第6話 収穫
太陽はあたまの上で円をえがいている。西にしずむこともなければ、東にしずむこともない。
ず~っとのぼりっぱなし。
まあ、この世界が玉なら反対側はずっと日が当たらない夜なんだろうけど、そこは重要じゃない。
大切なのはここにいる限り、植物は伸び放題、そだち放題ってことだ。
24時間ジャガイモそだちっぱなし。
フハハ、革命じゃ、ジャガイモ革命じゃ~
そうこうしているうちに、ジャガイモ畑で変化があった。
なんかヘニャっとしてるのだ。いままで青々としてシャキッと直立不動だったのが、ヘニャっと黄色くくたびれたオッサンみたいに。
これは……
収穫じゃ~、収穫の合図じゃー。
こうしちゃおれん。
畑にむかってスッ飛んでいく。
ズボッと、ひとかぶ引っこ抜く。
ズシリと重い感触。
「ワオ」
丸まると太ったジャガイモたちが土の中から姿をあらわしたのだった。
ヒー、フー、ミー……
なんとジャガイモは全部で30個もあった。
ジャガイモ一個で三十。30倍だ、30倍。
ほかの株もひっこぬく。やはりこちらもたわわに実っている。
「ひょ~」
笑いがとまらない。
抜く、ずっしり。抜く、みっちり。抜く、ゴ~ロゴロ。
こうして立派なジャガイモを445個収穫した。
さて、どうしたものか。
大量のジャガイモを前にして考え込む。
こんな量のジャガイモをどうやって運ぶんだ?
種イモを入れていた麻袋に全部入るわきゃない。
カゴと
ふつうなら日陰に干しとけばいい。
が、ここはスピリットワンダーファーム(いま名付けた)。
あっというまに芽がでて商品なんかにゃなりゃしない。
う~ん。
けっきょく悩んだあげく、大きな葉っぱをむしって地面にしきつめ、これは植えてないんだよ~みたいな雰囲気をかもしだすことにした。
ダメならダメで、また作ればいいや。
種イモとして50個ほど分けると、麻袋にいれて木に吊るしておいた。
グツグツグツ。
鍋でジャガイモを煮る。味見だ。売るからには品質を確かめておくひつようがある。
大きさよし、かたちよし、ツヤよしと見た目は100点満点だが、味はわからないからな。
念には念をいれるのだ。
よ~し、煮えてきた。
小枝をプスッと刺して固さをみる。なんの抵抗もなく枝は貫通した。
オーケイ。完璧だ。
ハフ、ハフ、はふ。
あつあつのジャガイモを皮ごとほおばる。
「うまっ!」
びっくり仰天、いままで食べたことのない旨さだった。
ホロホロとした食感、ほのかな甘みと皮の渋み、絶妙なバランスでうみだされる味のハーモニーに食べ進める手が止まらなくなる。
「これなら何個でも食べられるぞ」
が、8個食べたところで手が止まった。
さすがに飽きてきた。何個でもはちょっと言いすぎた。
人は慣れる生き物なのである。
味に変化がなければ、いくら旨くても食べ続けるのはむずかしい。
では、そろそろ売りにいくか。
上着を脱ぐと袖をしばった。その中へとジャガイモを入れていく。
袋のかわりだ。これなら200個ぐらい運べるだろう。
両手でジャガイモをかかえて歩く。
クッソ重い。20キロは軽く超えてるだろ。
持ち手のない20キロオーバーはツラすぎる。
こんどは別の作物も育ててみよう。売った金を元手にして、いろいろ試してみるのだ。
できれば軽いものがいい。でもって高く売れるやつ。
ふははは。大儲けしてやるぞ!
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