第14話
「…これは完全に眠られていますね…」
「やっぱりそうでしたか…」
王太子様が眠られたことで戸惑いはありつつも、顎に手を当てて
「メイアール令嬢、殿下はいつからこの状態になったかわかりますか?」
と聞いてきた。
私もいつからかはわからないけど確かお父様が王太子様に話かけたあたりから、変化があった。
中庭にいた時のような圧迫感はなかったので、それを伝えてみる。
「…気づいたのはお父様が話しかけたあたりだと思います」
「なるほど…。ちなみに自力で抜け出す事は可能ですか?」
私の足はちゃんと地面に着いているけど、腰に腕を回されており、立ち上がる事は無理そうだ。
「申し訳ございません。厳しそうです。」
「…そうみたいですね。メイアール侯爵、御令嬢の手をとって引っ張りましょう」
私は殿下の後ろからサポートします。
お父様とブリューゲル公爵の2人がかりで私を放してくれるそうだ。
「スノウ、少し痛いかもしれぬが我慢するのだぞ」
「わかりました」
ここから離れることができるのなら、痛さだってどうってことないです。
私はなんでもこいとお父様の方へ両手を伸ばす。
「いくぞ!せいっ!」
お父様の合図で私達3人は力をいれた。
すると、驚くほど簡単に私と王太子様は離れる事ができて、私とお父様は勢いよく倒れてしまった。
ガタンッ!
「すみません。お父様!頭を打っていませんか?」
「…いや大丈夫だ」
よかった。お父様に怪我がなくて…
でも、倒れた時けっこう大きな音が出たから王太子様は起きてないかしら?
チラリと王太子様の方を見る。
「大丈夫です。しっかりと眠っていらっしゃいます」
お父様と私はホッと一息つく。
よかった。これで目覚めてたらまたもとに戻るハメになってたわ。
でも、王太子様の手がモゾモゾと手が動いて見えるのは気のせいかな?
「何か王太子様の手、モゾモゾしてませんか?」
「…私の目にもそう見えますね」
「もしかしてスノウを探しているの可能性もありますか?」
「…可能性はございます。メイアール令嬢、何か代わりの物は持っていませんか?」
離れる事はできたけれど、このまま探していると目が覚めてしまう恐れがある。それはちょっと危険だ。
公爵様は私に代わりのものはないかと聞いてきたけど、私が持っているものは身につけているものしかないので、代わりのものなど特にない。
対して役にたたなさそうだけど、手袋でも脱いで持たせてみる?
「スノウ…手袋ではどうにもならんだろう…」
「いえ。現在殿下は手持ち無沙汰という感じがするのでやってみる価値はございます。」
そうして王太子様に近くにあったクッションと手袋を持たせてみたところ、何かを探す様子は収まったので、今度こそ私たち3人は一息つく事ができた。
「公爵様ありがとうございます」
「こちらこそ、殿下の不注意で巻き込んでしまい申し訳ございません」
今日はもう遅いので、後日王太子様が正常に戻った際にあらためて今日の一件を聞くという形でお父様と私は家に帰った。
今日は本当に長い一日だった。
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