第15話 ブリューゲル公爵視点①
シャルル殿下が薬の影響で抱きついている女性の名はスノウ・メイアールという名だった。
メイアール侯爵の一人娘ということはわかるが、令嬢も…私もだが社交界にあまり出ていないので本人かの確証は得られない。
そこは後ほどメイアール侯爵にでも確認するしか方法はないが、メイアール令嬢は見た感じ普通の子だ。
殿下を陥れようという悪い考えは持ってなさそうである。
休憩室に行こうとして迷ったと答えていたが、中庭のある回廊を抜け突き当たりを右に曲がった先が休憩室なので、普通は迷わないはずなのだ。
それを迷ったということは相当の方向音痴か登城が少ないかのどちらかだと思う。
そこもおいおいメイアール侯爵に確認が必要だが、まずはこの状況を切り抜けなければならない。
殿下がうっかりワインを飲んでしまってメイアール令嬢には迷惑をかけているが、薬ができるまで我慢してもらおう。
抱きついているだけなので、刺激を与えなければ殿下は何もしなさそうだ。
…と思う。
離れたくないのか抱きついたままだし、私の言うことは聞かないし殿下ってそういう態度をとる人だったけ?
薬の影響とはいえあんな姿は初めて見る。
メイアール令嬢を抱えて歩いている殿下を後ろから追いかけてはいるが、絶対イグニスの間にはいかないと断言できる。
殿下は周りを警戒せずに進んでいっているが、少しは周りを警戒してほしいものだ。
万が一誰かに見つかって噂が広まったらメイアール令嬢に迷惑がかかるんだぞ。
殿下もこのような形で噂されるのは不本意だと思うんだが、今の殿下に何を言っても無駄なんだよな。
殿下が向かった先はテラの間で、やはり私が言った部屋とは逆方向だった。
真っ直ぐ奥にあるソファに向かっていきメイアール令嬢を抱えたまま腰を降ろした。横抱きのままでは居心地が悪かったのか体勢をいれかえて背後からまた抱きついている。
メイアール令嬢は現実逃避をしているように見える。
いいな…私も考えることを放棄したい…
立場上、私はそうすることはできないので、まずは男を護衛騎士に任せることと、メイアール令嬢の父親を連れてきてもらうことにする。
すぐに殿下専属の護衛騎士が来てしっかりとした縄で縛ってもらった。
ずっと男の腕を拘束していたジャケットは返してもらうが、ところどころシワになっていた。今は身だしなみを気にしている余裕はないので、そのまま羽織った。
時々現実逃避しているメイアール令嬢に声をかけつつも自分もしばらくは思考を停止させる。
メイアール侯爵にご令嬢を引き取ってもらってから調剤室で薬師とともに薬の作成の立ち会い。
陛下への報告に男の尋問…
やることはいっぱいあるな…
あぁ、頭が痛くなってきた…
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