第八話 詠唱魔法の練習

 二歳になって、俺はある程度流暢にしゃべれるようになった。


 初めてしゃべる時はママとパパどっちにしようかすごく迷った。


 そして結局、


「ぱ~~~」


 とじらしてからの


「ぱ~~~~まんま~~~」


 と言った。


 あの時のダラスの顔を俺はもう忘れない。




 二歳になったといったが二歳の誕生日パーティはやっていない。


 どうやらこの国では毎年誕生日を祝う風習はないらしい。


 だが、五歳、十歳、十五歳になるとパーティをするようだ。


 五歳のやつは労働力追加記念パーティ、


 十歳のやつは婚活応援パーティ、


 十五歳のやつは成人パーティだ。


 つまり一歳の時のやつはダラスとセーラがやりたいからやったということだ。




 さて、俺は今、地下研究所にいる。


 地下研究所はまた拡張され、ワンルームのアパートの部屋くらいになった。


 もう上にある書斎より広いかもしれない。




 しゃべれるようになったということで、詠唱に関する実験をする。


 まずは魔法陣だ。


 水の魔法陣が刻まれた粘土板をとりだす。


 そして魔法陣に手を添えて、俺は唱えた。




「神に認められし陣に、我が力を与えん」




 魔法陣が光りだす。


 そして、光が収まると、いつも通り水が召喚されていた。




「ん~~正直無詠唱の時と違いが分からないな~」




 念のため無詠唱でも魔法陣を使用し、召喚された水の量や見た目を比べてみた。


 どちらもきれいに澄んだ水が同じ量あるように見える。




「やっぱり特に違いはないように見える…」




 そうなるとどうしてあの本は詠唱が必要だなんて書いてあったんだ?


 結果が同じならどう考えても無詠唱の方が楽だろうに…




 …いや待てよ。俺が魔力を無詠唱で注げるのは俺が完璧に魔力を認知してるからじゃないか?


 普通の人は魔力が分からないらしいし。


 俺が初めて魔法を使った時は魔法陣を体の一部だと思い込んで魔力を流すことで成功させた。


 魔力を認知できない人にこれは無理だろう。


 ということは詠唱魔法の方も無詠唱でできる可能性が高いな。


 なんだかわくわくしてきた。




 早速詠唱魔法の実験に取り掛かる。


 詠唱は『魔法 基礎』をかなり読みこんだので暗記していた。


 手を壁に向けて水球を飛ばす魔法である『ウォーア』の詠唱文を唱える。




「我ここに水を求める」




 俺の中で少し魔力が動き、手の前に野球ボールくらいの水球が現れる。




「我が前に立ちふさがるものに力を示せ!」




 また俺の中で魔力が動いた。




「ウォーア!!」




 また魔力が動き、水球はまっすぐ飛んでいって、壁にあたってはじけた。




 ふむっ…今の詠唱の中で三回魔力の動きがあった。


 おそらく一回目で水を生成し二回目でその水に運動エネルギーをこめ、三回目で実行したのだろう。


 詠唱のほうもなかなかプログラミングににているな。


 つまり、この魔力の動きを詠唱なしで再現できれば無詠唱で魔法がつかえるということだ。


 俺は、何度か詠唱して魔力の動きをおぼえた。




「よしっそろそろ動きをつかめてきたぞ!」




 今度は無詠唱で試してみる。


 集中して魔力を動かす。


 少しすると目の前に水球が現れた。


 集中を崩さないように注意しながら静かに喜ぶ。


 またしばらくやっていると、水球が壁に向かってとんでいった。


 無詠唱魔法、成功である。




「でも、ちょっと時間かけすぎたな~」




 ウォーアを一発うつのに一分もかかってしまった。


 これでは実戦で使えそうもない。




「まあそこは練習あるのみだろ。それより他の魔法も試そう。」




 ということで、つぎは付与属性もつかった上位の複合魔法に挑戦してみる。


 選んだ魔法は


『フリータリス・カッシュ』


 何かにぶつかると爆発して周囲を凍らせる氷球を飛ばす魔法だ。


 そして、この魔法のもとの詠唱に、聖属性と闇属性を付与する詠唱も加える。




 さあ詠唱をしよう。


「神は我がもとにあり。深淵より力を呼び覚ます。我ここに氷を求める。信仰が妨げられしとき、力は暴走し、万物の時をとめる。我が前に立ちふさがるものに力を示せ!!


 フリータリス・カッシュ!!」




 正直めちゃくちゃ恥ずかしかった。


 でも、ちゃんと魔法は成功し、壁一面を凍りつかせた。


 初心者の俺でも中位魔法を一発成功できるもんなんだな~




「はあ…、これを魔力の動きがわかるまでやらないといけないのか…


 ん?ちょっと待てよ。別にいっぺんに覚えなくても一節づつ覚えればよくないか?


 よしっそうしよう!」




 俺は詠唱を一節一節区切って魔力の動きを確認した。


 こうして、俺は無詠唱魔法を習得した。


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