第3話
「へーお姉さん西の方の人なんだ。」
火にあたりながらお兄さん持参のカップラーメンでお腹を満たすと
先ほどの緊張感はどこへやら。
食後のコーヒーまでいただいていると、一体何しに来たんだっけ?と
うっかり目的を忘れそうになってしまった。
お兄さん、といってもまだ学生さんの年齢で実際学生さんらしい。
なんだか特殊な専門学校で今回も課外活動として参加しているとか。
流石に邪魔をするのは申し訳ないので、自分に構わず課外活動に戻るように
言ってみたけど、笑顔で「迷子を保護するのも活動の内です!」と押し切られてしまった。
取り敢えず、夜が明けるまで一緒にいてくれるらしい。
「他所の場所に飛ばされるなんて初めて聞いたよ。ビックリしたでしょ?」
「気が付いたら真っ暗闇の中だからね。声を掛けてもらって本当に助かったよ。」
「ヤバそうな場所で気配を感じたから念のために声掛けたんだけど、良かった、いきなり攻撃しなくて」
笑顔で不穏なことを言われてちょっぴり顔がひきつったのは内緒。
コーヒーのおかわりをいただきつつ、取り留めのない会話を続けて夜が明けるのを待つ。
どうせ相方と合流しなければ始まらないし、今できることは何もなさそうだ。
夜が明けてここから出たら帰る算段をして、相方の居場所も確認しないと。
そして何より、普通に仕事に行くつもりでいたのに、こんな遠くに飛ばされたら戻るのに半日以上かかってしまう。
「今日は欠勤するしかないかぁ…」
ポツンとつぶやくと「えっお姉さん何してるヒト?」といささか驚いた声で尋ねられた。
まあ、真夜中に夜明けまで出られない結界の中にいるんだから同業だと思うよね。
心の中で苦笑しつつ真面目な顔で教えてあげた。
「おねーさんは、フツーの会社員ですよ。」
ただしフツーの定義は自分基準だけど。
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