第9話

しばらくしてブリューゲル公爵が怪しい男を連れて戻ってきた。

なぜが怪しい男の腕には公爵様が着ていたジャケットで縛られていたのが疑問だ。


やっと戻ってきてくれたブリューゲル公爵に私は助けて下さい。王太子様と私を離して下さいと目で訴えてみる。


「あっ、俺間違えた薬つかったかも…」

「なに⁉︎」


仏頂面だった男が私に抱きついている王太子様の様子を見て慌て出す。

間違った薬ってなに?

私にも説明お願いします‼︎


「どういうことだ!間違ったって!」

「…俺は毒薬を使ってお前ら2人を毒殺してくれと依頼されたんだ!」

だから毒薬つかったんだが…どうやら間違った薬持ってきたみたいだな。ありゃ惚れ薬だな。


ほっ、惚れ薬⁉︎

色が似ていたから間違えて持ってきちゃったみたいなこと呟いていているけど、そういう問題じゃない!?

なんてものを入れているのよ⁉︎


「なっ!惚れ薬だと」

ブリューゲル公爵に胸ぐらを掴まれガクガクと揺さぶっている。

「げっ、解毒薬はあるのか?」


解毒剤は毒物に有効なもので、惚れ薬のような特殊なものにはないような気が…


「っ、あ、あるぜっ、」

「‼︎あるのか⁉︎」


激しく揺すられていた手が急に止まり、フラフラした状態だけど、正式には効果をなくす薬だそうだ。ただし、今は手元にないのでとりに戻る必要があるらしい。


あるんだそういう薬…


「お前を家に帰すわけにはいかないから、王宮の監視のもと、その薬を作ってもらう!」


変なものを入れないように王宮所属の薬剤師にもお前の監視にあたることをつたえていた。

許可を得るために王太子様の方を向いて公爵はそうだったという顔をした。


そうです。最終決断ができる王太子様は現在私にひっついています。

いっこうに放してくれそうにもなく長らく放置しているせいで、もっとかまえとどんどん力が強くなっている。


「…挨拶が遅れてすまない。私はアルス・ブリューゲルだ」

「スノウ・メイアールと申します。このような状態で申し訳ございません」

「その状態じゃしかたないです。それよりあなたにいくつか聞きたいことがあるのだがかまいませんか?」

「ええ。かまいませんわ」


耳元でスノウという名か名前もかわいいなとおっしゃっている王太子様の事はおいておこう。

まずは自分の潔白を証明しないとお父様に迷惑がかかってしまう。


「感謝します。そうですね……あなたはなぜワインが危険だと知っていたのですか?」

「そうですね。どこから説明したらいいか…」


やっぱりそう思うよね。わかってもらえるかわからないけど説明するしかないか。


「あれは私が休暇室を探して道に迷っていた時にその男ともう1人の男が怪しげな会話をしていたので、これは危険だとつけてきました」


本当は公爵様を尾行して道に迷った先で聞いて、お父様に相談しようと会場に戻ろうとした時に偶然見つけたから追ってきたってことだけど…


この説明で公爵様が納得してくれるかな?

お父様、迷惑かけたらごめんなさい。

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