第10話


男を捕らえた手はそのままに顎に手を当てて考えてこんでいるブリューゲル公爵。

この時間がすごく緊張するんですけど…


「ふむ。あなたの父親は侯爵という身分ですが、王宮にはあまり来訪されなかったのですか?」

「今日で二回目です」


やっぱりそこをついてくるよね。

お父様は王宮で働いているので一緒に登城することも可能だし、今までも王宮で行われるパーティはあった。

だけれど私は今まで人見知りなことを理由に避けていたので、自信満々に答える。


ブリューゲル公爵は少し訝しんだものの2回目ならばそれなら迷うのも仕方がないか…と納得している様子だった。

それに後で父親に確認すれば証明はできるので問題はない。


すると今まで黙っていた男が

「なんだよ。あの会話聞かれていたのかよ。気配に気づかなかったのは俺たちもまだまだだな」


クツクツと笑っているけど、この人プロではないのかしら?

私の気配に気づかないとはあまりにも警戒心が薄いのでは?


「人の気配にきづかないとはプロとしてはお粗末な結果だな」


で、もう1人は何処にいる?とブリューゲルは男を睨みつけた。

「うるせぇよ!」男は不貞腐れたようにもう1人は衛兵に変装していて、この時間中庭に配属されるよう任務についていたそうだ。

男が失敗しているのを見てもう逃げ出したから捕まえることは無理だぜと怪しく笑った。


もう1人は衛兵に変装してたのか。

この男のことは薄暗い中でも見えていたから判断する事ができたけど、もう1人は少し遠くて格好が判断できなかったんだよね。


取り逃したのは残念だけど、捕まるのも時間の問題なのでは?と思う。


ブリューゲル公爵はまた考え込むように黙った。なにか気になるとこでもあったのかな?


「なるほどな…だから衛兵がいなかったのか…。まぁ、うちの殿下がこんな状態だから逃げてもらって逆によかった」

今襲われたらひとたまりもないからな。


うんうん。確かに今の状況はマズイよね。

王太子様は私に抱きついたまま動かないから捕まえることもできなければ、誰かも呼ぶこともできない。


「殿下もそろそろメイアール令嬢を放したらどうです?

可哀想ですよ」

「いやだ」

アルスとばかり喋ってないで俺にももっとかまえ!


ブリューゲル公爵の助け舟があったものの長らく放置してしまったせいで、王太子様は拗ねてしまったらしい。

さっきまで、回されていた腕は肩のあたりだったのにいつのまにか腰あたりまで移動していてさらに密着した状態になる。


わわわっ。助けてください公爵様!


「おい!惚れ薬とはいえ効きすぎじゃないのか⁉︎

「そんなに強い薬ではなかったはずなのにおかしいな?」

「そういう問題ではない!早く薬をつくれ!」


わっかりましたよ。それにしてもあの王太子様ワイン飲むなんてうっかりすぎるぜ…

クツクツと笑って言っているけど王太子様もあなたには言われたくないと思う。

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