第十四話 俺の魔法講座
イアと早速明日遊ぶ約束をし、俺はやっと帰ることができた。
家につくと、ダラスが帰ってきていた。
「お、お、おいロエル、あの死体は何だ?」
早速聞いてくる。
「実は今日森へ行ったのですが、そこで子供が魔獣に襲われていたので、とりあえず倒しました。」
俺は今日の出来事を簡潔に説明する。
「とりあえず倒したってお前、コクロウトを単独で倒したのか!?」
あの魔獣の名前はコクロウトというようだ。
「まあ、上位魔法が使えますからね。
それより、コクロウトというのはどういった魔獣なのでしょう?」
「コクロウトというのはコクロウの上位種でな、長年生きたコクロウが知恵と魔力をもつことで生まれる。普通コクロウの群れのボスをやってることが多いのだが、コクロウはいなかったのか?」
なるほど、普通は群れをつくるのか。
それなら魔法使い一人では厳しそうだ。
「いえ、それらしきものはいませんでした。
あの魔獣一体だけです。」
「ふむ、となるとはぐれ、または変異種か。
とりあえず他の個体やコクロウの群れがある可能性があるから調査依頼をだしておこう。」
とりあえず死体についての話はすんだ。
すると、ずっと待っていたようにセーラが話しはじめた。
「ロエル、あなた人を待たせてるって言ってたじゃない?
誰を待たせてたのか、お母さん的には魔獣より気になるな~」
いやそこは魔獣の方を気にしろよ。
「ええ、実は今日友達ができまして。
まあその魔獣から助けた子なんですけど。」
「あら、ロエルに友達!?
一体どんな子なの?」
「イアっていうずっと布袋被ってる子なんですけど。」
「イア…ああ、あの家の子か…」
むむ、なにか問題があるようだ。
「…何か問題でも?」
「いや、別に問題はないんだけれど…」
「ロエル、あの子はちょっと訳ありでな。
…村のみんなからさけられているんだ。」
「ええ、イアの父親から聞きました。
だから仲良くしてほしいとも。」
「そうか、知っている上でお前が選んだなら問題ない。仲良くするんだぞ。」
こうして、この日は終わった。
魔獣と戦ったり、友達ができたりと、なにかと初めてが多い日だった。
_____
翌日、ダラスは村へコクロウトの報告に、セーラは庭へ洗濯に、俺はイアとの待ち合わせ場所である村のはずれの丘にいた。
ちなみに、コクロウトはダラスが倒したということにした。
四歳の子が倒したことにすると騒ぎになるからだ。
しばらく待っていると、イアがやってきた。
今日も布袋をかぶっていたのですぐに分かった。
「…おまたせ」
近くに親がいないときのイアの声は小さい。
「おはよう!昨日ぶりだね!」
ここで会話が止まる。
お互いに話題がみつからず、気まずい空気がながれる。
ああくそ!なにか話題を見つけねば!
だが、最初はなんて言えばいいんだ!
前世の陽キャたちはどうしていた?
助けてダラス~~~!
前世はくそ陰キャだった俺にはハードルが高すぎる!
「あの」「あの」
はもった。
ああくそ最悪だ。一番気まずい流れだ。
「…どうぞ」
「じゃあ俺から先に」
相手が譲ってくれたので俺から話す。
「あの~イアって昨日から布袋かぶってるじゃん?
イアの父親からある程度事情は聞いたんだけど、詳しくは分からなくてね。
友達になったことだし、よければイアの素顔をみせてほしいのだけれど。」
あああああ俺はバカか!
何いきなりコンプレックスに触れてるんだ!?
「ごめん…それはまだ…無理」
ですよね~~
「ははは、気が向いたら見せてくれよ」
ますます空気が悪くなる。
「じゃあ…次は私。」
「なになに何でも聞いてくれ!」
「えっと…あの、手から石とか水がば~~~って出るやつ教えてほしい」
なるほど魔法に興味があるのか。
「別にそれくらいいいけど、イアにはちょっと難しいかもよ?」
「それでもいい!教えて!」
こうして俺はイアに魔法を教えることになった。
さて、まずは何から教えようか。
「とりあえず、水の基本魔法ウォーアを撃つから真似してみて。」
そして俺は久しぶりに詠唱をする。
ええっとたしか…
「我ここに水を求める。
我が前に立ちふさがるものに力をしめせ。
ウォーア!」
無事に俺の手から水球が発射され、木に当たってはじける。
詠唱は合っていたようだ。
「さあ、イアも詠唱をまねしてみて!」
「ん。我ここに水を求める。」
イアの前に水が現れ、イアは目を輝かせる(ように見える)。
だが、ここで水球は地面に落ちてしまった。
イアは固まった。
「最後まで集中を乱しちゃダメなんだ。
もう一回やってみよう。」
「でも、ロエルは詠唱せずに使ってた。」
「ああ、無詠唱魔法?あれはもっとむずかしいぞ?」
「そっちの方がいい!」
ふむ、だがこの世界の人は魔力を感じられないらしいし…
あ、そうだ!大量に流したらわかるんじゃね?
「イア、ちょっと手を出して」
イアが手を差し出したので、俺はその手を握る。
「キャッ!」
「無詠唱魔法を使えるようになるには魔力を感じる必要があるんだ。」
「魔力を、感じる?」
「そのために今からイアに魔力を流す。
何か感じたら言ってくれ」
そして俺は魔法陣に魔力をながしこむ要領で、イアに魔力をながしこんだ。
「どう?何か感じるかい?」
「…ん、感じる。何か私の中にねっとりしたものが入ってくるような」
誤解を招く言い方だな。
だが、魔力を感じることには成功したようだ。
「そう、それが魔力だ。
魔力はイアも持ってるはずだから意識すれば俺が流さなくても感じられるはずだ。」
そして俺はイアの手を放した。
「すごい!これが魔力!」
「しばらくはそれを体の中で動かす練習をしてくれ。」
「うん!分かった!」
素直でよろしい。
あとの時間は、また詠唱を教えたり、俺の魔法で遊んだりした。
お昼ご飯はセーラに作ってもらったものを一緒に食べた。
結局、日没までイアは素顔を見せてくれなかった。
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