大会前夜の朝
古井論理
本文
今にも降り出しそうな曇り空が頭上に低く垂れ込め、渡ってきたであろう燕が一階の軒よりも低く飛ぶ朝だった。私は四時半に床を起ち、六時の朝窮まるホームに立った。私の立っている朝はここに在り、私にとって最後になるであろう劇の開演は近づいている。私の中に、実感はなかった。
目の前を、JR東海の亀山に向かう列車がわずかばかりの人を乗せて走り抜ける。背後の二番プラットフォームで、名古屋行きの列車が発車した。
――明日で最後か。
私の脳裡に、ふっとそんな思いが過ぎては戻る。自分らしくない。私は演劇同好会の冷ややかな副部長であり、我儘で残酷な裏方担当。それなのに何故こんなにも明日が待ち遠しくて、どこか寂しいのだろう。私には、皆目見当もつかなかった。
大会前夜の朝 古井論理 @Robot10ShoHei
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