第4話
私がパーティ会場へと戻って来るとちょうど王太子様が入室してくるところだった。
私のことを目ざとく見つけたお父様が
「よかった。このまま休憩室にいったまま戻ってこないと思ったぞ」
以前のわたしだったら休憩室に行ったまま戻らなかったけれど、今は違うもん。
「ご心配おかけしました。王太子様がまだいらっしゃっていないのにずっと休憩室に居座るのはどうかと思って戻ってきましたの」
「それはいい心がけだ。これからもその意気でよろしく頼むな」
はい。頑張ります。心の中で返事をした。
王族の方々は会場中央にある階段から降りていらっしゃってた。
私はギリギリっていうところだったから逆に目立ってしまったかもしれない。
さすが王族、来ているものが華美で目がチカチカする。思えば私はこういった盛大なパーティはデビュタント以来だからこのあとどうしたらいいかわからない。
覚悟はさっききめたばかりだというのに怖気付いてしまった。
休憩室にもどりたいよぉ。
王族の方々はゆったりと降りきり、玉座の方へ行く。まずは公爵の方々が挨拶に向かわれた。
このあと侯爵、伯爵、子爵、男爵の順に挨拶に行く。
私たちは侯爵なのでこの次だから移動しなくてはいけないのだが、足が動かない。
「スノウ?私たちもそろそろ行かなくてはいけないのだが?」
「わかってます。お父様」
わかってないから聞いているのだが…とブツブツといっているけど、急かさないでほしい。
こっちはやんごとなき身分の人と会うのに心の準備がいるんだよ。
見かねたお父様が自分の腕に私の手を乗せ、
腰に手を当てて押した。一見エスコートに見えるが私たちのことをよくわかっている人は押しているのだと分かるだろう。
嫌だよぅ。まだ心の準備が出来てないのに…
そんなことお構いなしにお父様は玉座に向かって行く。
挨拶は私がするからお前はニコニコと笑って挨拶しなさい。
順番が近づき緊張によりおどおどしていたところお父様の一言で少し和らぐ。
「国王陛下、この度はご招待いただきありがとうございます」
「メイアール侯爵よくきてくれたな」
父が挨拶をしたので、私も揃ってカーテシーをした。緊張で笑顔は引きつっていないか心配だけどそんなことは気にしてられない。
ふと顔をあげた時に王太子様と目があったような気がしたけれど、特に興味もない様子だったし、顔は笑っているけど目が笑ってなくて恐ろしかった。
そういや、『公爵と初恋の花嫁』にも王太子様が出てきてたどんな性格だっけ?物語の重要なキーパーソンなんだけどそのがまだ思い出せないんだよね。
深く考えられないままそこから怒涛の挨拶周りが始まったので、考える事を私は後回しにした。
挨拶回りが終わればいつも通りどこかで暇を潰そう。その時に考えればいいと。
私はそののち深く考えなかったことを後悔することになるのを知らなかった。
まさか道に迷った先であんなことになるとは思わなかった。
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