第2話 エスペランス
アリアを魔界に連れて来て、やっと落ちついてきたような気がする。
家族が揃って来たときは、どうなることかと思った。末っ子のアミーキティアが厄介なことをアリアに教えて追い詰めたことで、アリアを失うところだった。あの時は、アリアとベルが重なって見えた。
出血を止めながら傷の修復するのは厄介で、魔族の中でも、処置が間に合わず命を落とす者が多くいる。間に合ったのは奇跡に近い。心臓や脳の治療は難しく、腕のいい魔族でも治療は難しい。心臓は血液のポンプになっているので、素早く処置しなければ、出血多量で治す前に死んでしまう。
アリアには秘密にしていたが、最初の治療の後、何度か、心臓の治療を行って、やっと元の身体に戻した。
完治したとは言え、貧血も酷く、すぐに疲れてどこでも寝てしまう。
ベルの墓前で眠るアリアを連れ帰ったのは、一度や二度ではない。
シェフには造血作用のある料理を作るように指示を出している。幸い、アリアは食べ物に好き嫌いはなく、なんでも美味しそうに食べてくれるので、治療は順調だと思う。
貧血の治療は何ヶ月もかかるが、食べられるなら時間が解決してくれるだろう。
最近では、自分で宮殿の中を探検しているようだ。
人間とは違う容姿をした者もいるのに、怖がったりせず、頭を下げて歩いていると話題になっている。門番の騎士には挨拶もしているようだ。
アリアに聞いたら、「人間の世界よりこの世界はわたしに優しいの」と答えていた。
笑顔で挨拶しながら歩き回っている姿を見て、この宮殿に出入りしている魔族や魔界に住む死神にも人気者だ。首にある婚姻の印が私と同じだと気付いて、誰も手出しはしないが、アリアに手を出す者がいたら容赦なく倒すつもりだ。
愛して止まないアリアは、甘え上手で私の理性を一瞬で壊して、ただの男にしてしまう。
アリアといるときは、いつも自分が魔王だと忘れてしまうほどだ。
愛しても愛しても、まだ愛し足りない。
どんなに抱いても、アリアは嫌がらず、甘えてくる。
なんと愛らしい事か……。
一度は壊れた心臓の音を何度も聞き、もう壊れてはいないと確かめても、それでも心配で、アリアの胸の音を聞いてしまう。
ベルの胸の音は、目の前で止まってしまったから、きっと確かめずにはいられないのだろう。
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