第24話 イキリたい3

 今後する事。それは性成熟前に今の能力で倒せる魔物、魔族を倒せるだけ倒す事だ。魔族は対話を図っている勢力もあるそうだが、あの種族は成り立ちからして解り合う事は不可能だ。魔族はそもそも生物では無い。この世界に生命が生み出された影響で発生した、生命の陰であり世界の老廃物だ。生み出した物に似ているだけで、その存在自体が生命を生み出した神の目線では廃棄対象でしか無い。アレが繁栄する事は生命の終焉。全ての生命が消えて、その後生命の生まれない大地が残るだけだ。

 この世界に生を受けたからにはその辺の法則は絶対だ。ある意味、常に戦う理由に晒されており、それによる技術発展の環境にある。


 方針はきまったとはいえ、現在の自身の置かれた立場は実年齢で5年にも満たない。能力は足りていたとしても、そんな幼子を魔物との戦線に引き出す事をラミア達やロフレンが良しとするかだ。手のひらに乗る程度の大きさの魔物なら、森の中でも遭遇するし退治している。しかし、それ以上の相手となると良い顔はされないだろう。

 しかしいつかは魔物退治をしたいということは話しておこう。最初はこの森林の中も魔物から、果ては魔界に乗り込んで暴れてくるのを目標にしよう。

 平野の民の勇者や冒険者が魔界に踏み行ったという話もある。そうした旅に仲間として参加すれば良いだろう。


 最初はロフレンに元の龍の姿で話してみる。


「森林内に魔物を集めている領域がある。そこの間引きを住人達の中でも戦いに適した者が努めている。ラミアの村長もそうだ。焦らずともその任は周ってくる。森の外にとなると、洞穴の先の人の国でギルドに加入すれば話は早かろう。強き魔物に懸賞金をかけている。ナハスの力なら大抵の魔物はなんとかなるだろう。時間はある。人の街で評価を積み上げ、そして強き魔物に挑めば良かろう。」


 止めはしないが、遠回しに焦らず経験を重ねてからにしろと言われた。確かに老いのないラミア族やエルフなら何年でも用意して挑むだろう。寧ろ永きに渡る安定した守りの要としての役目を、種族として受け持つという考えなのかもしれない。

 完全に諭されたので、変わらぬ日々も再開する。

 次に気になっていたのは、ラミアの村の奥にあるルーデが氷室と言った場所に何があるのか確認だ。

 こういうのは気取られる前に行動するに限る。少し早く村に向かい、稽古が始まる前に真っ直ぐ奥の道に向かう。誰も止めるものは居ない。

 荒れた道だが均された跡がある。獣道では無い。

 少し進んた先に明らかに人口的に作られた地下への入口があった。何がすごいかというと、岩盤の地表から穴が空いている穴を少し降りた所に中への入口のドアがあるが、そこまで一つの岩なのだ。ドアも岩を削り出して作ったであろう物が備えられている。


「でも本当に普通の地下倉庫っぽいな。外からはわからないけど、中は崩落して使えなくなったとかかな。それなら危ないし近寄らせない様にするのも納得か。ちょっと期待外れ。」


 ドアの前は良く音が響く。そんな事を考えながら戻ろうと振り返ると、その時に倉庫の中で何か動いた気配がした。向き直りドアを注視する。何か気配がドアに近寄ってくる。


「お母さん?もうご飯?」


 ドアの向こうから微かに声がした。高い声。多分子供。

 

「お母さんじゃない、だあれ?」


 声に警戒の色が交じる。警戒というより怯えかな。


「僕はナハス。最近村に来たばかりなんだ。今、村の中を探検してるんだ。ここは君の家?」

「私の事知らないの?本当に村の人?」

「最近来たばかりだからね。」

「本当に?お母さん言ってた。外の人は怖いって。ラミア族意外は危ないって。」

「ラミア族だよ、ロフレンにこの村に連れて来て貰ったんだ。」

「ロフレン様が?でもここには入らない方が良いよ。」

「どうして?」

「危ないから」

「君は中に居るよ?」

「私は危なくない。ううん、私も危ないの。」


 危ない所に子供が閉じ込められている?

 だけどこの間見た時はここに食べ物が運ばれている様子だった。なら危険度はそこまで高くないのか?そもそも中に居るのは本当に子供なのか?

 色々と疑問が湧いてくる。取り敢えず開けてみよう。他ならぬ自分なら何とかなるだろう。

 そう思い、石の戸に手を掛ける。重い引き戸をゆっくり開けていく。


「駄目、駄目だよ!開けちゃ駄目。危ないよ。」


 制止の声は聞かず開ける。ドアの近くに居た気配が奥に行く。

 開けて最初に目に付いたのは、締まりかけのもう一つの引き戸。そう言えば氷室として使って居たと聞いた。二重の扉だったのか。

 その閉めかけのドアの向こうは真っ暗闇だ。まぁ、暗闇でも見えるのがラミアの目だけど。ドアから見える範囲には誰も居ない。少し体をいれて部屋の中を見回すと、部屋の隅に背を向けて蹲る様にしている小さな人影。体を小さく畳むようにして、上半身は地に伏す様にしている。ラミア族の子供の様に見える。


「君はどうしてこんな所に居るの?何かの罰?。ここに来たから僕もここに入れられちゃうかな?」


 軽口を叩くも返事は無い。おーいと、呼びかけながら部屋に入っていく。


「駄目だよ来ちゃ駄目なの!!」


 部屋に響く大きな声だ。少し驚いたが、声の主に目線をやり納得した。服を着ていないのだ。大方何かいたずらをして、罰として裸でここに閉じ込められたのだろう。老いず時間の感覚が緩いラミア族の感性だと、一日二日どころ数日に渡り入れられて居ても普通の事なのかもしれない。


「ごめんよ、もう出ていくから。でも村に僕の他にも子どもが居て良かった。ここを出して貰えたら一緒に遊ぼうね。」


 返事は無い。


「今度、こっそり服も待ってきて上げるね。」


 そう言って、二重の戸を閉めてその場を去る。戻りは森に入り、道無き道を進んで村に戻る。周りの森を探検してきた体を装う。満足気にいい感じの枝も拾い、稽古の場所へと意気揚々と向かうのだった。




 予想外の来訪者にラミアの少女は困惑していた。声の主は自分をラミア族のナハスと名乗り村の新しい仲間と名乗った。最初は疑った。しかし、急に石戸を開けて入って来ようとした時、その気配や地を這う音や気配は明らかに同族の者だ。その姿は見ていない。見るわけにはいかない。戸が閉じられ、気配が遠ざかるのを感じて、ドアに近寄る。確かにこの場所に誰か、恐らく自分と同じ子どもが居たのだ。気配が、魔力の残滓が感じられる。とても強い力を持っているのがわかる。

 ふと、足元になにか光るものを見つける。灯りのない部屋の中で光る物などあるはずもないのに、それは確かに一瞬光った。よく見ると再度、少し光は弱まったそれは光った。顔を近づける。魔力を感じる。

 手探りでそれに触れ拾い上げる。良く知った手触りだ。

 それは同族の鱗。部屋に残る魔力の残滓と同じ魔力を纏っている。手の中で仄かに光る。目が惹きつけられる。自分の魔力を受けて鱗は光を放ち続ける。何の変化もなく。流れてくる魔力を取り込み発光するだけ。鱗に何の変化も見られない。

 それは少女に取って大きな驚きであり、希望を生む事態でもあった。


 出られたら一緒に遊ぼうと、来訪者は言っていた。この鱗の持ち主となら、また会えるかもしれない。

 食事を持ってきた母の声がかかるまで、少女は夢中でその鱗を見つめて、見惚れていた。





「それでねロフレン。村で初めてラミアの子供にあったんだよ。ラミアのお仕置きって何日くらいで出してもらえるものなの?」


 稽古を終えて家に戻りロフレンに今朝の事を話して、質問してみる。


「7日から10日程じゃな。ナハスが洞穴の村に行った期間を考えると、一度出て、また入れられたのかの。だとすると相当なお転婆じゃな。」

「そうなんだ。そんな感じはしなかったなぁ。結構怖がりな感じたし、恥じらいもあったよ。」


 ロフレンも特に聞いては居ないようだ。だか彼は今回の事を咎めるつもり無い様だ。なので明日も行ってみようと思う。話くらいは出来るだろうから。

 そうして数日の間は朝早くに氷室を訪ね少し言葉を交わして戻る日が続いた。


「同族なら鱗を見せて。扉の間に置いて出て行けば大丈夫。」


 そんな事を言われたので言われた通りに入口の中室に鱗を数枚置いていく。改めて見ると薄い水晶か何かの様で、しかも仄かに光っている。蛇人に目の毒と言われた理由が何と無くわかる。多分だけど人の街に持っていけば相当な値打ちになるだろう。

 そして、今更ながら思い出した。サファイアウィルムの素材は色々とゲーム中でも用途があった。素材特有の効果を装備に付与できるアイテム作成のシステムがあり、付与できる性能は素材による。特にモンスターから取れる素材からは元のモンスターの特徴によるものが付与されるのだが、サファイアウィルムの素材はその優秀な耐性を付与する。つまりはステータス異常とデバフへの完全耐性だ。仲間に一つは持たせるべきである。他にも防御面で優秀だった。武器としては魔法の強化には有用だが、物理面はいまいちだった。それでも他のモンスターの素材よりは有用ではあった。

 そんなわけで自分の体を素材に色々と作って見よう。

 ロフレンの家の近くで夜中に人化を解く。そして身体を水に濡らす。戦闘中のフィールド効果というものがゲームではあった。それの再現だ。結構単純で、燃えてるとか熱を帯びてると炎、濡れていると水のフィールド効果がこの世界ではある。サファイアウィルムは水のフィールドで超回復する特徴がある。回復量はカンストダメージ1回分。

まぁ、後半は多段HITでカンスト何度も出すようなゲームだったので、それでも雀の涙だ。だがこうした回復力強化は大事だ。そして、顔から伸びている立派なヒゲを思い切り引き抜く。


いったぁ!!


痛すぎて声も出ない。意外と中まで深かった。今の顔見たくない。肉が戻っていく。回復魔法も連打する。

 二度としたくないが、超レア素材。多分二番目くらいにレアな龍のヒゲを入手したぞ。一番レアなのは龍の宝玉だだが、これは取ったら死ぬ。ヒゲはもう少し大きくなったら抜かずに切ろう。その方が被害少ない

 さて、採れた素材の使い道だ。鞭や加工すると、数少ない物理面で強い武器になる。クリア後に入れる隠しダンジョンを除くとゲーム中3番目に強い鞭だ。追加効果で水と雷の属性を付与したり、出来る便利品。でも武器作成の技能は無いので作れない。

 細工から作れるのは装飾品だ主だ。龍の髭と鱗を素材にネックレスが作れる。これはゲーム中最高評価を受けるアイテムの一つだ。

 評価点は基礎性能、付与できる性能の質と数。

 この首飾りは髭と大量の鱗が必要になる。他にも僕の体のレア素材が必要だが、作っておきたい品だ。痛すぎるのでもう二度とやりたくないけど、今はやると決めたのでやり切る。


 そうして作った蒼龍の首飾り。性能としては僕のサファイアウィルムとしての耐性を全て装備者に付与する。基礎性能も高い。このネックレスで相手の武器を受け止めたら大抵は武器な方が壊れるだろう。あと、サファイアウィルムというかウィルム全般に言えるが龍の扱いだが、龍族特攻の武器の効果を受けない。

 これ一つで全属性半減。水と雷は吸収して魔力と傷の回復。光は回復魔法意外は反射するという化け物性能が得られる。

 まぁ、敵も後半は耐性無視攻撃とかしてくるけどな。序盤の世界なら破格の性能。終盤では必須だが単独では不足。

 痛い思いをしたが、お陰で思った通りの物が出来た。早速ロフレンに見せる。


「そうだったな、ナハスの本来の姿を忘れていた。技能があればそんな事も出来るのか。長く生きてきたが、お前ほど規格から外れた者は見たことがない。」


 穏やかな口調で話すロフレンに思うところがあった。その場で話せる事を話してみる。先ずは魔法について。


「強き魔法を行使すると、強き魔物が現れる。体感として皆が知っていた事だ。しかしそうか、ナハスはそれが無いのか。そしてその形質を世界に拡める為に遣わされたと。」

「そう。技能や魔法は反動の様に魔族や魔物を生む。僕ならそれを気にせず戦える。」

「私がこの森林を守り多くの種族を住まわせているのは、強き物一人いるより、弱い力の者なら魔族を生まずに結集した力で生き抜けると期待したからだ。」

「その理屈は多分間違って無い。ただ、神様からすると未だ不足だったんだね。」

「その様だ。それでもこうして神の目線に触れたナハスに間違っていないと言われたのは嬉しいよ。」

「僕の話を信じるの?」

「信じるさ。」

「どうして?確かに僕は特別かもしれないけど。結構荒唐無稽な話だと思うよ。」

「信じているのさ。」


 僕に向けられたロフレンの視線は僕を見ていない。


「ナハス、お前には話しておこう。私の昔話を。」


 ロフレンが話したのは若い彼が、復讐の旅に出て僕の転生したサファイアウィルムの卵玉を手に入れるまでの冒険だ。

 彼の旅には最初から同行者がいた。


「ナラジャは同じミの森に住んていたラミア族でな。私と同じ夜に産まれ共に百年程の過ごして来た者だ。」

「恋人だったの?」

「森が失われずにいれば、そうなっていたやも。いや、そうなっていたろう。」


 ナラジャはロフレンと怒りを共有していた。寧ろ復讐の旅は彼女が主導しロフレンがついていく形でもあった。戦闘に向いた技能を多数持ち、前に出て戦う彼女と魔法を得意とするロフレンの組み合わせは相性が良かった。

 各地でお伽噺となりそうな活躍をし、魔物を減らしていった。ナラジャの存在は今は平野の民の勇者に置き換えられて語り継がれている。

 そして、ついに大洞穴から魔界への侵入が可能と判明し、魔族の世界に災厄をもたらすことで旅を終えようとしていた頃。

 万全の装備を整える為にウィルム達の住まう高原に踏み行ったそうだ。

 それまで何度か危機はあったものの切り抜けて来た二人には、油断も慢心も無かった。ただ実力は不足していた。

 以前にも竜を倒した事もあったが、高原で最初に遭遇した竜に二人とその同行した仲間はなすすべなく屠られた。

 逃走する中で偶然手にした青い宝玉。それ一つで成果は十分に思えた。しかし、強すぎる宝玉の魔力はロフレンにも制御出来ず、宝玉の魔力の本流に仲間達はさらなる危機に見舞われる。


「ラミア族の半身は蛇では無く龍である。そんな言い伝えがあった。事実なのだと知ったときにはナラジャを失っていた。」


 どういう技能を用いたのかは迄はわからない。ナラジャさんの生命と魔力を全て取り込み宝玉は制御可能となった。宝玉からはナラジャさんの魔力感じるらしい。

 恐らく僕の身体の元の持ち主が死んだのはこの時だ。


「あの宝玉にはナラジャの魂が宿っている。そう感じたよ。同時にずっと共に生きてきた彼女ともう話すことも出来ないのだともね。こんなにそばに感じるのに。」


 悲しそうな瞳だが、そこには若さが垣間見えた。


「ナハスが産まれた時、ナラジャの魔力を宿していると感じたよ。同時に私の魔力もだ。その意味は解るね?」


 魔力とは魂に由来する。それはある意味で前世の遺伝子の様に、時にそれ以上に親から子へ受け継がれる。ラミア達も僕からロフレンの魔力を感じて縁者だと認識していた。だとするならロフレンと彼が平和なら愛していたであろう彼女の魔力を受け継ぐ自分がどう見えたのか。


「ナハスがラミアの姿になって見せた時に、本当に嬉しかった。復讐などする必要に駆られなければ手に入ったかもしれない。一番欲しかった物。それに最も近い物がようやく現れたと。そして、その姿を選んでくれてありがとう。」


 ロフレンが頭を撫でる。細く力無い手だ。しかし弱さは感じない。だが先に進む強さも感じない。


「エルフの神樹がある森が、人の国にある。まだ暫くは用は無いが百年は保たぬ。その時は神樹のもとでエルフとして精霊に魂を委ねる。この森で最後まで朽ちるのも良かったが、精霊と共に世界を見ていたくなった。お前のお陰だ。」

「ロフレン、気持ちが重いよ。」

「ナラジャにも良く言われた。考えが重いと。」


 本当に重いよロフレン。


「ナハス、君がどこで生きようが構わないが、時折この森に戻り、あのラミア達だけでも守ってやくれないだろうか。あの村の者達はナラジャの妹の子達なんだ。ナラジャを喪い塞ぎ込んだ私を励ますために、色々と世話を焼いてくれてね。あの子の気持ちに応える事は出来なかったが、この森もあのラミア達を守るために整えたんだ。今は大きくなって守るものも増えたがね。」

「大丈夫だよ。ここが僕の家だからね。それに将来はあの村のラミア達の全員と番になれって村長も言ってたし。」

「そうだったな。」

「でも、ナラジャさんの魔力を宿す僕とだと近親にならないかな?」

「ラミア族は大丈夫だ。エルフもだが元は一人か二人のものだったのが、肉を分けて再生させて増やしたのだ。寧ろ濃くなるほど原初の姿に、神が直接作った姿に近くなり、強くなる。平野の民や獣人とは成り立ちから違う。」


 大丈夫な様で安心した。

 それにしても自分の体を素材にアクセ作っただけでえらい重い話をされたな。

 取り敢えず、ネックレスは服と一緒に地下室の子に渡そう。最初のは練習だからな。次はお世話になっているルーデさんとカチパさんに贈るのだ。


 そんなわけで翌日に、いつもより更に早く石室へ。

 声をかけると、いつもより早いにもかかわらず待っていたかのように直ぐに返事があった。服とネックレスを持ってきた事を伝え中室に置いて一度外へ。

 石戸の向こうで動く気配。驚いてるみたいだな。


「ねえ、これ君が作ったの?」

「そうだよ。」

「鱗も君のだよね?」

「そうだよ。」



 しばらくの沈黙


「尻尾だけなら入って良いよ。」


 何故尻尾だけなのかはわからない。取り敢えず内側の戸を少し開けて尻尾を入れる。途端に何か魔力を浴びせられて尻尾の鱗が光を放つ。この感じは知っている。カチパさんも持っている魔眼だ。成る程、こうして魔眼で悪戯してここに入れられたわけだな。


「残念。僕に魔眼は効かないよ。痺れさせて悪戯しようとしても駄目だよ。」


 返事が無い。悪戯に失敗して黙ってしまった様だ。最初の印象と異なりロフレンの言う通り相当なお転婆が居るようだ。


「それじゃ、そろそろ稽古の時間だし行くね。まだ明日。」


 してやったりの気分で石室を後にした。

 あと数分留まれば、石室から聞こえてくる嗚咽に中を覗いていたかもしれないが、ナハスがそれに気が付く事は無かった。

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