第131話 真、ギルドマスター
夕暮れ前にはパラライカへと到着した。
素晴らしい速度だった。運転技術も申し分ない。
人がいないところでカッとばす。馬車や人が多くなれば安全運転。
他者にも気をつかった素晴らしい走行だった。
「じゃあ、ギルドに行くか」
さっそくみなを連れて冒険者ギルドへ向かう。
リズは周囲をキョロキョロキョロキョロ、おっかなびっくり見回しながら、ヘッピリ腰でついてくる。
なんでも、さんざん追い回されたらしく、トラウマになっているようだ。
さっさと捕まっとけばよかったのに……。
オプタール同様パラライカにも網を張った。だが捕まえる者の意気込みはまるで違うのだ。
この街の住人は、俺と契約を結んでいなければ熱狂的信者でもない。捕まったとて、そこまでひどいことにはならなかったはず。
逃げれば逃げるほど、ひどい目に合うパターンだ。
ほんとはこれを男爵やセバスチャンに味合わせてやりたかったんだけどなあ。
それなら今ごろ酒場で祝杯をあげているところなのに。
「こんちゃ~っス」
冒険者ギルドの裏口から入る。
右手には酒場があり、ひと仕事終えたのだろう酒をかっくらう冒険者たちの姿が見える。
いいなあ、俺も飲みたい。
やや緊張したおももちの彼らにかるく手をふると、正面をみすえる。
受付だ。
うるわしき受付嬢と目があう。
「ヒッ!」
なにやら悲鳴をあげられてしまった。
あちゃ~、やっぱそうなっちゃったか。
「あの~、知らせを聞いて駆けつけたサモナイトなんですけど……」
「ギ、ギ、ギルドマスターをすぐ呼んでまいります」
受付嬢はあわてて奥へと走っていく。
そんな腫れものをあつかうようにしなくてもいいのに……。
ガチャリンコと扉が開く。
そして誰かがスッ飛んできた。ギルドマスターだ。
顔色がずいぶんと悪い。ドロみたいな色をしている。
だが、たぶん気のせいだろう。光の具合でそう見えるだけに違いない。
「お待たせしました」
いや、ぜんぜん待ってないよ。
便所でオツリが返ってくるぐらいの反応速度だったよ。
「聞くところによるとナニか捕まえたそうで」
「ええ、ご依頼のとおりジェイクなる者をとらえています」
うん、ありがとね。
「大変だったみたいだね」
「ええ、少々」
ギルドマスターの目の周りにはアオタンができていた。
ジェイクのゴリラパンチを喰らったのだろう。かわいそうに。
アイツはアホだからな。すぐ暴力をふるう。
「あ、そうだ。受付嬢――じゃなかった、
ちょっと気になったので尋ねてみた。
彼女にはお世話になったからね。まあ心配にはなるよね。
するとギルドマスターラングは、肩をビクリと震わせて言う。
「サモナイトさまもお人が悪い。彼女は現在自宅療養中です」
「あらら、せっかくの
そうなのだ。受付嬢ミーシャは俺をだました功績を買われ、ギルドマスターに
新設された冒険者ギルドに就任だ。一国一城のあるじ。
誰もがうらやむ出世とは、まさにこのことだろう。
「やっぱり急に環境が変わったからかねえ。サモナイトが心配してたって伝えといてよ」
「……」
ちなみに新設された場所というのは魔界だ。
魔石を採掘するにあたり、誰かおいておいたほうがいいのではないかという案がでたのだ。――俺の中で。
そこで、急遽冒険者ギルドを設立。
ここの領主の親戚筋にあたるエドモンド伯爵に働きかけ、領主、ギルドと玉突きのように人事が下っていったワケだ。
つまりこういうことだな。オレ「ミーシャがほしい!」、エドモンド「やい! パラライカの領主、なんとかしろ!」、ハンフリー領主「ええ!? しょうがないなあ。オイ! ラング!!」ってな感じだ。
ちゃんと水や食料用意して、補佐にイフリートまでおいてあげたのに。
なのに、すぐに帰りたいって言うんだもん。
もうちょっと、あと少し頑張ろうねって励まして三日。
結局、もうムリってんで目隠しして連れ帰ったんだけど、ざんねんだったなあ。
「ギルドマスターのポストあいちゃったね。誰かやりたい人いる?」
そう言って受付を見回すと、みな下を向いた。
微動だにしない。ペンを持ったまま固まっているやつもいる。
「サモナイトさま。そのへんでご勘弁願えないでしょうか?」
うん、そうだね。あんまりやると嫌われちゃうからね。
「じゃあ、ジェイクんとこまで案内してくれる?」
「わかりました」
――エムの仕返しリスト――
元パーティーメンバー
@女剣士 完了
女盗賊
@リーダーの男戦士 完了
女僧侶
その他
宿屋の女将(保留)
@ピクシー 完了
リール・ド・コモン男爵
セバスチャン
@受付嬢ミーシャ 完了←NEW
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