第五話 魔法陣を練習する

 俺の不注意による失敗から翌日、母さんはまだ体調がすぐれないのか朝から寝ていた。


 父さんはそんな母さんが心配になり、今日は近くのまちへ薬を買いにいっていた。


 そんな中俺は、今日も書斎にいた。


 別に反省していないわけではない。


 正直母さんが回復するまで大人しくしようか迷った。しかし、俺は魔法の誘惑には勝てなかった。


 とはいえ、今日は昨日のような失敗をしないようしっかり準備をするつもりである。


 まず、書斎へ行く前に台所により、井戸の水をくむための桶と、石のお皿をもってきた。


 そして、桶の底に土の魔法陣でつくった土をつかい、水の魔法陣を写した。


 どうやらこの体は結構器用らしく、土でもかなり正確に写すことが出来た。


 そうしてできた魔法陣をつかい、桶の中に水をためる。これでもし突然炎とかがでてきてもすぐ消火できる。


 というわけで、実験開始だ。


 昨日見つけた魔導書には、合計四つの魔法陣が描かれていた。すでに昨日二つを試したので残りは二つだ。


 早速そのうちの一つを石の皿に土で写し、使用する。ちゃんと昨日の感覚は覚えていたので、すぐに魔法陣は光りだした。


 しかし、光が止んでも何も出てこなかった。


(あれ?魔力はながれたんだけど、失敗したかな?)


 不思議に思いながらもう一回やってみる。


 しかし、今度は魔力が流れなかった。


 魔法陣をよくみてみると、土がくずれてしまい、壊れてしまっている。


(揺らしちゃったのかな?)


 もう一回魔法陣を作り出し、使用する。


 今度はしっかり光ったが、なにも現れず、また魔法陣は壊れてしまっていた。


 ふと、土の崩れ方に違和感を覚えた。


 陣の真ん中から渦を巻くように壊れているのだ。


(渦…最近どっかでみたような…)


 そうだ、魔導書の表紙だ。


 あそこには炎と水滴と石と渦巻きが描かれていた。今思えばあれはこの本の魔法陣で召喚できるものを表していたのではないか?


(この魔法陣は渦を召喚するのか?)


 いや、風と言ったほうがいいだろう。


 魔法の属性と言ったら、火、水、土、風だ。この魔法陣は風を召喚する魔法陣だ。


 ということは、最後の魔法陣は火を召喚することになる。


 俺は部屋の真ん中へ行き、床に燃え移らないよう濡らした土の上に石の皿をおいた。


 そして魔法陣を皿の上に写して使用する。


 案の定、魔法陣からは火がでてきた。


 魔法陣がガスコンロのように燃えている。


 火炎放射器みたいな威力を想像していたので拍子抜けしたが、特に事故は起こらずに火は消えた。


 これでとりあえずすべての魔法陣を試したことになる。一応ほかの本も軽く探してみたが、魔法陣が描いてあるものはもうなかった。ちなみに表紙の魔法陣はただ光っただけだった。


 でも、他の魔法陣より少し長く光っていたような気がする。もしかしたら光を召喚する魔法陣かもしれない。


 さて、今日のところはこれで実験を止めようと思う。


 他にも魔法陣の改変とかやってみたいが、それは何が起こるか分からず、危険すぎるので母さんが回復するまで我慢することにした。


 しかし、使った道具はどうしよう。


 持ってくるときは上からおとせばいいので歩けないこの体でもなんとかできたが、もどすときのことは考えていなかった。


 それに、今後の実験でもこれらの道具を使う予定であり、いちいち戻すのもめんどくさい。


(よしっ!いっそこの部屋に隠してしまうか!)


 俺は道具をひきずって部屋の角に行く。


 そして濡れた土で四角形をつくり、内側に火の魔法陣を描いた。


 そして火の魔法陣を起動する。


 床は木製なのでよく燃えた。


 そして、土で囲った範囲の床がきれいに燃え尽きる。


 むきだしになった地面をほって、俺はもってきた道具を埋めた。


 あとはいい感じに土をならして完了だ。


 ここは本棚と壁によって陰になっているのでそう簡単にはばれないだろう。そもそもこの部屋には普段あまり人は入らないし。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る