第4話
夜になると魔物とか妖怪とかそういった類のものが現れて悪さをするというのは、遥か昔から語られていることだけど、近年急速にその数が増していて夜中に出歩けないという事態に陥っている。
幸い出現スポットはある程度特定できているので、日没から日の出までの間結界を張ることで何とか日常生活が送れるようになっている。
とはいっても、普通の人なら用事がなければ簡易結界を張った家の中で大人しくしているもので、わざわざ出歩いているのは大抵がそういった悪いモノを退治する特殊な能力も持つ人々だ。
そういう状況の中、普通の会社員が真夜中に外出、しかも危険な結界の中にいること自体ほぼあり得ないことで、お兄さんが驚くのも無理はない。
「えと、オトモダチに誘われて一緒に入ったらさっきの場所に飛ばされて…あ、オトモダチはお兄さんと同業だよ!」
一応掻い摘んで…というか大幅に端折って説明してみたら、お兄さんは暫くうんうん唸っていた。色々と言いたいことがあるんだろうなあ。ひとしきり唸ったあと、
「取り敢えず危ないから、一般の人は入らない方が良い…というか、入っちゃダメ!です!」
まっとうなご意見なので素直に受け取ることにする。殊勝な面持ちで、
「はい。イゴ、キヲツケマス。」
素直な反応に逆に恐縮させてしまったようで、
「あ、えっ偉そうにスミマセン!」
その後はお兄さんの学校生活のお話や、自分の仕事の話なんかを取り留めもなく夜が明けるまでしゃべり続けた。
途中で見張っているから眠っていても良いと言われたけど、色々ありすぎて目が冴えてしまった。帰りの電車の中で爆睡するのでいいや。
東の空が白み始めると音もなく結界は解けて、朝の清浄な空気が流れ込んできた。
うーんと体を伸ばして駅までの行き方を訪ねると、ここまで来たら最後まで面倒見ますよと懐っこい笑顔で返された。
本当にいい人だ。こういうのを地獄に仏っていうのかな、などと思いながらコンビニで二人分の朝ごはんとお礼のお菓子を買って駅まで歩いた。
既に始発は動いている時間なのでそんなに待たずに家路に着けるだろう。お礼と共に朝ごはんとお菓子を渡そうとすると、何やらもの言いたげな顔をしている。
「あ、あの…」
お、来るものは拒まないけど遠距離になっちゃうぞ。そもそも学生さんって法律的に大丈夫なのかな?
「大丈夫、ですか?」
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