第14話 ふでん8
一夜明けた。リクタンさんは幼馴染にプロポーズをして受け入れて貰えたらしい。僕は村の付近で野宿しようかと思って居たら、リクタンさんが探しに来て、彼のこの村での住居に案内してくれた。彼の両親も過去の飢饉の時に亡くなっているそうで、それを期に街へ出て一人で身を立てようとしていたそうだ。身を立てて、具体的にこれだけの貯金を作って戻ってくるよと。
そう幼馴染と約束して。
最後の最後でやらかしては居たが、僕に出会って、取り敢えず無かったことに出来た。人の巡り合いとはそういうものだろう。
リクタンの話や境遇を聞いて、我が身の事を振り返る。
故郷の村には戻っていない。だが今は自由に戻れる身の上だ。農村でなら今回手に入れた召喚獣は非常に有用だろう。家畜一頭の値段にしては高かったが、許容範囲内だ。
起きると、数年放置されていた小屋の周りに生い茂った雑草を召喚獣が美味しそうに食べている。蹄の所まで伸びた長い体毛は昨日触れた時は非常に良い手触りだった。
リクタンがやって来て朝の挨拶を交わす。
問題なく事は進んでいるようだ。
彼に召喚獣の能力を試したいので出来そうな仕事は無いかと聞いてみる。
聞くまでも無く仕事はあった。荷車を引いたり、大きな熊手で休耕地を耕したり、畑の角の大岩が邪魔だというので、縄を括り引かせたらそれも動かせた。並の牛馬より余程力持ちだ。その割に疲れた様子もない。
「リクタンさん、この子普通に結納品として持って行っても良かったのでは。」
「言わないでくれ。」
邪魔な大岩をどかした御礼にと、鞍と鐙を貰った。大型の牛用で二人乗りが出来るものだ。それに加えて家畜用の背負子も貰った。
驚いた事にそうした装備を纏った状態で石版に戻す事が出来た。そして、石版に描かれる文字が増えた。
召喚時に装備の有無が任意選択も出来る。
「その子の毛は使えないの?」
召喚獣の仕事を見ていたリクタンの幼馴染の一言が、新たな価値を発見させる。
手動のバリカンを借りて刈ってみる。かなり丈夫で滑りの良い毛室で刈りにくいが、毛の下の皮が更に丈夫で間違っても傷付けるおそれが無いのと、獣が大人しくしているので、毛の質に慣れると楽だった。
元々の体躯があるのでかなりの量が取れた。
そして、毛を刈ってわかった事がある。
「乳が張っている。」
抵抗もされないので、そのまま握ると白い液体が吹き出す。
慌ててコップに受ける。
匂いは、悪くない。味は濃い。少し甘みもある。
「リクタンさん。」
「何も言わないでくれ。」
正直な所、出来過ぎである。リクタンにこれを売った行商。間違いない無く意図的に彼を狙い売りつけている。リクタンさんが間違って召喚して、転売出来なくてもこれなら絶対に損はしない。この村での幼馴染と結婚してからの生活の役に立つだろう。
思い付くのは前世でいうドッキリの類だ。思い掛けないプレゼント的な演出を誰かが計画した。
それが計画通りに行かなかったのだろう。後でリクタンさんにもう少し支払おう。
取れた乳を料理スキルを使い、容器に入れて振る。成分が直ぐに分離して。液体と別けて、残ったのはバターだ。
昼時に硬いパンに塗って食べて貰う。
「まって、サグさんは料理スキル使えるのかい?」
「生産系は大体使えますよ。」
街では職人としての仕事が多かったからあまり、知られていないのだろう。
お次は浄水の魔術で洗った容器に乳を入れる。まだまだ取れるのかと少し驚く。
乳を混ぜながらスキルを使う。水分が抜けかさが減り、固くなっていく。大分固くなった所で小分けにして布で包む。更に水分が抜けてスキルの効果で発酵も進む。
一番最初に小分けにしたものを、切り分けて火でパンと共に炙り溶かす。
「リクタンさん、後で不足分も渡しますね。あんな金額じゃこいつは見合わない。」
「そうしてくれると助かるよ。」
「あと、この召喚石、誰かがリクタンさんに善意から、内緒で用意した贈り物だと思いますよ。」
「僕もそう思うよ。一緒に売られた品は、毛を刈る為の道具と搾乳器だったんだ。」
「心当たりは?」
「それが全く。知っての通り、僕は至らない所が多いからさ。迷惑掛けた人は思い付くけど、こんな良くしてくれる人は思い付かないよ。」
「じゃあ一番お世話になった人とかは。」
そこで彼が名前を出したのは、ギルドで指導官をしている男だった。厳しい指導で若者から恐れられているが、要領の悪いリクタンに何度も同じ事を指導し続けてくれた人で、何かと気にかけてくれた恩人らしい。
だが常に怒声を浴びせくる人なので、彼では無いとリクタンは考えているそうだ。
聞いてるこちらからすると、その鬼教官が犯人としか思えないけどね。指導員になる前のつてで用意したプレゼント何だろうな。その教官も不器用で計画が失敗したのだろう。
それからは刈った毛をスキルを使って加工していく。一晩で製糸迄は済ませた。元の毛の質が良いのでかなり上質な物になった。
出来た毛糸の束と共に追加の金貨を渡す。これで手持ちの金は大分心許ない状態だ。貯金は。教会に聖水の代金として大金払ってるからこちらも少ない。
聖水かぁ。仮に故郷に帰るとして入手は困難になるか。術式を手に入れられれば自分で習得し作れる様になるが、そういう類は権力者の所に集まり自分の様な物には手が出ないだろう。
よしんば、機会があるとするなら、何か大きな功績を上げた報奨。それこそ貴族位等を得られる程の成果と引き換えの報酬となるだろう。
そんな直ぐに得られる物とは思えないな。
リクタンさんにあって、嫌な事から目を背ける様に街から出てきて二晩経った。大分気持ちも落ち着いて来た。
因みに毛を刈られた召喚獣たが、石版に戻して一晩置いたら、大分毛が伸びていた。3日もあればまた刈れそうだ。乳も翌日にも変わらずに取れた。
全部保存出来るチーズに加工して、宿を借りた例にと村長に渡しておいた。
村としては僕をリクタンの連れてきた有望な移住者として認識しつつあった。
「サグ君は、街での噂とかけ離れてるね。奴隷に働かせて何もしてないと聞いていたけど。」
「何でですかね。一応、職人として織物とか作ってたんですけど。」
「スキル持ちだもんね。奴隷に働かせるよりはるかに稼げる筈だよね。それこそ君なら一日働けば奴隷の給金で半年分も位は稼げるでしょ。」
「ちゃんと毎日働いてましたよ。」
「魔術も使えるし、でもお金は持ってそうだけど、何だろう。余裕が無いというのかな。住んでる所も下働き用の寮だって聞いたよ。君ならもっと良いところで、それこそ奴隷には家事や自分の世話をさせて、職人の仕事に専念しそうなものだよね。」
「街に来た時は商人との伝が無かったので、露天商したりで実績作る必要がありまして、その時は奴隷の収入が必要だったんですよ。」
「でも、今は違うよね。僕にも簡単に金貨を支払ったし。」
首を傾げるリクタンさんに事情を話す。キリに焼印の術式が押されていること。その解呪の為に教会から格安で聖水を融通して貰っている事。
「待ってくれ、君が嘘を言うように見えないがその話が事実なら噂を流している奴を僕は許せそうに無いよ。直ぐにでも戻ってギルドや教会に報告したいくらいだ。」
「いや、リクタンさん新婚になったばかりですよ。そんな直ぐに村を離れるなんて駄目ですよ。」
「いいえ、ここまで聞いて黙っているような人を夫にしたつもりは無いわ。」
途中から話を聞いていたかれの幼馴染が口を挟む。
「まぁ、一人でやるだけやってみます。駄目なら故郷に帰ってみて、そこでも居場所が無ければ頼らせて貰います。」
新婚を引き離す事はせず済むよう説得に骨が折れた。
その翌日。早朝に教会からの使者が村を訪れた。サグという少年に捜索依頼が出ており教会への出頭と参考人としての証言の要請があるそうだ。
半ば犯罪者扱いにも感じられる話にリクタンはじめ村の人達が警戒する中、僕は大人しく使者に名乗り出た。するとかなり丁寧な扱いをされた。それを見て村民も少し態度を和らげる。
これも機会と思い、この使者に同行し街へ戻る事にした。
召喚獣に跨り使者達の馬と並んで進む。僕を確保出来たからか、使者達は急ぐ様子も無い。昼前に街に戻り特別扱いで列に並ばす無料で外壁の門をくぐった。
3泊4日で街の外に出ていた。召喚獣は石版に戻して背嚢にしまう。石版として運ぶと結構重いなこれ。街中で馬等を使うときは事前に申請しないといけないので後で申請しよう。
案内されるまま教会に連れられて、そのまま建物内の個室に通される。そこには両手を拘束され、口に猿轡をされたキリが部屋の中央の寝台に寝かされていた。
虚ろな目で天井を眺めていた目が、部屋に入る気配に向き、僕を見つけて目の色が変わる。猿轡をされたまま微笑んだ。
「彼女が何かしましたか?」
「主人の君が命令したわけでは無さそうだな。隷属魔術の反応が無い。事情は追って話す。先ずは彼女の拘束を解除する。」
質問にはその場では答えて貰えず、何かを確認した教会の使者はキリの拘束を解く。
自由になったキリがふらつきながらも僕にも抱き付き身を預けてくる。
襟元の隙間から見える焼印が僕の記憶より大きくなっていた。
そのまま応接室に通され、そこでいつも聖水で世話になっている神官が待っていた。
彼から僕が街を出てからの事を聞く。その間キリばずっと僕にしがみついて少し震えていた。
僕がリクタンさんと街を出た日の夜。僕が帰らない事を心配し、食堂のリチョウさんに相談しに行ったらしい。
そのまま食堂で泊めてもらい仕事に入る。昼に僕が食堂に来ることもなく。夕暮れに寮に戻るもやはり僕は居ない。
そのまま眠れずに夜を明かし、かなり憔悴した状態で食堂に来たらしい。
そこで何処からか僕が居なくなったと聞きつけた、食堂で僕に許しを請うた客が現れ、キリが僕から開放されたから、もう働かなくて良いと告げられたらしい。彼女は僕の弁護をするような事を話すも、奴隷として命令され言わされている周囲に判断され、そこで錯乱状態になったらしい。
急に壁の角に齧りつき前歯を折り、その後は手を何度も壁や床に叩き付け出したそうだ。
そこで取り抑えられた。
折り抑える際に背中の焼印が見つかり、何らかの呪術と思われ教会への送られて来たという。
「キリ、どうしてそんな。」
僕にしがみついて離れないキリに問う。
「痛くならないから。」
小さく答えるキリ。前歯が折れているのが痛々しい。今回は四本折れてしまっている。先に治そう。
「キリ、口開けて。」
素直に従う。沁みないように上達した浄水で口をすすぎ骨接ぎの術式で過去と同じ様に歯を補修する。こちらも上達して以前より丈夫で白い歯になる。継ぎ目も判らないぜ。
「今、簡単にやっていますがサグさん、その術にどれだけの価値があるかおわかりですか?」
「聖水との交換に使ってる浄水ですもんね。わかってますよ。」
「それだけではありませんよ。歯の治療をそんな簡単に。しかも今回が初めてではないのですね。」
「キリを奴隷として差し出して来た人物は歯の治療の代金を自分に請求しないでくれと言ってましたね。」
「その意見は概ね一般的です。焼印はやり過ぎですが借金奴隷になっても不思議は無い金額の事ですよ。」
「だそうだ。もっと歯を大切にしなよキリ。」
「サグが居ないなら前歯は折れてないと駄目。」
何を言い出すやら。
「この手も、マメが出来たり突き指した時に、何度もサグが手当してくれた。サグが居ないなら傷付いてないとだめ。」
「いや、僕が居なくても手の傷は治ってたろう。」
「帰って来ないのに、背中が痛くならない。怖かった。私が何か悪いことしたのかもしれないのに、背中は痛くならない。サグが生きているなら痛くなる筈なのに。」
ああ、なんてことをこのこは
「ここに来る前に山で襲われた時も怖かった。同じ位は怖かった。誰もサグを知らない。別の悪い人の話をして誰も私の言う事を聞いていない。またあの時みたいに一人になったと思った。背中の焼印か痛くならなくて。サグがかえって来なくて。」
酷い顔だ。同い年の少女とは思えない程に憔悴して活力が無い。
「サグにもらった物を持っていてはいけないと思ったの。」
「それで歯を?」
「うん、そうしたら背中が痛くなってね。嬉しかった。サグは何処かに確かに居て、私が傷付くの嫌がってるって。だから焼印が痛むようにしてた。」
彼女は過去の奴隷になるまでの経緯とその時に体験した恐怖から立ち直っていなかった。未だに周囲全ての人間が突然敵に変わる恐怖に怯えて、大衆の中で孤独に震えていたのだ。
そういえばマレクさんですら最初は彼女を僕に嫌がらせをしていた事から、嫌っていた。彼女を信じる信じない以前の問題だ。
奴隷としての事を抜きにして、彼女の精神は僕に依存して縛られている。そして、縛られる事で壊れそうな自我を保っていたのだ。
それを理解し己の無責任さを痛感した。
「サグさん、それで私からの話なのですが、非常に心苦しいですが今回の件で首謀した者達を何かの罪に問うことは出来ません。」
「それはわかります。彼等は噂を流しただけ。しかも公然で謝罪も既に済ませている。」
「そうなります。あくまで庶民の個人間での諍いです。しかも謝罪がなされ貴方は受け入れている。」
「その後のキリのあり様です。僕が彼女に何かしたと思われますね。」
その言葉を否定する様にキリが再度首に手を回し抱き着く。
「私はサグさんが彼女の為に魔術を磨き、稼いだお金も聖水の為に大半を使っている事を私は知っています。しかし、貴方に特別扱いをして、公平性を欠くと思われないよう広く公言はしてきませんでした。」
「今から発信しても猜疑心を煽るだけになりそうですね。」
「君がその年でそれを理解しているのが悲しい。理不尽に憤り私を攻めてくれた方がまだ気が楽です。」
「一応、それなりの理不尽は過去にもありましたから。」
この神官は僕の素性を調べている。きっと何故故郷から町へ出たか、その町で何があったかも把握しているだろう。
「この街はもう、君の安住の地に成り得ないのですね。残念ながら。」
「その様です。神官様のお陰でキリの焼印の解呪に光明がさしたのは大きな収穫でした。」
僕の言葉に神官さんが何かを懐から取り出した。
「これが私に出来る、現状の最善です。」
そう言って渡されたのは封蝋印だ。
「この印を押された荷物を、巡礼者か他の教会に預けなさい。その時に名乗る事をと返送先を忘れないで下さい。一ヶ月以内には聖水にして送ります。」
教会の、恐らくこの神官さんの私的な伝だ。ここまでの気遣いに心から感謝する。浄水を送れば変わらずに聖水は融通してくれる。
「貨幣の同封はしないで下さいね。」
「でもそれでは代金が。」
「この事態を防げなかったこの代償と思う事にします。金銭より聖水の増産で救える人を救うことが教会としての考えでもあります。」
「ありがとうございます。」
この人に会えたことはこの街で一番の収穫かもしれない。
教会を後にして、ギルドへ向かう。
受付で外壁内での召喚獣の使用申請を行う。石版を見せて一度ギルドの中庭で召喚と送還を行う。車の車庫申請してる気分。
後は申請許可書の発行を待つ。まぁギルドの登録証に記載するだけだ。
登録証を預けて待合所で待機していると、強面の大男が僕の前に仁王立ちした。キリが負けじと睨み返すがいにもかいしていない。
「小僧、何かと噂のガキだな。お前、あの石版を何処で手に入れた。」
男の胸にはギルドの登録証。しかも教官としての資格のある上位の奴だ。 ほら見たことか。リクタンさん、やっぱりこの人が下手人ですよ。
「先日、このギルドでリクタンという人がから買いました。ギルドの買い取りだと赤字になるからと困っていたようなので。」
答えると舌打ちして顔をしかめる。
「その後、彼の村に同行した時に、その値段では不足だと思い、更に追加で金を払いました。嘘だと思うなら本人に会いに言って確認して下さい。」
更に険しい顔で射抜くような視線が僕を睨みつける。
「というか、素直に祝福の言葉と共に渡してれば良かったんですよ。ちゃんと彼のプロポーズは成功しましたよ、近々か婚儀もあるでしょうからちゃんと出席してあげてくださいね。」
その言葉で強面の男の纏う空気が一気に萎びた。拍子抜けするほどに。
「あと、彼がここに売った石版と一緒に貰った品を買い取りたいのですが、まだ残ってますか?」
「あ、ああ俺が買って確保してる。」
少し割増料金で買い取る。財布が軽い。
「ちゃんとあって祝ってあげてくださいよ?絶対ですよ!!」
「わかってら。余計な気を回すな、ガキのくせに。」
「ガキに心配される程の下手をうったんですよ。」
不器用そうな人だ。しかし、人柄は良いのだろう。
「だがお前さん、ちょっと話ただけだか聞いていたのと随分感じが違うな。」
「どんな噂か知りませんが職人として商人に布とか服とか売って稼いでますよ。それこそ奴隷の給金なんて比較にならない位。」
「だろうな。石版の金も今払った金も、奴隷の稼ぎだけで出せる額じゃぁねえ。俺も焼きが回ったか。」
悪い噂のある人間が、世話してきた人への贈り物を持っていたら、色々と思う所はあるだろう。基本的に善人なのだ。今の街の空気もそれ故だ。意図的に、被害者と加害者を作り加害者にされた者を責める風潮が出来ている。
こうした風潮は一度広まると、発生源が無くなっても残り拡がり続ける。止めるための動きが無ければ、それこそ人がいる限り永遠に。時間が風化させて見えるのは、時共に矛盾が生じる物事に限る。
今の僕に降り掛かるのはその範囲外だ。
街を出る手続きも済ませて、ギルドで用事も終わる、ついでにリクタンの件での犯人にも一言物申せた。野暮用込でやることはもう無い。商人との仕事も止まっている。
寮に戻り少ない荷物を纏める。召喚獣の背負子に積み一度送還。荷物を除いて再召喚。繰り返すと荷物を石版に収納出来る。石版に印が付く範囲内なら収納可能な様だ。物が多いと同じ印が複数付く。この辺りは今後も要検証だ。てかこの石版本当に最高の品質だな。
商人ギルドに向かい寮の使用を止める事を申請する。退去確認は無しでその分、保証金を払う。現金が心許ないので、少ない預金を降ろす。旅の路銀には不足かもしれない。
日暮れ前に外壁の門をくぐる。今夜はここで門の近くの集落で一泊する。
そこに集まり、夜を明かす商人も多くその護衛に付く傭兵もいる為、比較的治安は良い。特に犯罪者に対しては街の外と言うことで私刑に近い制裁が行われることもあり、街中より良い場合もある。街に来た時と逆の事を言っているな。
「何処に行くの?」
「僕の生まれた村に帰ろうかと思う。」
一晩明かして早朝に分霊と組手。これも毎日続けてかなり上達したと思う。終われば分霊を進行方向に先行させる。街ではずっと留守番か食堂でキリの護衛をしていた。
昨日までの事だけど、リクタンの村に行く時に僕の方へ連れて行ってしまったのも失敗だった。
僕自身は自分で守り、キリに付けておくべきだった。なのでより鍛練に励まねばと思う。
今は少し落ち着きたい。
故郷に戻ってから、成人したらまた町に、マレクさんの店に戻ろう。そこで仕事を紹介して貰い、静かに暮らそう。キリには少し息苦しいかもしれないが、そこは話し合おう。
召喚獣に二人で跨り、朝日の中出発した。
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