第18話 ピクシーの願い
ピクシーの望みを聞いてみたところ、
いろんな花が咲き乱れる美しい庭に、土か木で作ったかわいらしい家。
そして、オシャレな家具。
……そんなんでいいのか?
なんとも拍子抜けである。もっと無理難題を押しつけられるかと思っていた。
それなら数日でできる。
家は土魔法で作ればいいし、花もすぐ育つ。オシャレな家具は……まあなんとかなんだろ。
しかし、タイミングがいいな。コサックさんの調査もそうだが、花だってハチミツ作りで植えようと思っていたところだ。
一石二鳥、いや、花の管理を考えると一石三鳥だぞ。
「どう? 悪い話じゃないでしょ?」
こちらの顔をのぞきこんで、ピクシーはいう。
悪いどころか、良いことづくめだ。
でも。
――なんか怪しいな。
できすぎた話には必ず裏があるものだ。
俺はジトッとした目でピクシーに視線をおくった。
「うふ」
上目遣いで首をかしげる姿はなんともかわいらしい。
まあいいか。
なにを企んでいようが、すべては契約しだいなのだ。
住処を提供したところで俺にデメリットはない。
契約を解除しないかぎりは俺に危害を加えられないし、結びつきが強くなるにつれて相手の
「わかった、契約しよう。そちらの住処は俺が責任もって提供する。かわりに庭の管理、情報収集に努めること」
「いいわよ、それで」
「おっと、そうだ。召喚はどうする? 俺はどちらでもいいが」
「それもオーケイよ。召喚がなきゃお互いふべんだし、ピンチのときの緊急避難にも使えるしね」
煮詰まったな。
では、お決まりのセリフといくか。
「わが名はエム。汝ピクシーとの契約完了を、ここに宣言する」
こうして、ピクシーを傘下におさめたのだった。
――――――
「ねえ、ねえ、あたますっごく腫れてるよ。吸ってあげようか?」
「うん、おねがい」
ピクシーは俺の腫れた頭に口づけすると、ちゅ~っと吸った。
痛っ! でも気持ちいい。コレはたまらん。やみつきになりそうだ。
「毒、ちゃんと吸いださないとダメだもんね」
「うん」
もひとつ、ちゅ~。
そうだ。これは治療なんだ。スズメバチに刺されたところがアホみたいに腫れてツラいのだ。
さらに、ちゅ~、っぽん。
アヘ。
「これで大丈夫。妖精には傷を早く治す力もあるの。すぐによくなるわ」
え~、終わり? もうちょっとしてほしいなあ。
あ、そうだ!
「太ももも刺されたんだけど……」
「まあ、たいへん。そっちもすいだしてあげる」
「うん!」
そんなかんなで、気づけばけっこう時間がたっていた。
もうおなかがペコペコだ。晩メシにしよう。
食糧庫にいって収穫物をとってくる。
もちろん、ピクシーの分も。
「はい、あ~ん」
「や~ん、おっきい。そんなのお口に入んない」
「ハッハッハッ、ごめんごめん、ちっちゃく切らないとね」
「ありがとう。やさしいのね」
こうして腹いっぱいになったころ、眠りにつくのだった。
朝起きてゴハンをたべる。きょうもピクシーといっしょだ。
いままではひとりきりの食卓だった。こうしてふたりで食べると、しっそな食事もごちそうに思えてくる。
「ねえ、食べ終わったら、かくれんぼしない?」
「かくれんぼ? う~ん、したいのはやまやまだけど、たしか他にしなきゃいけないことがあった気がする」
「だめなの?」
悲しそうな表情をみせるピクシー。
そんな顔されたらしょうがない。
「しゅる~」
「じゃあ、あなたがオニね」
そう言うと、びくしーはひらひらと飛んでいった。
おれはゆっくりと数を数えはじめる。
「ひと~つ。ふた~つ」
いやー楽しいな。ずっとこうしていたいなー。
「みっ~つ、よっつ~」
頭のはれも引いたし、やっぱぴくしーはすごいなー。
ちゆまほういらずだねー。
どこぞのあくの神官とは、えらいちがいだね。
……神官?
とつじょ、こころの奥底からフツフツと湧いてくるものがあった。
これは怒りだ。俺を追放したパーティーに対する。
「あれ? 俺なにやってんだ!?」
パチンとあたまの中でなにかがハジけたような音がした。
同時に夢から覚めたように、現実が見えてきた。
これはチャームの魔法だ。
ピクシーだな。
あのヤロー。
――エムの仕返しリスト――
元パーティーメンバー
女剣士
女盗賊
@リーダーの男戦士 完了
女僧侶
その他
宿屋の女将(審議中)←NEW
ピクシー ←NEW
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