第23話 イキリ散らしたい2

ロフレンに連れられてラミア族の村に向かう。道のりは思いの外短いものだった。それはロフレンの術に依る所が大きい。いつも通る森の獣道がロフレンと共に歩くとまるでちがうか景色となり、数分後に森の切れ間に出るとそこは村の入口だった。この森全体を大きな魔法で多い、それにより招かれざる物を迷わせ、また例え火をかけられても一定の場所から燃え広がらないようにされているのだ。

 村の入口にはまるでロフレンを迎える様に人が集まり、彼の姿に皆が、敬礼の姿勢を取る。


「ようこそ、我らが森の主にして守護の賢者様。この度の来訪歓迎いたします。」


 村の代表らしき女性が前に出て話す。成程、ラミア族だ。僕と同じ上半身が人で下半身が蛇の姿だ。上半身は丈の長い服を着ている。

 ロフレンに手を引かれ村の中に踏み入る。視線が自分に集まっているのを感じる。

 村の中は木と土や石で作られた家屋が並び、主な道には石だたみが敷かれている。住人はラミア族の者しか見られない。村の奥にある周囲の建物より一回り大きな建物に入る。


「ここの村長の為の建物だ。気の良い者だ緊張する必要はない。」


 少し固い表情をしていた僕にロフレンが声を掛ける。そして、村長のとの対面になる。


「先触れを貰った時は、母には何をされても靡かなかった老師がまさかと思いましたが、その鱗を見れば母に魅力が足りなかったとのだと理解出来ますね。」


 早々に下世話な言葉をかけてくるラミアの長。纏う空気は成程、村に居た者達とは一線を画する存在だ。


「相変わらずの様で安心じゃ。その様子ならこの子も受け入れて貰えそうじゃな。」

「ええ、他でもない老師の連れて来られた者です。蒼き宝石の鱗を持つ同族。強い力を感じます。それにその子は百年以上現れ無かった男の同族でしょう?」


 長の視線が僕の下半身に向いたのを感じる。何だろ撫でられたと錯覚する。ロフレンの影に少し身を隠す。


「おや、可愛らしい。」

「幼子に何と言う目を向けるか。他の獣人達に預ける方が良かったかの。」

「失礼、既に村の者は彼を目にしています。私のせいで他に託されたとなれば恨まれてしまいます。」

「ならばもう少し節度を持つことだ。この子が将来村の全員と番おうとワシは構わないが、それはこの子の任意であって欲しいからの。」


 いや、ロフレンそれは流石に大きく出過ぎじゃない?


「そうですね、何れは全員と子をなして欲しい所です。受胎の儀の存続の為にも。私より若い血の子達は他種族への恐怖が染み付いてしまっている。儀がその恐怖をも受け継がせてしまっている。」


 色々と問題を抱えているらしい。でも自分、因みに人化の術で変化している間はすべての種族と子が出来る様になっている。交雑して在来種を減らす為にこの世界に送られているので当然の仕様だ。そう考えると村の全員とっていうのも無い話では無いけれど。嫌がる相手とはしたくない所だ。あとは眼の前に長とは怖いのでしたくない。


 村への僕の面通しを済ませて、今後は僕一人でもこの村に出入りできる様になった。

 そして、村で技能を学ぶ手筈も整い、生活も少し変化した。

 村に通い技能を学びロフレンの家に戻る。村の者達は僕をロフレンの親戚と認識している。流れる魔力がロフレンと血の繋がりがある者のそれだと言う。確かに生まれる前の卵型の宝玉だった頃は何度もロフレンの魔力を流されていたのだ、何かしら影響は受けているだろう。容姿も彼の姿を取り入れて居るし、姿以外もそう見えるのだ。

 またロフレンは昔、結構な浮名を流した時期もあったらしい。主に魔族との戦いが収束し英雄と祀られた頃に。顔も知らぬ子や孫が居ても不思議では無く、そんな中の一人だと思われている。

 村で習う技能は皮の鞣し方や鉱物の加工と剣術、そしてラミア族特有の魔術だ。習うと解るが技能も魔法の一種である。源になる物は同じで、それを望む形に変化させ放出し具現するのが魔法だ。体内や物に宿し、宿った対象に変化をもたらすのが技能と表現するのが近い。その範疇にない物も多いが、大まかにはそうした認識で間違っては居ない。

 ロフレンは体内に集積するのが苦手だった様だ。魔力を流すと増幅してくれて、集積もしやすい僕の卵の宝玉はさぞ使いやすかった事だろう。


 剣術と魔術を教えてくれる二人のラミアは、村の外との窓口の役割も果たしている。時折、獣人の集落に出向き、交流している。普段は村に居て若者の指導にあたっている。驚いた事に師の二人は人化の術で完全な人型に変化出来る。それを用いて森の外の人の村にも行くという。


 現在、僕の他に教えを受けている者は居ない。ラミアはもエルフ同様長寿で老いない故に出生率は低いそうだ。同じ年頃の子は居ないのか聞いても苦笑いされるだけだった。

 そして、指導を受けて判った事がある。膂力が今の子供の姿であっても規格外であった。これは単に変化前の物がそのまま反映されている結果だ。単なる腕力だけなら既に師を超えていた。これには指導していた者も驚いて居た。  

 膂力がそれなら他も想像に難くない。防御能力も同様で剣も魔法も何をしても僕に傷を付ける事は出来なかった。試しに大きな金槌で思い切り殴って貰ったがそれでも村一の力自慢である剣の指導役の打撃でも無傷だった。

 無傷ではあったが打撃だけは感じが違った。中に振動が伝わる感覚があり、恐らく熟練した使い手に打たれればただでは済まないと感じた。

 僕がそうして学ぶ事に熱意を増しているが、指導役は充分強いから必要無いのではと冷め気味だ。

 特に魔法はロフレンの魔法が全て使えて立ち回りを彼から学んでいるならと、本当に冷め切っている。

 それでもラミア特有の魔法を教えて欲しいと頼んでその指導にあたって貰う。


 ラミア特有の技能や魔法。技能に関してはその身体的な特徴を用いた戦い方や移動方法だ。垂直の壁や天井ですら這う事の出来る動き方等を学ぶ。またラミアの爪には強さに個体差はあれど毒がある。それについては僕の本来の身体にもある。それの使い方や解毒方法に付いてだ。これは結構大事で人によっては毒で仕留めた獲物を解毒せずに食せる者とそうで無いものが居る。ましてや他種族に商品として渡すなら解毒は絶対だ。また間違って他種族の者に毒を使った場合も必要な知識だ。剣の師は過去に酒の席でやらかしたらしい。

 魔法に関しては魔眼を持っている者が時折生まれ、それが特有の魔法だと言う。魔眼は他にも持つ種族はいるが、少数であり、魔族に持つ者が多かった為に忌避されがちだ。

 ラミアの魔眼の効果は見たもの動き止める魔眼だ。単に動けなくなるだけならまだしも、見つめた相手の内蔵、心臓の鼓動を止める程の者もいるという。果ては視界にあるものを石にする魔眼なのだという。石化させる程の強度が無いので動きを止める効果になる。

 残念な事に僕にその魔眼は無かった。その事を師は大いに喜んだ。魔眼は魔族の能力。本来はラミア族には無い物で、過去に魔族と交わった証であり、これのために迫害を受けた忌まわしい能力でもある。代を経て薄まっている能力でもある。魔眼のある者の多くは街に出る任を負う。外でラミア族の友好性を示すと共に命の危険に晒される仕事だ。魔族の血の濃いものはそういう扱いになる。その事を魔法の師は誇っていた。

 そうして外の任を負う二人に習っていると自ずと今後の方針が見えてくる。


「次の外回りの時はナハス様も来られますか?」

「良いの?変化の術も使えないけど。」

「今回は獣人の集落を幾つか回るだけですので、それに中には鱗人の者が住む所もあります。」


 詳しく聞くと、蜥蜴や蛇、後は一部の鳥類の特徴を持つ獣人を総じて鱗人と呼んでおり、彼等との交易や情報交換を兼ねて定期的に周るそうだ。その中で他の哺乳類の特徴を持つ者の住処に寄ることもあると。

 ロフレンがラミア族の村に行くときに使う様な特殊な移動方法は無い。

 その森は外の者からは迷いの森と呼ばれ、普通に進ん出は奥に踏み入ることはできない一種の迷宮なのだと言う。


「逆に中の者が外に出る場合も同様です。この場所は魔族の戦いの後に行場を無くした種族を匿うためにロフレン様が整えた領域なのです。」


 広大な森林や山岳地帯はその中で暮らす種族には十分な広さを持っていた。ラミア族の様な境遇の者達にとってこの場所は安息の地となった。その平和は五百年近く守られて来ている。

 その夜、ロフレンに他の種族の村へ行くことを話すと、僕の自由にして良いと言われた。引率の二人のラミアに良く従う様にと。

 そうして、この世界に生まれて初めての旅行に出る事となった。前日からラミアの村に泊り込み、早朝に出発だ。何気に外泊もこれが初めてだ。前世の記憶はあるが、心は若返っているのか、楽しみで落ち着かない。


 剣の師であるルーデの住所に一晩お世話になる。魔法の師であるカチパは村長の隣の家に住んでいる。

 一晩泊まるというとこで、普段は目につかない村の中も見ることになる。

 少し気になったのは村の奥、森の中に続く細い道だ。


「この先は古い氷室として使われた洞窟がある。崩れて危ないから近寄っちゃ駄目だよ。」


 ルーデが通りがかった時にそう説明した。その時のルーデの目は、剣の稽古の時にフェイントをかける時の目だった。道から気をそらさせる、何でも無い事の様に思わせ様とする目線の動き。これが稽古の時なら僕は釣られていただろう。

 言葉通りの事ならそのまま聞き流していただろう。一人で入ると危険ならそう言えば良い。

 だから気になった。そして、日が暮れて夕食の後に、一人のラミアが食べ物を持ってその道の先へ向かうのが、暗闇の中に見えた。

 嘘を追求するつもりは無いが、この旅行が終わったら行ってみようと思う。



 そんな事もありながら、予定通りに翌日出発した。

 険しい斜面も切り立った崖も、流れの速い川も、ラミアの身体には障害にならない。

 その道行きはかなり速い。ルーデとカチパは僕をこの旅に誘った時点で、体力的な心配はしておらず、こちらを振り返る事無く普通に進んでいく。問題無くついていけるので構わない。昼前には最寄りの集落、小型哺乳類の特徴を有した獣人の集落に付いた。小柄な身体の割に耳や目が大きめで、神経室そうな印象の仕草をしている者が多い。

 ラミアには警戒心は無いが、どこか畏怖している様に感じられる。

 集落の代表の者と師匠二人が話をしている間に、宿泊様に通された空き家を掃除する。基本的に来客はラミア達だけで、この集落も見えていないが、樹上や浅い地下のも含めて広い範囲に点在する住人の住む所でかなり広い範囲の住人の集会所的な場所らしい。来客様の建物もこうして用意されている。


 一泊して早朝に集落を出る。ここから野宿を挟んで次の村に向かう。

 早い足取りで進み途中、日暮れ間近に流れの緩やかな川に差し掛かる。


「この川は貴方と同じナハスという名前だ。かつてこの森がエルフにミの森と呼ばれていたいた頃、神樹の根本から湧き出る水が流れていた川だ。」


 その川の辺にはラミア族の村もあったらしい。またロフレンの復讐に同行した者も居たという。その同行者は復讐の旅の最中に倒れる事になった。そのうちの一人は現村長の叔母らしい。その者の縁でロフレンは当時魔族として迫害されていたラミア達を保護して周ったそうだ。それからも有効的な関係を維持している。


 一夜明かして、川に沿って上流を目指す。川が山地の谷間に入る前の地形に棚上の畑が見えてきた。そこが目的地だ。そこは農業主体の村だ。ラミア達の村より大きい。


「この森で最も大きな村です。住人も多く、種も多様です。」

「最も外に近い場所でもあるわ。村から入れる洞穴は山脈の向こうの人の国迄続いているの。」


 大洞穴と呼ばれる、大戦時代から存在する迷宮。その最奥は魔族の住む国へ通じているという。そこから溢れ出た魔族がロフレンの故郷を焼いた。その後逆にロフレンがそこから攻め入り魔族の国に攻撃したという。

 人の国からも勇者が攻め込み、共闘にて魔族を撃退。その後、魔族達に焼かれ、汚された土地をロフレンが引き取り浄化し続けた。山脈の向こうの人の国は不干渉を約束した。例外として最低限の交易を保つ為の出島的な村が幾つか存在し、その中で最大の物がこの場所である。

 村には師匠二人は顔パスだ。

 珍しい物をみる視線を受けながら村の奥、大洞穴に向かって歩を進める。


「この村の鱗の者達は洞穴付近か中に住んでいる者が大半です。」

「魔界への入口を封じて、逆にこちらから浄化の魔力を送り込んで今尚魔界への攻撃を続けています。」


 ロフレンと勇者により中の魔物は完全に駆逐されたが、新たに湧き出さない様に中で暮らすことに適した種族が住ん見込んで常に監視をしているそうだ。洞穴は人の国と繋がる道と中に住む種族の居る階層から下は水没しているそうだ。魔物や魔族の身体を焼き、穢れを浄化する大量に聖水。これを生み出したのがロフレンと過去の勇者の協力によるものとのこと。

 この水が魔界からの空気を浄化しかさを増して、常に魔界に霧雨となって降り注いでいるそうだ。

 200年程前に別の場所から魔界に入った者がこの洞穴の最深部から帰還した記録もある。

 人の領域との行き来にはそんな聖水の泉を渡る必要がある。それを免罪符にそれなりに友好的なやり取りが続いている。

 そんな洞穴内で暮らすのは蛇と蜥蜴の亜人、そして水中に没下階層には淡水性の魚人が住んでいる。今向かっているのも彼等との連絡窓口になっている場所だ。

 道中、かつての自分と同種族らしい見た目の人を見かけた。平野の民と呼ばれていた。


 目的の建物に近付くと、確かに見た目からして鱗を纏った者が増えていく。

 建物でやはり大人達だけ話をして、僕は待たされる。


「ねえ、君。凄い綺麗な鱗だね。羨ましい。」


 ぼうっとしていたら急に声をかけられた。


「ラミア族の鱗は皆綺麗で特別だけど、君はその中でも特に凄いね。強い力も感じるし。」


 声をかけてきたのは今の僕と同様の蛇の下半身に人の上半身を持つ亜人。違うのは全身が鱗に覆われている事だ。身体は僕より少し長い位。ちょっと年上だが、まだ若く子供と言える年頃の蛇人だ。


「そうなんだ。ラミア族以外の鱗を見るのは今日が初めてだからわからないな。それで君は誰だい?」

「ああごめん、名乗って無かったね。私はシフィル。見ての通り蛇人さ。」


 シフィルと名乗った蛇人の少年。詳しく聞くと見た目通り少年程度の年齢だった。

 興味が湧いたので彼の話を聞いてみる。

 何でも蛇人達はラミア族を神聖視しているらしい。その理由が蛇の下半身の見え方が、明らかに異なるからだという。魔力を可視化出来る目を持つ種族の共通認識らしい。


「僕達蛇人は蛇のそれだけど、ラミア族のは明らかに内包している魔力の量と質が違う。あの身体は蛇では無く、古い龍族のそれに近いと言われているんだ。」


 蛇人達に伝わる話と僕が人化してラミアの姿になった理由が、符合していて面白い。


「鱗の無い民が精霊に近いエルフや有翼人を信仰する様に、僕らも龍の鱗を持つ種族に同じ感情を持っている。中でも君は特別だ。」


 少し興奮気味に話してくれる。そこで師匠達が戻って来て話は打ち切られた。

 一緒に来た蛇人の大人の人が申し訳無さそうなのは伝わった。


「今のは蛇人か。友達になったのか?」

「わからないけど、話しかけてくれたんだ。」

「蛇人達は私達に友好的な種族よ。迫害の頃に匿ってくれた種族の筆頭でもあるの。是非仲良くしてね。」


 歴史的にも繋がりの深い種族だそうな。

 数少ないラミア族が嫌悪感を持たない相手だが、同様に数少ない交配出来ない種族という。近くて遠い友である。


「ご両人、こちらの子はお二人の子ですか?」


 遠慮がちに

蛇人の男性が問うので、二人は否定する。


「そうですか、申し訳ないのですが、その子を連れて洞穴に潜るのは控えて貰いたい。その子の鱗は美しすぎる。子供には強い毒になる。」


 冗談の様子は無く、本気の口調で言われた。

 その後ろからシフィルが常軌を逸した目線で僕を見ていた。


「その鱗はまるで一つ一つが宝石だ。しかも強い力を含んでいる。惹きつけられる。あまりに危険だ。何かしらその魔力を封じるか調整出来るようになられてから出ないと。」

「そんなにか。確かにナハスは我々ラミアの中でも特別な存在と言えるがそれほどかい。」

「賢者ロフレンの連れ子。並であるはずもないか。」

「貴女方の長である存在に近い、いえそれ以上の存在感を感じます。何卒、ご配慮を。」


 結構な拒絶振りだ。人化の術解いたらどうなるか気になるが、それは先々の楽しみに取っておこう。


「まぁ、良いかね。この子ナハスの顔を繋ぐことはできたろう?」

「ええ、本当に必要であればこの方は無審査に我が村へお通し出来ます。望まれたなら我らは拒絶出来ないでしょう。」


 取り敢えず僕をここへ連れてきた目的はた達せれた様子だ。


 この後は村の中を巡り、他の獣人と力比べをするような事を挟みつつ、最後は宿で一泊した。

 ここまで来て感じたのは、先ず第一にロフレンという人物の存在感だ。この森の主であり、歴史的にも偉人だ。そして僕という存在のこの世界での立ち位置だ。ラミアという種族もかなりの上位にあたる種族の様で、その能力は他種族に比べて軒並み高い。

 そんな彼女達より、現段階で技量以外は勝っている。やはり異質だ。

 そして、今は見かけない魔族という存在。何と無くわかるのが、神の目線で言うところの、負の資源。汚染物質だ。人の姿をしているが実際は生命活動を模倣した生命の陰だ。僕の魂はこの陰を生まない。故に僕が魔族を倒せば倒すだけ、神の資源は増えるし、僕と交わり子が生まれればその魂は生み出す陰が減る。

 まだ生殖能力はないし、ラミア族の性成熟はかなり遅い。現在人化出来るのはラミア族のみだ。

 ならやることは力を付けて、強い魔物や魔族を退治に行くことだろう。

 過去の大戦以降も散発的な魔族との戦火は各地にある。この森を出て、戦いに身を投じるのが、転生させた神ののぞみであろうし、その為の力を貰っている。

 そう思わされるだけの物をこの旅で得た。

 そして。この大きな村でもう一つ得たもの。

 シンプルに技能だ。装飾品等を作る細工の技能。それを得られる技能書と呼ばれるアイテムが売っていた。高価だが無理を言って買ってもらった。師匠達が、普段は金を使わず長年溜め込んでいたおかげである。

 早速使って、帰りの道すがら、片手間に小物を作る。と言っても簡単なミサンガ等を編むだけだ。出来たものは師匠達に渡す。意外にも頬を染めて照れながらも、喜んでくれた。この人たち案外可愛い。この方面に擦れていないというか初心だ。まぁ、異性なんて殆ど居なかった種族だし、他種族は異性の前に敵かと警戒してきた歴史が遺伝子レベルで組み込まれているみたいだし。やむを得ないのだろう。こちらとしても特に損もしないので悪い気はしない。

 そうして初めての旅行は無事に終えることが出来た。やることの方向性も確認出来た。今後はその為の準備を進めようと思う。

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