第4話   魔王の妻(4)

 本人の希望もあったので、食事は毎食、パーティーに出されるスタイルで、ナイフやフォークが並ぶようにした。



「ナイフは外側から使っていくんだ。食べ方は私の真似をしてごらん」


「はい」



 言われたとおりに、私の真似をして、外側のナイフを取ろうとした。



「あっ」



 手が滑って、ナイフが落ちた。

 アリアはすぐに拾おうとした。その動きを「そのままで」と止めた。



「ごめんなさい」


「謝罪もいらない」


「はい」



 使用人が新しいナイフを置いて、落ちたナイフを拾った。



「落としても拾わなくていい。使用人が拾うのが一般常識だ」


「はい」



 アリアの視線は、絶えず私に向けられている。

 ナイフやフォークの持ち方を教えたら、アリアはすぐに覚えた。

 集中力がずば抜けていい。食事の真似も私の真似を忠実に守っている。

 グラスの持ち方も、すぐに覚えた。

 スープも上品に飲めるようになった。

 さすが、10歳で聖女になっただけある。集中力もあるが、観察力も素晴らしい。センスもあるのだろう。テーブルマナーは三日でマスターした。

 毎日ドレスを身につけ、食事もダンスも習っている。

 執事がバイオリンを弾き、それに合わせて、ダンスを踊る。

 私はアリアにダンスの基本のステップを教え、ターンを教えた。

 後は笑顔で、踊ればいいと教えた。



「それでいいのですか?」


「しかめっ面でダンスを踊る女の子など可愛くないだろう」


「それもそうですね」


「ダンスは楽しむ物だ。難しく考えるな」


「わかったわ」



 ステップもターンも難なくこなした。

 リードすると、スムーズにダンスを踊れた。

「上出来だ」と褒めてやると、アリアはホッとしてように笑った。ダイニングルームいるモリーとメリーが拍手している。

 お辞儀もさせてみたが、普通にできている。



「聖女の皆さんの真似をしたのよ」



 教えられなくても、自分で学んでいたのだろう。



「アリア、心配しなくてもできている」


「ほんとうに?」


「そう、心配するな」



 アリアは嬉しそうに微笑んだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る