第七話 文字を学ぶ
その日はダラスの仕事が休みの日だった。
俺は、いつもなら地下で魔法陣の研究をしているところだが、ダラスが家にいるときは、地下に行かないことにしていたので、居間にいた。
ダラスとじゃれつきながら、ふと思いつく。
(そうだ、文字を覚えよう。)
俺は一度ダラスから離れ、書斎に向かった。
そして適当に本を一冊とり、居間に戻った。
「おや?ロエル、勝手に書斎にはいったのか?いけない子だな。」
そんなのもう今更だ。
「ふむ、本が気になるのか。
どれっ父ちゃんが読み聞かせてあげよう。」
よし!ねらいどうりだ。
これで話を参考に文字を覚えられる。
しかしこの親父、一歳が本の内容を理解できると本気で思っているのだろうか。
そして俺は本を読み聞かせてもらった。
ちなみに本のタイトルは「古代国家の賢王」というタイトルで、すごく頭のいい捨て子が、同じ境遇の人を集めて村をつくり、持ち前の頭脳を使って様々な魔道具をつくりながら村を発展させていき、最終的には世界の半分を占める大帝国になるというファンタジー小説だった。
まあファンタジーなこの世界ではノンフィクションなのだが。
本当に俺の体は優秀なようで、本の内容を一回聞いただけでほぼ完ぺきに一言一句覚えてしまった。
あとは覚えた言葉と文字を合わせて単語を覚えていくだけだ。
早速次の日からその本を使い、どの文字がどんな言葉を表しているのか、覚え始めた。
文字の勉強はわりと二か月くらいで終わってしまった。
俺の体が優秀なのもあるが、文法や細かいニュアンスを日々の生活の中で覚えていたのがよかった。
よく前世で英語の先生が言っていた『話せれば読める!』というのは本当だった。
さて、文字が読めるようになったので、読みたい本をいくつか書斎からピックアップした。
まずは一年前にお世話になった魔法陣の本だ。
タイトルは『魔法陣 基礎』
内容は、『魔法陣はいくつかの意味のある線や図形を組み合わせたものである』
とか、『召喚物は魔法陣の上に召喚されるので使用場所には注意だ』
といったもう知っていることばかりだった。
あくまで基礎だしな。
でも、気になる記述もあった。
『魔法陣の使用には魔力を込める必要がある。詠唱は以下の通りだ。
「神に認められしその陣に、我が力を与えん」』
当然だが俺は魔法陣の使用に際し、詠唱などしたことはない。
しゃべることすらできないからだ。
しかしこれには詠唱が必要と書いてある。
もしかして俺が成功だと思っていた現象は失敗だったのだろうか。
だが起こった現象に関しては書いてあることと全く同じだった。
それとも詠唱するとやりやすいとかあるのかな?
まあこれに関してはしゃべれるようになるまで試せないのでひとまず保留とした。
次はガイドブックだ。
世界各地の情報が書かれているので、この世界の地理を学べる。
タイトルは『大賢者は行く!!』
優れた魔法使いの偉人の旅の記録を基につくられたからだそうだ。
たくさんの町の細かい情報が絵付きで書かれている。
これによると、どうやらここは、大国ラーラス王国の南西部の端っこ、隣国のオロノア帝国との国境から森を挟んだ所に位置するケーセネス騎士爵領ヌヌス村というところらしい。
めちゃくちゃ田舎だ。
でも、帝国を見張る役目もあるので設備は整えられていた。
また、この世界には魔界大陸という多くの魔物がばっこする恐ろしい土地があるそうだ。
邪神が封印されているとか、大戦争の跡地だとかいろんな伝説があり、ダンジョンとかもあるらしい。
ぜひいつか行って冒険してみたい。
そこに行くためには大陸をななめに横断しないといけないのでかなり大変だが。
最後に一番楽しみにしていた本を読む。
タイトルは『魔法 基礎』
魔法に関する基礎情報が書かれている本だ。
きっと魔法の詠唱文とかが書かれているにちがいない。
___
この本から得られた情報をまとめてみる。
一、魔法の属性について
魔法の属性を大きく分けると基本属性、複合属性、付与属性に分けられる。
基本属性は四つあり、火、水、風、土だ。
火と風は攻撃性が強い傾向があり、水と土は防御性が強い傾向にある。
火は土を、土は風を、風は水を、水は火を打ち消す。
対角線にある属性は共存することができ、共存したものが複合属性である。
複合属性は二種類で、火と風を混ぜたものが雷、水と土を混ぜたものが氷だ。
付与属性は四つあり、光、闇、聖、陰だ。
光と闇は互いに打ち消しあい、聖と陰は互いに打ち消しあう。
付与属性は、基本属性、複合属性の全てと共存できる。
付与属性を他の属性と共存させることを付与という。
光を付与すると、瞬間の威力があがる。
闇を付与すると、持続力があがる。
聖を付与すると、効果範囲が広がる。
陰を付与すると、射程距離が伸びる。
尚、回復魔法や召喚魔法など、例外もある。
二、魔力について
魔法を使う上で、魔力は必須だ。
魔法を使うと、魔力が消費される。
魔力を消費しすぎると、魔力ぎれを起こし、寝込むことになる。
魔力は時間経過で回復するが、眠ったり、瞑想したりすると回復が早まる。
魔力量は生まれたときからほぼ決まっている。
魔力は他の生物や道具から引き出すことができる。
魔力を感じることは疲労などをとおさないとできない。
外に放出された魔力は鍛えれば感知することができる。
魔力が打ち消される地域がある。
三、詠唱について
魔法を使う際には詠唱をしなければならない。
大規模な魔法であるほど詠唱は長くなる。
繊細な魔法であるほど詠唱は長くなる。
集中して詠唱すればするほど魔法の威力はあがる。
詠唱は一節一節に意味があり、うまく組み合わせると魔法ができる。
節の数で魔法の位が決められていて、区切りは以下の通り
1節…基本魔法
2~4節…下位魔法
5~7節…中位魔法
8~10節…上位魔法
11~20節…儀式魔法
21以上…神威魔法または古代魔法
以上だ。
あとは細かい詠唱文とかがのっていた。
ふむ、不安なことといったら魔力量かな?
生まれた時から決まってるらしいし。
基本的に優秀なこの体だが魔力量はどうなんだろう?
まあ、いままで魔法陣で魔法使ってて魔力切れ起こしたことはないから期待はできるだろ。
それと魔力を感じることはできないというのも気になる。
じゃあ俺の体の中を巡回するこの粘度の高い液体のようなものはなんなんだ。
もしかしたら俺が魔法のない世界から転生してきたからわかるだけかもしれない。
リンパ液の流れを感じろとか言われても無理だからな。
詠唱しないとできないのは面倒だな。
しゃべれるようになるまで練習できないではないか。
とりあえずしゃべれるようになるまでは引き続き魔法陣の研究をすすめよう。
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