第4話   アミーキティアの処罰

 エスペランスはアリアをミーネに預け、離宮に住む父の元に向かった。

 アミーキティアは父に叱られていた。



「エスペランス、アミーキティアが申し訳ないことをした」



 父が頭を下げた。



「魔界を牛耳る魔王に薬を盛ろうとしたアミーキティアの行いは、公開死刑に匹敵する罪の重さだ。兄妹だとしても謝罪で済ませることはできぬ」



 瞬間移動で祖父母達が駆けつけた。



「アミーキティアが何か企んで薬を作っていたのは知っておった。知っておったが、好きなようにさせておった。責任はこの老体にもある」



 先々代の魔王が、エスペランスに頭を下げる。



「アミーキティアはエスペランスに恋をしておった。振り向いて欲しかったのだろう」


「しかし、エスペランスは既に婚姻を済ませておる。そのこともアミーキティアは知っておる。人間だからと嫌って、心臓を貫かせたこともある。エスペランスに力がなければ死んでおっただろう。エスペランスとアリア妃は仲睦まじい。今更二人を別れさせるつもりはない。アミーキティアをエスペランスの妻にするつもりもない」



 先代の魔王は、先々代の魔王とアミーキティアに告げる。



「魔王に何か分からん薬を盛って、操ろうとした事実は変わらん。アミーキティアは、やってはならんことをやってしまった。末の妹だからと許されることではない」


「お父様、私を殺すのですか?」



 アミーキティアは恐れを抱いた顔で、床に座ったまま顔を上げる。



「馬鹿な妹だ」



 リベルターが哀れな妹に告げた。



「何も考えてはいなかったのだろう。情けない」



 ドケーシスもアミーキティアを睨んでいる。

 リベルターとドケーシスはアミーキティアが逃げ出さないように、屋敷に結界を張り、アミーキティアを魔術で縛り付けている。



「私を操ろうなどと、我が妹であっても許せん。私の妻のアリアに何か分からん物を飲ませて、狂わせた。私の血を飲ませ、やっと目を覚まさせた」



 エスペランスは自分の手首を撫でる。



「魔王の血は婚姻の時にのみ、飲ませることになっておる。万能薬と使えば魔王の身体に負担になってくる。アミーキティアはエスペランスの命を狙ったことになる」



 アミーキティアは俯いて、手を握りしめている。



「情けだ。おまえはここで胸を貫いて死ぬがいい」



 父が剣を床に置いた。



「……お父様」



 いつも優しい父が厳しく冷たい眼差しをしている。

 アミーキティアが涙を流して、父親を見上げる。

 その身体が震えている。



「アミーキティア、死ぬのが嫌なら、先代と先々代の魔王に頼んで縁談を探していただき、速やかに結婚するがいい」


「……エスペランスお兄様」


「二度とアリアと私に干渉するな。約束できるか?」


「……約束いたします。お兄様、本当にすみませんでした」



 アミーキティアはエスペランスに頭を下げた。



「お父様、お爺ちゃま、よろしくお願いします」



 アミーキティアは父と祖父にも頭を下げた。

 斯くして、アミーキティアの婚活は始まった。



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