第十二話 エスコート
「大丈夫かい?」
人狼型の魔獣を倒したあと、俺は布袋をかぶった子供に話しかけた。
子供は、少し怯えているようだったが、静かにうなずいた。
「とりあえず回復魔法をかけるよ。」
中位回復魔法の光が子供をつつむ。
これでもしどこか怪我をしていたとしても治っただろう。
「まさかこんなところで魔獣に襲われるとは、災難だったね。
ところでどうして一人でこんなところに?」
「…ぉかあさんが・・・て・・・から・・ようと・・・」
布袋ごしなのと声が小さいのとでほとんど聞き取れない。
ふと子供がかごのような荷物を抱えていることに気が付いた。
中には野草が入っている。
「なるほど、野草を集めに来たのか。
でも、森の中はさっきみたいな危険がいっぱいだから野草収集は村の中でやった方がいいよ。」
そんなことをいったら無言でこちらを見てくる。
お前はどうなんだよって?
子供は細かいことは気にしなくていいんだよ。
「…ここでしか…取れない…
それに…村は…いや…」
どうやら野草ならなんでもよかったわけではなく、特定の草を探していたようだ。
それに、村がいやだって?
布袋をかぶっていることと何か関係があるのだろうか。
「家には一人で帰れるかい?
よかったら村までおくっていくけど。」
子供は少し迷ったようだが、まだ襲われた恐怖が残っているようで
「…おねがいします」
「よしっ!じゃあ、ちょっと待ってて!」
さて、魔獣の死体はどうしよう。
なんか放っておくとまずい気がする。
でも、そのままお持ち帰りするわけにも…
いや、森を出たらすぐ家だしいいか。
それに、死体があった方がダラスに報告しやすい。
こんな人里近くにこんな強そうな魔獣が出てくるのは明らかに危険だ。
報告して村人に注意喚起せねば。
第二第三のこの子を作るわけにはいかない。
ということで、俺は魔獣の死体を地面からほりおこし、水魔法できれいに洗って血抜きもしたあと、火魔法と風魔法をいい感じに混ぜたドライヤーで乾燥させてはく製のようにした。
そしてそれをかついで子供の方にもどる。
「おまたせ!さあ行こうか!」
子供は、少し引いていた。
____
帰り道は俺が木をなぎ倒してきたおかげで歩きやすかった。
道中俺は、青い線のことや、一時的に爆発的に魔力がふえたことや、急に加速したことについて考えていた。
(魔力の爆発的増加に関しては、あの青い線が原因だろうな。)
本当にあの青い線は何なのだろうか。
気合を入れてももう一回でてきたりはしない。
極限になって限界突破でもしたのだろうか。
限界突破だとしたら反動とかありそうだが、今のところそういうのは感じていない。
(加速については普通に魔法だな)
あの時魔力が動くのをはっきり感じた。
俺が速くなりたいと思ったからピオ〇ム的な魔法が勝手に構築されたのだろう。
バフ系の魔法は『魔法 基礎』には書いていなかった。
新種か、回復魔法のような学習困難な魔法なのだろう。
できればあの魔力の動きを再現したいところだが…
そんなことを考えていたら森を抜け、家の前まで来ていた。
「よし、村についた。これでお別れだ。
じゃあね!これからは気を付けるんだよ!」
「…や」
だが、子供は俺から離れなかった。
そういえば村がいやだと言っていたな。
恐怖体験した後だし、心細くなったのかな?
「…仕方ないな~
でも、魔獣の死体を村の中に持ち込むわけにはいかないから、これだけ家に置かせてくれ。」
「…や」
「すぐ戻ってくるから!ね!」
そう言うと、子供は俺を開放してくれた。
俺は急いで家に向かう。
「あらロエル、お帰りなさい。
早かっ………えっ!?」
セーラが出迎えてくれたが俺が背負っているものを見て驚きの声をあげる。
「ごめんなさい!人を待たせているんだ。
これは後で説明するから。」
俺は背負っているものを置いてまた出てった。
………
「ごめん!待った?」
「…だいじょぶ」
そんなカップルみたいなことをしながら今度は子供の家を目指して歩く。
村の中に入ると、なんだか人の視線を感じた。
まあそりゃそうか。
滅多に家を出ない俺と、布袋をかぶった子供が一緒に歩いているのだ。
個々でも珍しいものが一緒にいる。
これは目立つ。
でも、なんだろう。
両親と一緒の時に比べさけられているように感じた。
いや、たぶん両親がカリスマだっただけだろう。
これが普通なのだ。きっと。
子供の、村がきらいだというのが、どうも心に引っかかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます