第三話 魔力を知る
暇な俺に遂にやることが見つかった。
魔法の修行だ。
だが、修行といってもなにをすればいいのだろうか。瞑想でもしてれば魔法がつかえるようになったりするのだろうか。魔力とかが必要なのだろうか。
まったく方法に検討がつかなかったのでもう一度母さんに魔法を見せてもらうことにした。母さんに魔法をつかわせるにはどうすればいいか。簡単なことだ。もう一度けがをすればいい。
今俺は寝室ではなくリビングにいた。
きっとベッドに閉じ込めていても暴れてけがをされたので母さんは俺を自分の目の届くところに常においておくことにしたのだろう。
だが甘い! この程度で俺を制御できると思うなよ!
俺は母さんが水を飲みに行った隙をついて高速で床を這って移動する。そして椅子をつたってテーブルの上に上った。
ここで母さんに気付かれたようだ。目を大きく見開いてこちらを見ている。
だが、もう遅い。すでに作戦は完了している。俺は勢いよくテーブルの上からとびだした。母さんは呆気にとられている。
ドスンッ!
「キャ~~~!!」
俺が床に本日二度目のキスをする音と母さんの悲鳴が同時に響いた。
________
あの後、俺は母さんに魔法をかけられて無事に傷は完治した。
だが、母さんに魔法をかけられている時少し体に違和感を覚えた。なんだか体の内部を粘度の高い液体が流れているような感じがしたのだ。
もしやこれが魔力なのではないか。俺はそう直観的に判断した。
だが、覚えた違和感は本当にわずかなものであり、完璧にその魔力らしきものを認識するのにいたっていなかった。
というわけで、俺はもう一回魔法をかけてもらうことにした。
________
夕方になった。
あの後俺は何度もけがをして何度も治してもらった。毎回テーブルに上るのも面倒なので、けがの方法も様々だ。
わざと金属の食器を踏んだり、椅子の足の角に全力で体当たりをしたり、立ち上がろうとして後ろに倒れたり、本当に様々だ。
そして、俺がけがをするたんびに母さんは悲鳴をあげ、魔法を使った。
遂には母さんはぶっ倒れてしまった。きっと魔力ぎれでも起こしたのだろう。まあただの精神疲労かもしれないけど。
ちなみに今は俺が寝た(ふり)のをいいことに自分も寝室に向かって眠っている。本当に母さんには悪いことをした。
でもしっかり成果は得られた。
俺は今や体の内に眠る我が魔力を完璧に認識できるようになっていた。
今はそれを頭のほうに寄せたり、手のほうに寄せたりして体内で魔力を動かす練習をしていた。
意味があるのかどうかはわからない。
でも、今まで何もできなかった俺にとっては、それだけでも楽しかった。
ちなみにその日の夜、父さんが帰ってきた後、俺は医者に連れていかれて診察されたり、教会に連れていかれて悪魔祓いされたりした。
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