第12話 

あれ?イグニスの間じゃない…

ここはテラの間かな?


昔お父様にテラの間は茶色で統一されているからテラと名付けられていると聞いたことがある。

ちなみにイグニスは赤い部屋だそうだ。


どちらも王族専用で防音対策がされているので、秘密部屋とも言われているらしい。

他の人は入ってこれないので、今の状況にはピッタリの部屋だ。


本当にあったんだなぁ。秘密部屋。

こんな状況じゃなかったら入ることできなかったんだろうな。

あそこの家具の細工をじっくりと見れないかしら?


「…メイアール令嬢。現実逃避している場合ではございませんよ」


現在、ソファに座っているのだが私は王太子様の膝の上にいる。

たぶん効果のなくす薬が完成するまでひっついたままかなと諦めて滅多に入れない部屋を観察していた私の思考が公爵様にバレてしまった。


だって自力で抜け出せないし、離してくれないもん。

ひっついているだけで何もされないと思うので、意識しないようにしてたのに現実に引き戻さないで欲しかった。


中庭にいた時よりもさらに密着していて、このままだったら意識しちゃうから考えないようにしてたのに⁉︎

なんか私の匂いを嗅いでるような気がして落ち着かないんだよぉ


「今、メイアール侯爵を呼んできてもらっています。来られましたら殿下と離してもらいましょう」


公爵様も考えることを放棄したように見えて、まるで私だけ現実逃避は許さないと言っているようだった。


公爵様はここに来るまでで若干疲れ切っているのでは?と思うのは私だけかな?


お父様を呼んでくるというのはナイスな考えで、父親権限ということでこの状態を打破してくれそうだ。


ちなみに捕らえた男はこの部屋についてすぐ、王太子殿下付の騎士に拘束されて連れていかれた。

なんでもこれから調合室で薬の製作とそれが終わったら尋問されるそうだ。


作成時間はどれくらいかかるかわからないけど、あの人には最速で薬を作ってもらいたい。

私は予定なんてなんにもないけど王太子様の業務に差し支えるもんね。


それにしてもお父様が来るまでこの体勢のままかぁ…王太子様はこの部屋に入ってからずっと同じ体勢だけど辛くないのだろうか?

私は身動きできなくて辛い…


抱き枕用ぬいぐるみの気持ちを考えることで現実逃避をはじめたが、今度は公爵様から何もいわれなかった。

公爵様も実は現実逃避しているよね?


しばらくするとお父様がテラの間に入ってきた。

慌てて来てくれたのか身だしなみは乱れていて私の状態を見て驚愕している。


「ブリューゲル公爵、ご連絡いただき誠にありがとうございます」

「いえ。こちらこそパーティを楽しんでいた中、突然のお呼び出し申し訳ございません」

「かまいません。娘の一大事ですからね」


さすがお父様!

混乱していても対応力がすごいです。私も見習わないといけないポイントですね。


ブリューゲル公爵のひと通りの説明が終わりお父様は複雑そうにしつつも納得していた。


そうして私の方をみて、ひっついている王太子様を見てフリーズしたが気を取り直して

「スノウ…会場のどこにもいないから心配していたのだが、まさかこんな事になっているなんて思ってなかったぞ」

疲れ切ったように言った。


お父様、私も予想外の展開なんです。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る