第四話 魔法陣の使い方
俺が魔力の存在に気付いた次の日、俺は魔法について考えていた。
俺は魔力を体内で動かせるようにはなったが魔法はいまだ使い方がわからなかったのだ。
魔力を手に集めて「火よでよ!」とか「水よでよ!」とか「回復せよ!」とか念じてみても俺の魔力はうんともすんともいわない。
やはり詠唱とかが必要なのだろう。
また母さんに魔法を使ってもらおうとも考えたが母さんは昨日俺が暴れまわったせいで未だ寝込んでいる。
正直あまりこれ以上迷惑をかけたくない。
(はあ…魔導書とかあればなあ…)
そこで俺はふと思い出した。
それは母さんに抱かれて父さんの書斎に行ったときのこと。たしかあの部屋には本が数冊おいてあった。きっとこの世界で本は高価なものなのであろう。前世の俺の部屋ほど(ほぼラノベだった)ではないがそれでも本棚を一列埋めるほどはあった。一冊くらい魔導書がある可能性は十分にある。
というわけで、俺はベッドを抜け出して父さんの書斎を目指すことにした。
書斎への侵入に成功した。
父さんは仕事でいなかったし、幸いにも(不謹慎)母さんは寝込んでいたので、誰にもばれずにすんなり入ることができた。
俺は早速目的の物を探すため、近くの椅子に上って、本棚に手をかけた。
とりあえず一冊本を取り出してみる。当然文字は読めないので内容は分からない。だが、この本は、文字だけでなく、すべてのページに食べ物やら置物やら風景やらの絵が添えられていた。きっと観光ガイドブックのようなものなのだろう。
これははずれだ。
というわけでそれをもとの場所に戻し、次の本をとりだす。
(おやっ?これはいきなり当たりかもしれない)
その本の表紙には複雑だが規則的な円形の模様と、それを囲うように炎、水滴、渦巻き、石の簡単な絵が描かれていた。
俺は期待をこめてその本を開く。例にもれず、内容はわからない。だが、数ページごとに表紙に描かれていたものによく似た、だが細部が少し違う円形の模様が描かれているのがわかった。
(もしやこれは魔法陣というものではなかろうか。これに魔力をこめたら何かしら起こるのではないだろうか。)
早速試してみる。
だが、ここで問題が生じた。魔力のこめ方が分からないのだ。体内で魔力を動かすことは出来ても、それを体外に出したことはなかった。
とりあえず手に魔力を集めて、魔法陣に触れてみた。もしかしたら魔法陣が勝手に吸収してくれるかもしれない。
しかし何も起こらなかった。
やはり魔力を外に出さないといけないのだろうか。だが、どれだけ圧力をかけても魔力は指先までいってそこで止まってしまう。魔力を外に出すことは出来なかった。
そこで俺は考え方を変えてみた。
本の上の魔法陣を体の一部だと思うことにしたのだ。
最初は相変わらず指先で詰まってうまくいかなかったが、しばらく続けているとだんだん魔力がすんなり流れてくれるようになっていった。
俺は喜びで高ぶる気持ちを押さえつけてますます集中力をあげていく。
すると突然、魔法陣が光りだした。
俺は驚き危うく椅子から落ちそうになる。
やがて光が収まり本をのぞいてみると、そこには土が一塊のっていた。
どうやら「土を召喚する魔法?」に成功したらしい。
(うおっしゃ~~~!!)
俺は、人生初の魔法の成功にすごく興奮した。
俺はすぐに他の魔法陣も試してみたくなり、他のページをひらいて魔力をこめた。
一回成功したこともあり、今度は最初からすんなり魔力は流れた。
そして魔法陣は光りだす。
冷静になって考えてみると、この行動はひどく迂闊だった。俺は魔法の危険性について全く考えていなかった。
土は魔法陣の上に召喚された。
ということはつまり…
光が収まると、魔法陣の上には一リットル位の水が生成された。
つまり、本の上に水が現れたのだ。
当然本はびしょびしょになってしまう。
俺の興奮は一瞬にして冷め、固まった。
(えっ…これ、やばくね?)
どうして俺はこの可能性について考えなかったのだろう。普通に考えればこうなることはわかったはずだ。今回は水だったからまだよかった。もしこれが火だったら家は火事になっていた。俺は自分の情けなさに、思わず大きな声でないてしまった。
赤ちゃんの感情は制御が難しいのだ。
その鳴き声を聞いて母さんが頭を押さえながらかけつける。
母さんは泣く俺とそばにある濡れた本をみて、状況を理解した。らしい?
母さんは俺を抱き上げてなだめながらベビーベッドにつれていき、オムツを交換し始めた。
どうやらおもらししたとおもわれたようだ。
ひどく心外である。
まあ赤ちゃんがおもらしするのは当然だし今までもぶっぱなしてきたからいまさらなのだが。
ちなみにそのあと本は母さんの魔法によって修復された。どうやら魔法は生物でないものを修復できるようだ。
結局母さんには迷惑をかけてしまった。
これからの練習では気を付けよう。
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