいですね。」

「大袈裟な噺ではありませんよ。あの歳で勉学の本質、学ぶ理由を理解されている節があります。私の弟子として学舎に送り込みたいですよ。」

「ウチとしては、私達同様に本家の方の護衛に収まって貰えレバ充分ですよ。剣の腕も魔法の腕も将来が楽しみですし。」

「確かにそれでも良いでしょうけど、もっと大きな舞台用意して上げたいと思います。彼なら世襲を認められる様な成果を挙げられると思いますよ。」


 そんな評価をされながら平和な幼少期を過ごしている。


 そんな日々で休日の過ごし方というのは少し寂しい物がある。端的に同世代の友人が居ない。村の子供と接する機会が少い。村の子供達はそれぞれ親の仕事を手伝いながら同世代で交流を深めているが、僕はその間は家で勉学や稽古に励んでいる。

 休日は妹と世話役のメイドと共に家の周りを散歩したり、。読書をする程度だ。

 ゲームの世界観に近いこの世界では魔物と呼ばれる存在が生息しているはずだが村の近くでは見かけない。というより警備兵や魔除けの道具のお陰で出くわさずに済んている。

 自宅は村と畑をから少し離れた場所にある平屋の建物。馬車を止められる広さの庭と空の馬小屋。

 家の中は食堂と会議室を兼ねる広間、書斎、それから各人の個室と応接室。個室はそれ程広くはない。

 使用人や料理人は村に住むものが通っている。

 田舎の住人としては恵まれた環境だ。平和の一言に尽きる。ただ今の立場世襲出来ないので、この立場を相続する事は出来ない。

 平和なこの暮らしではゲームから引き継いだ規格外の戦闘力は必要とされていない。畑仕事に応用するか、どこでも需要の高い回復魔法を活かすか。将来の為に色々と考えてしまう。




 そんな日々でも多少の変化はあるもので。


「セクト、一度父さん達が仕える御方に顔を見せに行こう。」


 春の終わりに父が言い出した。月1の連絡の為に両親の仕える貴族、ミルニート家に訪問するのだがそれに同行する事になった。

 今住まうスタトの村から馬を走らせて半日、馬車や徒歩で一日かけての場所にあるターレスの町。そこに居を構え町を治める小さな貴族家。それがミルニート家だ。

 定例報告に向かう父に同行する事になった。

 こちらの世界で初めての外泊となる。


 早朝に村の早馬を借り、父の前に座る形で馬に乗りターレスの村を目指す。

 馬につける鞍は馬に重さを感じるさせず、寧ろ心地よく軽快に走れるようにさせる魔法道具とのこと。

 この鞍こそが両親が過去に傭兵として活動した頃に得た宝であり、今の立場を得るに至らせた物だという。


「これをつけた馬は、気持が良いもんだから外そうとする嫌がるんだよ。」


 そんな事を父が話してくれた。

 宿はターレスの町で馴染の場所が確保されているので、最低限の荷物、ほぼ身一つで向かう事になる。


 魔法の鞍は馬の体力回復等も効果があるのか、休み無く馬は走り抜けて半日かからずにターレスの町へと辿り着く。短い道中、父から鞍について自慢気に話された。曰く馬以外にも騎乗する対象に合わせて変形してどんな対象にも取り付けられるそうで、国の飛竜部隊等の軍部から高額で引き渡す要請もあったらしい。両親が死ぬか衰えて連絡役を果たせなくなった時に引き渡し、前世風に言えば退職金として代金を受け取る。同時に貴族の地位も失う。

 ミルニートの現当主が傭兵だった両親を雇い、ヤンチャをするのに同行し、落ち着いた頃に籍を入れようとしていた両親に色々と計らってくれた結果出そうな。


「お陰で安全な場所でお前の成長を見ていられる。有り難い話だよ。」


 両親はこの世界どころか、前世でも高齢出産にあたる歳だ。父は40の後半を過ぎている。本当に傭兵稼業から身を引いてからの子供となる。今の状況は両親に取って理想的な余生なのだろう。

 なればこそ孝行の1つや2つしたくもなる。前世ではあまり出来なかった。まぁ、親より早く死ぬ事はなかったのが最大の孝行か。今回は孫の顔見せてやりたいな。そのためにも今のうちから自分を磨いていこう。そんな決意を新たにした。


 到着したターレスの町で宿を取り、ミルニート家に挨拶に向かう。

 初めての見る貴族の屋敷。スタトの村には無い規模の建築物だ。

 先触れも出していたので、直ぐに中に通してもらえた。そして。両親の仕えるミルニート家の当主との初対面だ。応接室で待つことしばし。ドアが開かれ護衛と書記官らしき人をつれた如何にもな人物が入ってくる。父が隣で頭を下げるのを察してすぐに自分も膝をつき礼をする。オクタビア先生に教わった上の地位の者にする礼だ。

 呼ばれるまでその姿勢を維持。父が声をかけられ答えるのを聞きながら待つ。


「さて、横にいる息子を紹介してくれ。古い友がやっと連れてきた子だ、会えるのを楽しみにしていたよ。」


 その言葉の後に、父に、促されて顔を上げる。眼の前でソファに腰掛ける壮年の男性に、傚った通りの作法で、ゆっくり確かめるように所作を整えるながら、父の子として名乗る。


「ほう、いくつになる?」

「今年で5つになり、能力の判定をしました。」


 僕でなく父が答える。


「成る程、オクタビアが気にかけるだけはある。来年からの初等教室に間に合うだろう。次の春からウチが預かろう。」


 知らない話が進んている。

 その後、父達を残し僕は応接室から出された。

廊下にはオクタビア先生が待っており、僕についてくるように言う。それに従い後を追う。

 そして通されたのは、恐らくオクタビア先生が仕事をする部屋。

 見知らぬ二人の子供が立ち方の練習をしていた。

 僕は以前合格をもらった指導だ。でも侮られない様に気を張る。


 先生に促されて子供と自己紹介をし合う。二人はミルニート家の子供だ。少年の方は4男。第3夫人二人目の男児。もう片方、少女は夫人の付き人の子だという。父親は同じだと言うから一夫多妻の貴族らしい。

 後に知る事だが、興味本位の複数人行為を夫婦合意の下行い、その際に信用できる参加者として夫人が呼び込んだそうな。嫁入り前からの付き合いで、付き人が行き遅れて未経験な事もあってらしく。まぁ、子供が気にすることでは無い。

 何にせよ、こうして目出度く同世代の友人が出来たのだった。

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